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ひらめきの月曜日
 
寸止め百物語


私は心霊体験どころか、金縛りにすらあったことがない人間ですが、昔から怖い話が大好きです。

皆さん「百物語」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、
「100本のロウソクを灯し、怪談話をひとつ話し終わるごとに、1本ずつ消していく。
最後のロウソクが消えた時に、怪異が起こる……」
と、いうものです。

怪談好きとしてはぜひ挑戦してみたいイベントですが、本当に怪異が起こってしまっては困ります。
私はあくまでも怪談トークを楽しみたいのであって、何か変なことを体験したいわけではありません。

そんなわけで、及び腰で百物語にチャレンジしつつも、百話に達する直前、九十九話で寸止めすることにしました。
※おそらく怖くないと思いますので、怖い話が苦手な人も読んでみてください。

(text by 加藤 和美



■さて準備

まず場所の確保が無理だった。
本来ならばお寺のお堂などで行うと雰囲気は最高なのだが、いかんせんお寺さんの知り合いがいない。
それに何より、ロウソクに火を灯すということで、火を使う。
借りられるスペースといえばほとんど火気厳禁。
仕方なく自宅で行うことにする。


つづいては準備。
99本のロウソクが必要ということで、仏壇用ロウソクを買いに行く。
大きいロウソクだと並べきれないので、小さめのものを買う。


さて99本のロウソクをどこに立てようか。
昔見たオカルト番組では、お仏壇にあるようなロウソク立てに立っていたような記憶がある。
しかし、そんなものを100本用意するのは大変なので、家に余っていたスノコにロウソクを立てることにした。


スノコの下に敷くガスレンジ用シートと、消火スプレーを用意して火の用心。
ロウソクを立てていく。
どんどん立てていく。妙に真剣だ。
99本立てた!うっかりして100本目も立ててしまうところだった。あぶないあぶない。
はりきりすぎて真昼間から準備してしまった。
じっと夜になるのを待つ。

 

■夜になった

今回、この「寸止め百物語」に参加してくれたのは友人6人。
全員自分で霊感がないと言っている人ばかりだ。
霊感があるという友人もいるが、呼ばなかった。
シャレにならないじゃないか。
私はその程度の怪談好きだ。


さて友人たちを誘うにあたり、ちょっと迷った。
寸止めとはいえ、百物語なんて、誘ったら嫌がる人もいるだろう。
参加者は良くて2〜3人だろう。

……などと思っていたのだが、声をかけた全員が「行く行く」と軽く返事。
人のことは言えないが、君ら物好きだな。


そんなわけで夜になって、参加者が続々来訪。
酒を飲み始め、談笑する参加者たち。

私が作った99本ロウソクは隅に追いやられている。
今夜の主旨をわかっているのか不安になってきた。
ただの家飲み会だと勘違いしてやって来たのではないかと。


いい感じでお酒が入ったあたりで「寸止め百物語」開始を宣言!
部屋の電気を消して、99本のロウソクに火をつけていく。
1本1本は小さなロウソクだが、99本も火が灯るとかなり明るい。全てのロウソクに火を点け終わると、

「なんか芸能人とかがテレビの前で吹き消してるバースデーケーキみたいじゃない?」
「99歳の芸能人か」
「芸歴長いな」
「大御所だな」

という話になり、ハッピーバースデーの歌をうたい始める。手拍子を取りながら。

なんだろうこの、普段よりなごやかな雰囲気。
私は納涼・怪談話がしたいのに。
ますます不安になる。


しばらくみんなで99本のロウソクを囲んでながめていたが、ふと1人があることに気がついた。

「このロウソクの上……熱くない?」
「ホントだ、すげー熱い!」
「熱気がどんどん上に昇ってるよ!」
「これは火災報知機に反応しちゃうんじゃない!?」
「スプリンクラー発動したらどうする!?」
「わーーー、とりあえず消して消して!!」

なぜかいっせいに息で吹き消す。
だからバースデーケーキじゃないって。


無理だ。99本は無理だ。
そもそもこんな小さなロウソクでは、30分くらいしかもたないのだ。

99話を話すには、何時間もかかるだろう。
昔の人は、何時間ももつような、巨大なロウソクを使ったのだろうか?

