久高島は沖縄本島からフェリーで20分ほどで着く離島の中でもかなり手軽に渡ることのできる島だ。それなのに観光客の姿はほとんどみあたらない。観光客が求めがちな沖縄のビーチリゾートなイメージはこの島にはないからだ。その代わりに古くから手の入っていない、昔ながらの沖縄の風景がここにはある。
イラブーを探して海へとやってきた。なんでもイラブーを捕獲できるのは島でも神に許可を得た数名のみらしい。なので僕なんかがふらっと行って捕まえられるようなものでは当然ないわけだけれど、何かその神秘的な情報だけでも得られないものかと思いやって来たのだ。
そんなときに沖の方からおじさんが船に乗ってどんぶらことやってきた。この人もしかして許された人なんじゃないか。生きたイラブーとか持っていないだろうか。
すみません、イラブーって捕れるんですか。
「イラブーはな、いないよ。あれは夜だな。しかも今年はまだだ。」
おじさんはなんと自作らしき発泡スチロールの船に乗っていた。これでいつも漁に出ているのだという。接触した第一島民がかなりのつわものだった。そんなおじさんからイラブーについて話を伺った。
島の観光案内所でも聞いてみた。
「イラブーは今年はまだだよ。130本くらい集まったらまとめて燻製にするからね。時期は毎年違うからな、いつになるかわからんな。」
とのこと。収穫量がまとまらなければ燻製作りを始めないらしいのだ。しかも燻製作りもこれまた限られた者でないとできないらしく、伝統的なその手法や詳細は極秘で教えられないのだとか。こうした厳しい制限を設けることで、神の島のウミヘビは守られていたのだ。
神秘のウミヘビなのでした
久高島のイラブーは噂どおり神秘のベールに包まれていた。僕の食べたイラブー汁も、こういう様々な経緯を経て生まれた崇高な味だったのだな、と改めて思ったのでした。