写真を撮ろうとしたちょうどそのとき、若い女性4人組が海から上がってきて、僕の横を通り過ぎ、斜め後ろに敷いてあったシートの上に座った。
そして彼女たちの中のひとりが、つぶやいた。
「海まで来て、自分撮りかよ」
……!(心の中で何かが決壊
確かに海まで来て三脚を立てて自分を撮るなんていう人なんていないかもしれない。でも、「こういうネタをやるから一緒に海に行こう、そして写真撮って」なんて頼める人は僕の周りにいなかったんだ。そもそも、わざわざ海まで来てこんなことやってるのは、このネタがおもしろいと思って、これを記事にしたらきっとみんな喜んでくれると思って、つまりよかれと思って……!
急いで心の土嚢を積んでみるが、開いた穴がでかすぎて対処しきれない。さっき聞いた言葉が頭の中でリフレインする。
「海まで来て、自分撮りかよ」
「海まで来て、自分撮りかよ」
「海まで来て、自分撮りかよ」
的確に急所を突く一言に、どうにも心細くて耐え切れなった。「今までどうしてこんな恥ずかしいことができたのだろう?」という気になって頭をかきむしりたくなる。でも発言した本人が近くにいるので、あからさまに反応することはできない。すっかり意気消沈してしまい、とりあえず荷物をまとめて駅にもどることにした。心は完全に折れてしまった。 |