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ひらめきの月曜日
 
すすきのの夜と朝のさかいめ
よる12時の、地下鉄すすきの駅。
日の出も早いが、終電も12時すぎと早い。


札幌の有名な歓楽街、すすきの。

しかし、そんな“日本でも有数の歓楽街”的なイメージとはうらはらに、北海道の朝は早い。
特に夏季は午前3時を過ぎると空が白み始めてしまう。

3時といえば、イメージ的には夜だ。
「夜通し飲むぞ〜!」なんてはりきっている人たちにしてみたら、「まだまだ夜はこれから」な、時間帯。

でも容赦なく夜は明けてゆく。
そんなすすきのの、夜と朝のさかいめはどうなっているのか、その瞬間が見たくて出かけてみました。

(text by 加藤和美



■日の出が早い!

日の出・日の入り時間は、緯度によって変わる。
そのため、札幌は本州より日の出が早く、日の入りが遅い。

例えば、1年でいちばん日の出が早い6月中旬の場合、

  • 札幌…夜明け:午前3時09分、日の出:午前3時54分
  • 東京…夜明け:午前3時47分、日の出:午前4時25分
  • 大阪…夜明け:午前4時07分、日の出:午前4時44分
  • 那覇…夜明け:午前5時03分、日の出:午前5時37分

※上記で言う「夜明け」は、太陽は出ていないが周囲が明るくなり始める時間。
 「日の出」は太陽の上辺が地平線から出る時間。


このように、札幌は夜が明けるのが他の土地より早い。

大阪とは約1時間、那覇とは約2時間も、夜明けの時間に差がある。
兵庫から札幌に引っ越してすぐの頃、夜更かしをして午前3時を過ぎたら、空が明るくなってきてビックリしたことがあった。
つくづく、日本はタテに長いなーと痛感。


日本の歓楽街の中でも、夜明けが早いすすきの。
すすきのに日が昇る瞬間は、時間的には「夜」でも、お日さまは「朝」だと主張する。
そんなふしぎ空間なはずだ。はずだ。

 

■午前0〜2時のすすきの

というわけですすきのにやってきた。

終電で帰ろうとする人の流れを逆流して街に出ると、当然ながら「夜はこれからだぜ!」的雰囲気であふれている。


この日は日曜の夜だったが、翌日の月曜は祝日だったので、人通りはボチボチといったところか。土曜の夜の方がもっと多いかもしれない。

この時間帯は観光客が多い。

あとコンパ流れの学生や、結婚式の二次会流れでドレッシー&紙袋持ちの人も多い。

それから、ちょっとこわくて撮影できなかったが、点在する「すすきの無料案内所」も人気だ(というかお客さんがけっこう入っていた)

ここで案内してくれるのは、きわめて大人向けのお店だけなので、うっかり入らないように気をつけよう。

まあ外見のカラーリングからしてバリバリ「ピンク&肌色全開」なので、ふつうの観光客が間違えて入ることはまずないと思うが……。

当然ながら、まだまだ街に人は多い。
NIKKAのおじさんも、まだまだ営業中。

ちなみにすすきのの場合、同じビルに、ごく普通の居酒屋と、お姉さんのいる飲み屋と、風俗店が同居している……なんてことも多々ある。

チェーン系居酒屋の下の階が風俗店だったりするので、エレベーターで乗り合わせた場合は、誰がどこで降りるのかちょっとドキドキ。

他の客がどこで降りても、見ていないフリをするのが、すすきののマナーだ(たぶん)。


またどこの歓楽街でも同じかもしれないが、やはり客引きが多い。
市の条例で客引き禁止になって、一時期よりは減ったがまだ多い。

男だけで歩いていると5メートル進むごとに1回は話しかけられるのでおちおち歩いていられないそうだ。

通りの両サイドに、えんえんとタクシー。
すすきの交番の看板がかわいい。
ちょっとカレー家さんみたい。

 

