「せっかくだし」というくらいしか外に出る理由はないのだが、まあせっかくだということで玄関を飛び出たビックカメラマン。あらかじめ隣の家が留守であることは確かめてある。
自宅の中ではうれしくてちょっと得意だったビックカメラマンだが、外に出ると急に挙動不審になる。
それは見た目でわかるだろうとも思うのだが、人の目が気になってさらに不審者感が増幅するのだ。ビックカメラマンは外見的にも内面的にも説明しづらい男なのだ。
おしゃれを気取って、服と同じ柄でできたバッグをチョイス。というか、それは普通にビックカメラの袋だ。
さあ、歩いてみるぞ。
やはりゴワゴワした生地のためなのだが、普通に歩くことがままならない。膝を曲げることが困難なのだ。
なにか困ったことがあっても、ビックカメラマンを助けに呼ぶのはやめた方がいい。のろのろとした移動しかできないから、頼りにならないのだ。
そんな風に思いつついろいろと試してみると、ある発見があった。
膝を曲げる必要の少ない横歩きはそれなりに速いのだ。
ただ、ピンチのときにビックカメラマンを助けに呼ぶのはやっぱりやめた方がいい。それなりの速さとは言え、こんな奴がサイドステップでやってきても問題の解決には繋がらなさそうだからだ。
むしろ余計に面倒なことが増えそうでもある。
外出と言っても、結局家の壁際どまりのビックカメラマン。街に繰り出そうとも思ったのだが、撮影者である家族の同意が得られなかったのだ。
外出拒否に「そうだよね」と同意するビックカメラマン。
自分の心にもそれほど踏ん切りはついてない。そう言ってくれて実のところうれしい。
ビックカメラマンたるもの、家族の和を大切にする男でありたい。そしてビックカメラマンの行動範囲は極めて狭いのだ。
●人は見た目が九割
外出を家のそばだけにしたことで、街の変わり者となることを踏みとどまったビックカメラマン。それはスマートでクレバーなアンサーだと思う。
戦いが終わってクローゼットの中にビックカメラスーツをかける。そこでもビックカメラスーツは、圧倒的な違和感を放ち続けている。