自然とマメの脅威
お遍路を始めてから9日目。
遍路転がしも何個か越えたし、徳島から高知に入っている。
荷物を背負っている肩の痛みは増すばかりだが、お遍路としての生活にも慣れてきた頃である。
次に向かうのは、室戸岬にある24番最御崎寺。
23番から24番までは、70km以上、歩くと2日かはかかる距離である。
お参りすること無く、ひたすら歩く。
目標が遠すぎると、本当に辿り着けるのかと、弱気になって、精神的に辛い。
高知は、次のお寺までの距離が長い個所がいくつかあって、修行の道場と言われるゆえんである。
6月15日は朝から大雨、嵐。
この日も留まること無く、進んだ・・・、なんて言うとかっこいいけど、嵐をやり過ごすために宿に入るお金が勿体無かっただけ。
雨具が役に立たないから、全身びしょ濡れ。
人間は、どうすることもできないくらいの雨の中を歩くとテンションがあがるのかもしれない、もしくはテンションをあげないとやっていけないのかもしれない。
時には、進めなくなるくらいの向い風に向かって、ぜってー負けねー!と叫んでみたり、時には黙々と心を無にして歩いたり、今日歩ききったら何を食べようとか考えてみたりしながら、車も人も通らない道を延々と歩いた。
この日は風雨が凌げるバス停で寝た。
お風呂に入ることもできず、真っ暗で狭いバス亭で過ごした夜、何でこんなことやってるんだろうという大きな疑問と空しさが襲ってきた。
この日、無理をしないで嵐をやり過ごしていれば、この旅の結末は違っていたかもしれない。
次の日、6月16日。
順調に室戸岬を越え、24番・25番・26番と打つ。
26番を打った後、休憩無しで10km、2時間くらい歩いてみるつもりだった。
実は前日の嵐で心が折れそうになっていたので、腹を括ろうと思い、少し無理めの挑戦をしようと思ったのだ。
この無理がいけなかったのか、それとも遅かれ早かれそうなる運命だったのか、足裏のマメが痛くてまともに歩けなくなった。
けして大げさではなく、本当に歩けないのだ。
次の日、痛みを緩和するようにいろいろ試したが、とてもまともに歩けなそうである。
6月17日、お遍路を始めて11日目にして初めて完全休養日とした。
この日は、お遍路の中断を真剣に悩んだ。
なんせ歩けないのである、どうしようもない。
と思っていたら、次の日にはほぼ痛みがなくなっていた。
足の痛みが無くなった以上、やめるかやめないかは自分の気持ち次第。
まだ歩いていたいという気持ちが勝り、この日はなんとか出発することができた。 |