さてはじめますか
この日はものすごく暑かった。また、田園調布という街は坂が多く、それを目の前にした我々は着くなりくたびれてしまった。なんとなく持ってきた、という虫とり網のニュアンスのあいまいさを巡り、やいのやいのけんかしたりもした。
「田園調布に行けば宝物があるのではないか」と漠然とした憶測で来たものの、ほんとうに見つかるのかどうか。不安な気持ちになりながら、ぼんやりと無言のまま、持参した資料を眺めていた。田園調布について書かれた本の中では比較的有名なので読んだことがある人もいるかもしれないが、「てんとう虫コミックス おぼっちゃまくん(1)」という本だ。
資料によると、田園調布には亀に乗って登下校する小学生がいるらしく、それは大変衝撃的であった。そしてそんな金持ち小学生の周囲にはふんだんに金がばらまかれ、道端にも相当量が放置される始末。
これは期待できる。先ほどまでの不安が一気に自信へと変わる。資料には時折お尻丸出しの小学生も描かれていたが、それは気のせいだろう。 |