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フェティッシュの火曜日
 
黄金色に光る池

洞穴の中は
 
 

うすら涼しく暗い洞穴の中は、まさしく黄金色に輝いていた。
角度の関係で手前が暗く見えるのが残念だ。

これは池じゃないだろう。液体? まさか。歩けるんじゃないのか?
そんな感想を持ち、無言で眺めていた。
正直、言葉を無くすという手垢のついた言い回ししかできない。

厳粛な気持ちとはこういう状態をいうのだろうか。
目玉が落ちそうな程に黄金色を見つめてしまう。やはりこれが池だなんて信じられない。ぺろっとめくれそうだ。
同行していた母も「すごいねえ……!」と言ったまま何も言えないでいた。落ち着いたころ、やはり「これは黄金の絨毯だねえ」と言う。

駐車場から洞穴の中まであった信仰のシンボル達を思い出す。


洞穴の両脇の、石像や
祈り

納得だ。電気も無かったような頃、ある時期になると光る池というものは、人為的ではない、なにか自分たちより上の存在を思わせたのだろう。

私も祈りではない、願いでもない、ただ静かな感動と感謝をもって、お賽銭を投げ、膝をついた。


 
そこに観光と思われる男性が来た。
お話を伺うと、歩いて千葉の海岸線を一週しているそうだ。
 
お話しを伺った健脚さん

「埼玉でも見たけど、それはコケみたいだったよ。岩の壁がちらほら光ってたって他の人は言うけど、自分には見えなかったねえ。江戸の末期に死人を葬る穴だったらしいよ? ホントここはすごいよ。信じられないねえ。ライトを当てたまやかしかと思ったよ」

その方は母と私が似ている、と言い残し、また歩き始めた。

それはヒカリゴケでは、とも思ったが、やはりそういう現象の場所を神秘的に思い、祈りを込めて死人を運ぶ昔の人の心情を想像した。

正直、うまく取材できるなら、光量を調べたり、太陽電池が反応するのか実験したり、ナウシカというアニメのラストにある金色の草原の上に立つ青い服の人を写真のトリックで作ってみようか、等と思っていた。
しかし池を見て、これはそういう小細工はできないと思った。どう書けばいいのかもわからなかった。
ただ、静かな感動のあと、興奮し、高揚感が続き、思ったのは、これは伝えたい! ということだった。

洞穴から外を見ると、桜越しに見える青空と海。空にはトンビと鳥の声。



ビバ、千葉。

竹岡のヒカリモ発生地

千葉県富津市萩生1176
富津市商工観光課 TEL:0439-80-1291


 

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