■午前3時のすすきの

午前3時を過ぎると、夜空の色がうっすらと薄くなり始めた。
まだ「夜明け」とは言いがたいけれど、真夜中よりは確実に明るくなっていた。


街を歩く人たちは、2時よりは若干少なくなったが、それでもけっこうな人数がまだまだ歩き回っている。


酔客以外にも、カラオケ店の呼び込みもまだまだ元気だ。

「カラオケいかがですかー!!」

どうしてそんなに元気なのか。
えらいなあ。

なお、この日のすすきのの夜の気温は19度。
東京より5度低い。
19度といえば、東京の5月の平均気温だ。

半袖でずっと外にいると寒いよ……。

冬季だけでなく、夏季取材でも寒さに震えるハメに。

うーん、ちょっと空が明るくなってきたか?
NIKKAおじさんは1時で営業終了だった。
街を行く人の人数はあまり変わらない。
すすきのから歩いて5分、大通周辺はひとけがない。
写真は市電(路面電車)の大通駅。
とにかく寒くて…。7月末なのに…。

 

空が明るくなってきた。
空が明るくなるとソワソワする。

■午前4時のすすきの

午前4時前から外が白み始めた。
4時を過ぎるとお日さまが登場。
ゴチャゴチャした街でも、日の出の瞬間は美しい。

そして日の出からしばらくすると、帰路につく人たちがドッと増えた。
すすきのの街自体が、蛍の光のBGMを流されたように、「帰りなさいモード」になっていく。
なぜか自分も「帰らなくちゃ」という気分でソワソワ。

そして客が減るとともに、あちこちに点在していた、いろんなジャンルの客引きの人たちが、それぞれ集まり始めた。
一晩中、街頭に立ち続けた客引きの方々も、もう撤収の時間らしい。

明らかにキラキラした風貌のお姉さんがたも帰路についている。

路上で商品を広げていた人たちも片付け始めた。

ドヤドヤと去ってゆく人間たちと入れ替わるかのように、カラスがあちこちにあらわれる。

 

もしかして、今まさに、すすきの全体が営業中(夜)から、営業終了(朝)をむかえようとしている!?


…ああ、これがすすきのの夜と朝のさかいめだ。

すすきの交番の看板がいつのまにか電気オフに。 結婚式の招待客だったらしき人々が、ぞろぞろと移動してゆく。
一晩じゅう元気な声をはりあげていた、カラオケ店の呼び込みの人たちが集結。 街角に点在していた黒服な人々。
この人たちも、どこからともなく集まってきた。
そして、ふと見回すと…。 街からは、誰もいなくなっていた。
あれ?さっきまであんなに人がいたのに。 すすきののあちこちに、カラスが出没し始めた。
夜は明けたが、街灯とネオンはまだ輝いている。
人が消えて、カラスがあらわれる。
これが、すすきのの夜と朝が混在する瞬間。

■明るくなると帰ってゆく人々

というわけで、夏のすすきのの「夜と朝のさかいめ」は、日の出の約30分後(この日で言うと午前4時30分ごろ)だった。


個人的には「朝まで飲むぞー」と言ったら、午前6時くらいまでかな?と思っていた。地下鉄の始発が6時だし。
しかし私の予想より、すすきのの朝は早かった。

よその土地より早く夜が明けようとなんだろうと、まだまだ飲んだり食ったり遊んだりしていると思っていたのに。
そんな風景を観察しようと思ったのに。

「日の出とともに撤収〜!」

そんな感じだった。


ネオン輝きまくりの歓楽街で、空が明るかろうが暗かろうがもう関係ない暮らしをしている現代人。でも、いざお日さまが出ちゃったら「ハイ、夜は終了ー」な、気分になってしまうのかもしれない。
他の土地はともかく、ここは。

お日さまは偉大だ。

「4時にラーメン横丁の前ね!」と待ち合わせているところ。
…といってもこれは午前4時だ。

 

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