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ちしきの金曜日
 
地下鉄ホームの曲線美


ぼくは いわゆる鉄道マニアではないが、地下鉄にはちょっとぐっとくる。

その「ぐっ」の対象は車両ではなくトンネルだ。地下鉄路線図を見ながら、地下に曲がりくねりながら張り巡らされたトンネルの複雑さに思いをはせるのはちょっと楽しい。

今回はそんな地下鉄のトンネルの一部であるホームを愛でてみたい。

(text by 大山 顕



■ホームはトンネルの一部です

地下鉄のトンネル本体とも言うべき、駅と駅の間の線路部分を思うがままに歩き回れたらどんなに楽しいだろうか。しかし残念 なことにそこに立ち入るのは簡単ではない。逮捕覚悟でなければ、新しく開通する線の記念行事でよくある「線路を歩いてみよう!」といったイベントに参加す るかあるいは路線保守の職に就くしかないだろう。

しかし、考えてみたらホームだってトンネルの一部だ。見慣れたホームにトンネル感を見出してこそ真のトンネル鑑賞家と言えるのではないだろうか。


ホームもトンネルだったのだ、と思わせられる視点。つつましやかにしなる曲線も美しい。だが、しかし。

ホームの端っこに立ち、一点透視するようにカメラを構えて撮ってみたのが上の写真。うん。ホームは確かにトンネルだった。すてきだ。しかし、写真としてはいまひとつ。そう、やはり人はいないほうがいい。

そう思って人をどくのを待つのだが、いつまでたっても人がいなくならない。列車が到着してホームで待っていた人が乗り込んだあとは人がいなくなるだろうと踏んだのだが、そうはいかなかった。なんと列車から人が降りてくるのだ!なんで降りてくるの!

降りてきた人が出口に向かってホームを歩く。そしてついにみんな出口へたどり着いたと思ったそのとき、つぎの列車を待つ人が現れるのだ。なんだきみたち。そんなに電車に乗りたいのか。こちらの迷惑も考えてくれたまえ。

しょうがないので通勤客がいない日曜日の早朝に出直しだ。


やんわりとした曲線美がみどころ

そ うしてせっかくの休日にちょう早起きして撮影したのが上の写真。どうだろうか。人っ子一人いないホームに、一直線に並んだ蛍光灯と鮮やかな黄色の点字ブ ロックとが、しなりあげながらヴァニシングポイントへと向かっていく。要するにステキだと言いたいのだ。早起きした甲斐があった。これがぼくの「甲斐」な のだ。何も言ってくれるな。

ただおしむらくは広告や番線表示の存在である。なにもなくのっぺりした空間だったらさらにトンネル感が高まったことだろう。それらの表示が一切なく壁と床しかない、人に優しくないがトンネル鑑賞家にはこの上なく優しい、そんなホームの登場が待ち望まれる。


90度回転させたら「ホーム感」がなくなり抽象的な空間になった。見ごたえがある。

というか、いまようやく気がついたが、いまぼくは誰もついてこれない記事を書いているのではないだろうか。

しかし迷っている暇はない。みなが起き出す前に撮影を済ませてしまわねば。そう。男には自分の世界がある。喩えるなら空をかける一筋の流れ星。あと地下鉄のホーム。


 

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