そんな疑問を抱きつつ、とりあえず代案を考えた。

なかなか始まらない。

どんどん火をつける。

ハッピーバースデーの歌、終了。じっと火をながめる。

「うわっ熱い!」「あっホントだ!」
この写真だけ見ると、怪しい儀式のようだ。

 

■ルール説明

99本に同時に火を点けるのは無理なので、ロウソクに1本ずつ火を点けて、話が終わったら消して次のロウソクに火を点ける……とした。

ロウソクは一番隅からスタートして、99本目のロウソクで終了。
参加者は時計回りに1話ずつ話す。
順番が来た時に話すのは必ずひとつだけ。

説明が終わったところで、やっと「寸止め百物語」開始!


目指せ99本目のロウソク。
さあ、スタートの1本目に火がついた。

 

■いよいよ怪談

時計回りに、怖い話・不思議な話を語っていく。
事前に
「ひとり12話以上、怖い話を用意してくること!」
とノルマを課していたため、みんなメモを持参。

なかなか怖い話が飛び出して、だんだん神妙な雰囲気になってきた。

怪談も人によって特徴があって、
  • 大学に怪談が多かった人
  • 地元に怪談が多い人
  • 自分自身に不思議な体験が多い人
  • 都市伝説が好きな人
  • 近所(札幌)のミステリースポットを紹介しまくる人

などなど、個性が出るのが面白い。

怖い話が多いのは、「病院」「コンピュータ」「音楽」関係だ、と言われているらしいが、参加者は全員「コンピュータ」「音楽」関係なので、いろいろ出てくる。

そのうち何周かしてくると、みんなも慣れてきて、
「さっき学校の話が出ましたけど、うちの学校でも……」
などと、他の人のネタにかぶせて自分のネタも話したり、その場で思い出した話をしたりと、アドリブ的に怪談が飛び出し始めた。

ううむ、面白い。
扇風機も回していないのに涼しいのは、気のせいではない。

怪談話を用意するようノルマが課せられているので、各自メモを持参。
ロウソク1本の光だけなので、実際にはこの画像よりもっと暗い。
写真左側に、いるはずのない子供の顔が!!!
というのはウソで、途中から来た友人のお子さん。
不気味な話には、背筋がゾゾ〜〜ッ!
札幌の夜風が涼しい。

ゆらゆらと揺れる、ロウソクの光。
ロウソクの林から、影が放射状に伸びる。

 

■後半戦突入

0時ごろに3人が帰ったので、メンバーは私を含めて4人になってしまった。
しかし、残った3人は
「ここまで来たら最後までやろう!」
と言ってくれたので、怪談を続ける。


長い時間怪談を続けていると、
「うっかりひとり2話話してしまう」
「ロウソクを消して、次を点けるのを忘れそうになる」
「いま何話めかわからなくなってくる」
などなど、ちゃんと数えるのがなかなか難しい。

とはいえ、きっちり数えないと、寸止めのつもりがうっかり百物語……なんてことになりかねないので、必死で数える。


また、「ああそういえばこんな話もあるんだけど」と、そのままふたつめの話に突入してしまった場合も、「今の話、2話にカウントだからね!」と指摘。

ウルサイ進行役がいないと百物語は成り立たないのだ。
新発見だ。


それはともかく、怪談は順調に進み、いよいよラストの99話に!
最後は譲ってもらい、私が話をして、ロウソクを消す。

……。
…………。
当然、何も起こらない。


電気を点けると、参加者から拍手が沸き起こった。
なんだかマラソンで完走した時みたいだ。


夜8時30分に開始して、途中で1時間休憩を挟んで、終了したのは2時30分。
99話話すのに、約5時間かかったということになる。

厳しく怪談の数を数える私。
いよいよ99話近くに!
99本目のロウソクに火を点けた。
「おつかれさま〜」「何も起きなくてよかったねえ〜」と拍手。
その後あさ6時まで雑談した後、片付け。
役目を終えたロウソクたち。ロウソクの長さで、話の長さがわかる。
すぐ話が終わって長いままのロウソクや、長い話だったため短くなってしまったロウソクなど、長さはバラバラ。

