ある日、ふと考えた。
先週取り上げたカッパ巻きは、カッパ(キュウリ)が巻いてあるからその名前が付いているわけだが、じゃあ軍艦巻きっていうのは、軍艦が巻いてあるのか?
…んなわきゃーない。「海苔で巻いた様子が軍艦っぽいから」という由来は理解しているが、よーく考えたらエライことである。とんでもないネーミングだ。だってあなた、軍艦ですよ? 日本語を習い始めた外国人に「オゥ、ノー! クレイジー!」と言われても、なんの申し開きもできないものを私たちは食べているのだ。
今回は、そんな軍艦巻きにグッと迫ってみたい。
(高瀬 克子)
こんなのはどうだろう
軍艦巻きといえば「高級なネタが乗った寿司」というイメージがある。ウニしかり、イクラしかり、どれもそう気軽に食べられるものではない。
しかし最近は回転寿司で、ありとあらゆるものが乗った状態でクルクル回っているというではないか。
周囲の人に聞いたところ「ハンバーグが乗っているのを見た」とか「カルビも乗ってた」とか、聞けば聞くほど「え?」と驚くような目撃情報ばかりであった。
なるほど。…ならば、こういう物を作っても、怒られたりはしないんじゃないかな。
焼きそばです。さすがに、これは回転寿司でも回ってないんじゃなかろうか。
そういえば以前、こんな企画があったが、内容的に被ってないか改めてチェックしたところ、古賀さんがナポリタンとそうめんを乗っけていた。…やはり考えるところは同じということか。お昼をナポリタンにしなくて良かった。
さて、この焼きそば軍艦。彩り的に紅生姜が欲しいところだが、問題なのは見てくれではない。味だ。
…悪くない。ソース味のこってりした焼きそばが、酢飯のサッパリ感と相まって、なぜか爽やかな一品になった。
う、うそじゃないですよ。
さすがにこれは合わないだろう、と思ったのだが、意外や意外、これが合う。マヨネーズに酢が使われていることを考えれば、当然の結果か。
…書いていて、だんだん「これってもう回転寿司のネタにあったりして」と不安になってきた。
ならば、これならどうだろう。
なにやら、恐ろしく豪華な軍艦巻きが出来上がった。豪華ではあるが、どこか「成金っていやーね」と言いたくなるようなケバケバしい一品でもある。
恐る恐る、食べてみた。
「なんだかんだ言っても、やっぱり酢飯には刺身だな」と改めて思わされるような美味しさであった。焼きそばやポテトサラダで喜んでいる場合ではなかった。
さあ、お遊びはここまでにしよう。
より軍艦っぽく
軍艦に乗せる物を味の面から考えてきたが、リアルに「軍艦」を意識した場合、気にしなければならないのは味ではなく、やはり見た目だろう。
さっそく酢飯を、航空母艦っぽく成形してみた。
これだけで、十分に軍艦っぽくはないだろうか。このまま水に浮かべたら、ずんずん進んで行きそうだ。
ここに、軍艦っぽいネタを乗せるとしたら…。うむ、やはりヒカリものしか考えられまい。
その質感は狙い通りであったが、用意した酢飯が少なかったのと、イワシが大きかったせいで、広々とした甲板部分が全て隠れてしまった。無念。
空母ミッドウェイか、はたまたイージス艦か、という立派な軍艦を目指したつもりだが、これでは漁船だ。ポンポン船だ。
もうこうなったら仕方ない。軍艦は潔く諦めて、財布の許す限りで購入してきた様々なネタを乗せ、とにかく豪華な船を目指した。で、なんとか完成したのがコレである。
我ながら「マズそうな物を作ったなぁ…」という感想だ。これが回転寿司で流れて来たとしても、絶対に取らないだろう。
あまりのダメっぷりを誤魔化すかのように、大根のツマで渦巻く波を、散りばめた穂ジソで護衛艦を表現してみたが、意志は伝わっているだろうか。
漁船巻きだった
どうやら、軍艦ではなく漁船を作ってしまったようだ。しかも大砲を付けたことで、どこか違法船っぽさも漂う始末。
でも飾り付けの作業はとても楽しかったし、刺身はどうあがいても美味しい。それが救いだ。
それぞれが好きな具を巻く「手巻き寿司パーティー」の代わりに、好きな具を乗せる「軍艦パーティー」というのがあっても盛り上がりそうだなぁ、と思わされた軍艦作りであった。
そして今さらですが、やっぱり軍艦巻きはひとくちでパクッと食べられるサイズがいいようです。