死んでしまったのは一体、誰だ？

「脈が、ないみたいなんですが……」

ハトのかぶりものをかぶったまま倒れてしまったヒトの脈をとっていた林さんが ぽかんとしていった。

つまり、死んでるって、こと？

全員が騒然となる。誘拐殺人事件だ。そんな声も上がっている。ざわざわ。

それにしても、死んでるとか生きてるとかいう前に、誰なんだ、このヒトは。おそるおそるハトの頭に手をかけた。

「部長！！」

林さんが叫んだ。続いて住さんや他の面々もハトだったヒトに駆け寄る。

読者投票の結果、デイリーポータルZ編集部の直属の上司であるニフティ 平岩部長が殺されてしまった。

全員が口をつぐみ、息とつばをのんだ。はっ、ごくり。

部長は鬼の形相といおうか、不謹慎かもしれないが面白い顔で息絶えていた。一体なぜ……。

殺された理由とは

「部長……」
「ありえないですよ！！」
「呑みに行く約束はどうなったんですか！」

呆然とした面々からぽつりぽつりと悔恨の言葉がもれ始めたころ、後ろで考え深そうに一部始終を見ていたはまぐり刑事がゆっくり言った。

「平岩部長は、要求を聞き入れず1人だけピエロメイクをしなかった。ピエロじゃなくてハトでもいいじゃないか、そういう姿勢をとっていましたね。それが犯人の気にくわなかったのでしょう」

たしかに平岩部長の顔を見ると、一人だけピエロメイクをしていない。私たちがメイクをしている間にこっそり会議室を抜け出していたのだ。まさかハトになっているなんて。

あのとき平岩さんを引き止めていれば。誰もがそう思っていたに違いない。

あれ？　なんだこれ。

犯人からのメッセージ」

すっかり平岩部長に気をとられていて気づかなかったのだが、部長の頭に何か紙切れのようなものがくっついている。

縦書きで殴り書きのようにこう書いてあった。

ピエロメイクはもう飽きたからいいや。
今度は-----------------------。

「！！！」

声を上げて読み上げたあと、顔を上げるとまた、全員の顔が驚きで真っ白になっているのが見えた。

「……。とにかくまずは全員ピエロメイクを落としましょう。それから、すぐ行動ですね」

私たちは一人気丈なはまぐり刑事に従うしかなかった。