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ロマンの木曜日
 
のりたまの「たま」だけ食べる
たまです

のりたまから「たま」だけを取り出して食べた。
どうしてそんなことをしたのか、自分でもわからない。
わからないけれど、「たま」を取り分けた。
それに理由があるとすれば、たぶんきっと、この梅雨空のせいだろう。
ジメジメとした部屋の中で、のりたまをただひたすらに仕分けつづけた。
その様子を、せっかくなので、読んでください。

工藤 考浩



梅雨空の憂鬱

デイリーポータルZのネタがなにも思い浮かばない。
困った。
もうすぐ締め切りだ。
どうしよう。
夕飯のおかずが決まらない主婦のような心境だ。
いや、事態はさらに深刻か。

そうだ、なんにも無いときには、ふりかけだ。
ふりかけがあれば、なんにも無くてもごはんは食べられる。
ふりかけにしよう。


困ったときのふりかけ

 

というわけで、のりたまを仕分ける

ふりかけのスタンダードといえば「のりたま」であると断言しても異論を挟む余地は無いに違いない。
そんなのりたまの、たまごだけ食べてみたいとは思わないだろうか?
ボクは思うのだ。
思うんだから仕方ないだろ。
だから、のりたまの「たま」だけ取り出して食べる。
そう決めたのだ。


ふっくらたまごを取り出すぞ

 

外は雨、部屋にはのりたま

買ってきたのりたまを紙の上に少しずひろげ、仕分けを開始した。
梅雨時の湿った空気のせいで、ひろげたのりたまはどんどん湿気てゆく。
てきぱきと作業を進めなくては。


このままご飯にかけることができたらどんなに幸せか

気がつくと「たまご、たまご」ってつぶやいて作業していた

 

仕分けハイ

黙々と、いやぶつぶつとつぶやきながら作業をしていると、少しずつコツがつかめてきた。
一定のペースでたまごを見つけ、ピンセットでつまみ出すという一連の流れみたいなものが見えてきた。
流れが見えだすと、全く違うことを考えながらでも作業ができる。
でも、うっかりたまご以外のものをつまんでしまうと、ペースが乱れて思考が途切れる。
ふっと我に返るが、それはそれで心地よい。
単純作業はまるで麻薬だ。


いつのまにか雨が上がり、いつのまにか夕焼けていた

 

終わりなき旅

昼下がりから作業をはじめて夕方になっても、まだ全体の半分くらいしか仕分けはすすんでいない。
できる限りすべての「たま」を取り出そうと努力しているけれども、どうしてもごくわずかだが取り残しが発生してしまうが、これは現在の技術水準からすると、やむを得ない。


砂金を探しているならともかく

考えてみたら、のりたまから「たま」を取り出す企画なので、一袋全部を仕分ける必要もないのだが、途中でやめるタイミングが見つからない。
半ば過ぎからは惰性で作業をすすめた。


もうひと頑張りだ

 

できた

四時間以上を費やして、のりたまから「たま」を取り出すことに成功した。
長いみちのりだった。
はげしい達成感でどうにかなっちゃいそうだ。


この喜びを誰に伝えよう

ザ・たま

 

「のりたま」ー「たま」=?

「たま」を取り出したところで作業を終え、「たま」の試食に入ろうと思っていたのだが、ちょっと気になることがある。
のりたまから「たま」を抜いた場合、その残りは、
「のりたま」ー「たま」=「のり」
ということになる。
ということは、下の写真は「のり」なのだろうか。


のり?

仮に、これが「のり」だとするならば、この「のり」から「のり」を取り除くとどうなるのだろう。
本来であれば、そこには「無」のみが存在するはずである。


海苔を取り出し

 

存在しないはずの物質をとらえた

「のりたま」から「たま」を取り除き、そこからさらに「のり」を取り除いた物質、つまり本来存在しないことになっている物質をカメラでとらえることができた。
これは、空間に充満し光を伝達する伝搬物質と考えられている未知の物質「エーテル」 の存在の証明にもつながる大発見である。


存在を否定された物質

 

「たま」は約13%

まあそんなことはどうでもよくて、とにかく取り出した「たま」を食べよう。
ちなみに、取り出した「たま」の重さをを量ってみたところ、約6gであった。
のりたまの内容量が62gなので、全体のおよそ13%が「たま」だということになる。


四時間で6g

 

お湯で戻してみる

取り出した「たま」は、より卵らしくするために、お湯で戻してみた。
そもそものりたまの開発コンセプトが「旅館の朝食の卵焼き」とのことなので、よりそれに近づけようというわけだ。


熱湯をそそぎ
三分間待つのだぞ

 

おいしそうじゃないか

お湯で戻した「たま」を水切りし、お皿に盛った。
なんだかおいしそうな感じだ。
こういうの、フランス料理の前菜か何かにありそうだ。よく知らないけど。
このままリッツにのせたらパーティーができそうな気さえする。


ふんわりとなった
上手にできたスクランブルエッグのよう

 

ところが、

見た目が洋風で、スクランブルエッグのよう(決して炒り卵には見えない)なのだが、スプーンにのせて口元に近づけると、純和風の香りがする。
純和風というか、魚臭い。
ふりかけなので和風なのは当たり前なのだが、しかしこれは歓迎すべき香りではない。
お湯で戻したのが失敗だったか。
嫌な予感がよぎるが、食べてみるしかない。
いただきます。


ん゛!

 

まずい

ぶよぶよした食感。

さばの臭い。

なまぬるい。


飲み込めませんでした。おえ

存在しない物の存在の重さ

このまずさの原因は、おそらく味がないというところにある。
塩気なりなんなり、はっきりとした味がなく、そこに卵の生臭さとほんのりしみ込んだ削り節の魚味。
あらためて、「のり」と「たま」以外の、存在を否定された「エーテル」の存在の重要さに気づかされた。
のりたまのおいしさの秘密は、あの名もなき粉にあるのだ。
普段注目される事のない、存在すら忘れられているようなものが、実は最もかけがえのないものだということだ。
ボクものりたまの、あの粉のように生きてゆけたらなって、思う。


 

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