 

■感無量です

5時間をかけて、無事99話話し終わった。
満足だ。
満腹だ。

旅行などに行くと、夜になったら怪談をしたくてたまらないタイプだったが、だいたい友人にはひとりかふたり、怖い話が苦手な人がいるもので、なかなか怪談はできない。

しかし今日は、思う存分話したし、聞けた。
ほどほどに怖く、かといってシャレにならない程ではない。
そんなスタンスでできたのも満足だ。

 

 

それでは、今回話した怪談タイトル一覧をどうぞ。
※タイトルだけでも怖い!という方は
スキップをおすすめ。

 

 

 

 

1、足首
2、塩
3、ホラーゲーム
4、フィルムの女
5、アンプ
6、空き家の人形
7、人影
8、後輩のアパート
9、ホラービデオの夢
10、大学のガラス扉
11、レコーディング機材
12、お墓参りの偶然
13、おばあちゃん
14、少女の像
15、お父さん
16、竪穴式住居
17、帰省
18、伯母のお葬式
19、見下ろされる
20、廃校の窓
21、おじいさんと握手
22、霊感がある上司
23、紙コップ
24、白い影
25、ドライブ
26、トイレの個室
27、伯母の夢
28、廃病院
29、地名の由来
30、大学の近所
31、サイドミラー
32、近所の家
33、桐のたんす
34、テレビクルー
35、金縛り1
36、金縛り2
37、金縛り3
38、カーテン
39、強運
40、正面衝突
41、テレビフィルム
42、交差点のビル
43、軍服マニア
44、占い
45、先輩の家
46、下り坂
47、ババア
48、理科の実験
49、小僧のやしろ
50、粟
51、プレハブ
52、予言
53、店の男の子
54、三角の家
55、台風
56、呪い
57、霊能力者
58、公園
59、オリエンテーリング
60、汲み取り式トイレ
61、視線
62、プール
63、4−9−13
64、子供の目
65、弔辞
66、手斧
67、神社
68、節目
69、店の隅
70、カラオケボックス
71、霊園
72、オフィスビル
73、見える人
74、ガソリンスタンド
75、ウミガメのスープ
76、UFO
77、走る霊
78、シュウマイ館
79、マンション
80、杉の木
81、壁の音
82、木造アパート
83、戦争の夢
84、樹海
85、恐山
86、カーブ
87、シスター
88、怪談のできるまで
89、赤い人
90、業種
91、日本人形
92、電話ボックス
93、市松人形
94、厨子
95、売家
96、登山道
97、霊道
98、人魂
99、オレンジ色の光

 

■いろいろわかった

怪談好きなので、「百物語」という言葉自体はよく聞いていたが、実際にやってみると、いろいろなことがわかった。

  • 火を使うと、貸してもらえる場所がない。
  • ロウソク立てを100本用意するのは難しい。
  • 100本のロウソクに火をつけると、シャレにならないくらい熱い。
  • そもそも普通のロウソクでは何時間ももたない。
  • 上記の理由により、昔の人はちゃんと言い伝え通りの方法で百物語をやっていたのか疑問だ。
  • 少人数で百物語をやるとノルマがきつい。
  • 最近の仏壇用ロウソクは煙が少ない。
  • 怪談には、その人の人生経験がありありと出る。
  • 怪談を間違いなくカウントするのは難しい。
  • お菓子を食べている暇がない。
  • 99話で約5時間かかる。
  • 終了後の雑談で怖い話が出た場合、カウントされるのかが謎だ。

友人たちの人柄もあり、ほどほどの怖さとユルさで、99話話しきることができたと思う。

皆さんも怪談を楽しむ時は、ほどほどに。
火を使う時は、火の用心をお忘れなく。

休憩時間に、総勢7人でテトリス。

 

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