緊急事態が起こった。 ボールペンのインクが切れたのだ。 これは大変だ。
しかしうちにはインクのカートリッジがない。 我が家のほぼ常備食品といえば「イカ」だ。イカならある。イカが好きだからだ。
そうだ。
カートリッジがなければ、イカスミを使えばいいじゃない!
(text by 土屋 遊)
まずはイカスミの魅力など
郵便局や銀行のカウンターに、これみよがしに置いてあるカラーボール(防犯用蛍光カラーボール)は気になる存在。 私もあのボールを持ち歩きたいと常々思っています。
イカがすごいところは、色こそ違えど、あの夢のカラーボールをいつも身につけているというところです。 敵に襲われたときに一気に吐き出して、相手の目をくらましたり分身の術を使うのに役立つイカスミは、まさに天然カラーボール。 あんなにすごいものを持ち合わせているのに、これみよがしでないところも謙虚だと思います。 私なら見せびらかしながら歩くところです。
イカスミボールペン全過程(推定)
イカからスミ袋を取りはずす。 ↓ スミ袋からスミを抽出。 ↓ スミをインクカートリッジに入れる。 (スポイト・注射器もどき使用) ↓ 書く。これだけです。
妄想過程では、ここでスミ文字が書ける予定でしたが、実はここからが困難をきわめました。 試行錯誤をかさねていきます。
・思いきり振る。息でインクをペン先に押し出す。 ・潤滑油のかわりにオリーブオイルをまぜる。 ・通常ボールペンのインクが固まったときの対処法を試みる(火であぶる・お湯につける)
書けぬなら書かせてみせようイカスミペン
あまりにもかたくななイカスミに腹がたち、強引な手段にでました。イカスミペンへの道は第二ステージに突入します。
イカスミあいてに躍起になっているとは現時点では気付かず、ペン先をペンチでカットするという反則ワザにでます。
それでも一回目はうまくいかず、二回目のカットでヘンテコなバネみたいなものが出てきました。ボールペン解剖をしているような気分。ちょっとうしろめたいです。(ボールペンに)
みなさん腑に落ちないかもしれませんが、私がいちばん腑に落ちないのです。他人をだますことは慣れていますが、自分を偽る日がこようとは……それでもあくまでも満足を装いました。
まあいいや、寝よ。