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ひらめきの月曜日
 
速報・風太の子どもも立った

続いて全文をお届けします

動物園に行きたい

秋というと動物園と思うのはなぜだろう。遠足でよく行ったからだろうか。近頃ずっと動物園に行きたいと思っていたのだが、ある日やっと行ける時間ができた。

ようやくとれた時間、どうせならたくさんの動物園をまわれないか。なぜそんな無茶をしようと思ったかというと、カバが見たかったのだ。たくさんのカバが。

この直前、ある映像でカバの姿を見て以来、私はカバに夢中だった。なんか、記憶以上にでかい。とにかくでかいのだ。あのでかさを目撃しまくりたい。そう思っての酔狂だった。

調べたところ、東京在住の私の近場だと3つの動物園にカバがいるらしい(後に間違いだったことが分かる)。そんなわけで、神奈川の野毛山動物園、東京の上野動物園、千葉の千葉市動物公園を3つを回ることにした。


いっきに三つの動物園をめぐる

野毛山動物園へ

まず最初は野毛山動物園へ。桜木町から坂道をえっちらおっちら歩いたところに園はある。山肌に作られたような自然の中にある動物園だ。

入ってきょろきょろしていると、レッサーパンダがいた。かなり近い! こんなに近くで見たのは始めてかもしれない。

さすがに立つことはなかったが、もこもこした体と大きなしっぽはやっぱり愛らしい。こちらもついついもこもこした気分になってくる。


あ、レッサーパンダ

だが、今日の目的はあくまでカバだ。焦ってカバを探すが、どうも姿が見えない。入り口でもらったパンフレットにも載っていないじゃないか。

ど、どういうことだろう。いやな予感を感じつつ、おそるおそる飼育員さんにたずねる。

「いや、カバはいないですね」

がーん。前日にネットできっちり調べたはずだったのだが、どうも調べ間違えていたようなのだ。ありえないほどの初歩的ミスもショックだが、カバに会えないという事実が辛い。ああ、カバよ……!!


駅からの道でみつけたマンホール 元気出せよ

続いて上野動物園

今日は3つの動物園を回らねばならない。思いのほかスケジュールはタイトだ。続いて上野動物園へ期待をいだきながら、移動開始。そう、上野には間違いなくカバもいる!

東京の動物園の代名詞的存在でもある上野動物園は平日にもかかわらずさすがに混雑していた。どうやら遠足での来園が多いようだった。そこらを子どもがぽちぽち走っていく。

野毛山でなごませてくれたレッサーパンダは、上野では姿を見ることができなかった。そういえば、私は上野動物園はかなり何度も来ているが、活動的なレッサーパンダを見たことがない。ちぇ。

いや、まあそれはいい。何しろカバだ。はやる気持ちを抑えてカバのコーナーへ進む。あ、いた!


ごろーん

すごい勢いで寝ている。が、良く見るとずいぶん小さい。どうやらこちらはコビトカバといってカバとは別の種類らしい。それにしてもかわいい。いひひ。

で、カバはというと、こういうことになっていた。


どこ?

完全に沈んでいる。が、相当にでかいのが分かる。興奮して10分ほど直視していた。どうやら、2、3分に一度呼吸のため鼻を上げるようだ。


ぶふー

飼育員さんに確認すると、室内での餌やり時間以外はほとんどの時間を水中でのんのん過ごしているらしい。

室内への移動は15時以降。次の動物園への移動を考えると待ってはいられない。仕方なく、次へ移動することにした。

しかし、カバ相当でかいぞ。次の園では体の全体が見えるといいのだが……。


背中が水に浮いた茄子のようだ

最後の千葉市動物公園

急ぎ足ながら、こうしてたくさんの動物園を1日でまわると充実感がある。

最後の千葉市動物公園に到着したのはもう15時をすぎていた。閉園は16時半。園内を急いでいると、売店や掲示物のいたるところにレッサーパンダの写真やイラストが張ってあった。

レッサーパンダの聖地までやってきたわけだ。ああ、でもいまはそんなことはどうでもいいのだ。カバよ! すぐ行くからね。


看板

そうして30分後。ひゅー。秋の冷たい風が、私のほほをなでていた。

カバは、いなかった。

そうなのである。野毛山動物園同様、この千葉市動物公園もカバを飼育していなかったのである。

もう一度言うが、私は前日インターネットでカバの情報を集めた。そうして、多分どこかで何かを勘違いしたようだ。

なんというか、実はこのとき泣いていた。自分の失敗で泣くとは始末に終えないが、いると思っていた生き物がそこにいないという悲しさは、悲しさに寂しさが伴うので力が強い。カバ、いないんだあ。よよよ。

そうして、知らず知らずのうちにレッサーパンダの前にたどりついた。


レッサーパンダコーナー

中にはどうやらあの風太の子どもがいるらしい。

双子の子どもと、風太のおくさんであるチィチィがころころ転がるように戯れていた。その様子はカバがいないという心のすきまが少し埋まるくらい本当にかわいい。

近頃は風太と子ども・チィチィが交代で公開されているということだった。私が行ったとき、風太は公開スペースの後ろの室内から子どもを見守っていた。

ああ、カバ……・。あきらめきれずにカバの横顔を思い出しながら静かに双子の子どもを眺めていた、そのとき。


きゃー あははー

わーい はい、よっこらしょ

どっこいしょ

立った! 風太の子どもが、立った!

私を含め、あたりの人たちが沸き立った。

立ったよね、今、たったよね! 見知らぬ隣の若いお母さんとみつめ合って確かめる。立ちましたよね。ね! カバのことを忘れる衝撃の瞬間だった。


その後、室内の風太もすっくり立ち上がり さらに子どももつかまり立ち

2005年5月。連日ワイドショーで放送される風太くんの立ち姿に、実はちょっと飽きていた。けれど今、風太くんの子どもくん(名前は現在園で募集中とのこと)の立ち姿にすっかり魅了され、あの狂乱のことが理解できた気がする。

カバのことは残念だが、この感動は、カバ思うわたしの気持ちがからずも報れた動物園の神さまからのてきなプゼントだったのではないだろう


カバ

すべての部分をお読みくださった方へ

そういったわけで、風太の子どもは立ち、そしてカバには少ししかあえない1日となったわけです。

帰宅後に再度調べたところ、野毛山動物園にも千葉市動物公園にもカバがいるという情報はどこにも載っておらず、一体私は何を見たのかという不思議に包まれていました。

カバに導かれてレッサーパンダにたどり着いた。そんな、夢のようなお話でした。

カバ

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