なると を煮る地方があるという事実
なるとを、当たり前のように煮る地域があるそうだ。全く知らなかった。今これをご覧の方の中にはきっと「えっ、なるとを煮る?!」とお思いの方と「えっ、なると煮ないの?」と思っている方、ばっさり2種類の方がいらっしゃるのだろう。
この「なると を煮ると、もちもちになる」という商品、私にとっては全くどこからアイディアがわいたのかさっぱり分からず、その闇雲感にうろたえる気持ちすらあった。
が、もともと煮る習慣があるのなら納得だ。
なると を煮る習慣があるという北海道の一部ではなると を「つと」と呼び、おせち料理のメインの一角を担うほどなんだそうだ。商品を提供してくださった紀文の広報室の方から聞いた。
紀文さんでも北海道では緑とか赤の なると (この場合は「つと」ですね)を出しているらしいのだ。まじかよ。
続々集まるなると情報
さらにライター加藤さんが寄せてくださった情報では、函館育ち方は 「つと」を かまぼこ よりもよく使うという。筑前煮に入れたりするらしい。
室蘭語出身のライター工藤さんのご実家では「つと」という呼び方こそしなかったものの、煮しめには分厚く斜めに切った なると が入っていたそうだ。
さらに静岡ではおでんに縦に切った なると が入っているのは有名(くわしくは「静岡「おでん街」へ行く」に出てきますぞ)である。そうなのだ、なるとを煮というのは案外普通のことなのだ。
「なると は煮物の材料である」というだけでもういくらでも思いのたけを綴れそうだが、今日のメインは何しろ紀文さんの「煮るともちもちもっちりなると巻」である。
聞けばこの商品、年末年始用のおめでたい食品として12/25(一部地域では12/26)から年末にかけてのみの販売なんだそうだ。
うっかりしていると食べられないところ、サンプルという形で一足早く入手することができたのは、もちもちファン冥利につきる。ありがたや。
試食ゲストは名前からしてもちもち好き
さて、それではいよいよ、「煮るともちもちもっちりなると巻き」(以下、「もっちりなると」)を煮てみたい。
世に数多いであろうもちもちファンを差し置いて1人で食べるのも気が引け、試食にあたって友人の もち子 さんに参加してもらうことにした。
彼女、もちもちしたものが好きだということが理由で「もち子」と呼ばれているのだ。食べ物の嗜好で呼ばれるってそうそうないぞ。それだけもちもち好きだということだ。ジャッジメントにも期待が持てる。
シンプルに、だしつゆで煮ました
調理法としては、シンプルに寄せ鍋に投入することにした。室蘭の工藤さんのご実家の切り方をまねて、分厚く斜めに切ってみる。
なると をこうして切るのは初めてだ。私の実家(埼玉です)だと正月のお雑煮や、たまにラーメンに薄い輪切りが乗るぐらいだった。あの なると をこんなにも贅沢に食べるというだけでわくわくしてくる。
「もっちりなると」の包装袋には赤字で「煮てお召し上がりください」と書いてあった。煮たときに最大の力を発揮するように作られているのだ。だが、どうしても食べてみたくて、まずは生の状態で食べてみる。
「……うーん、なんとなくモチモチしてる気もしますねえ」
もち子さんと顔を見合わせるが、これは もちもち、というよりは練り物特有の弾力感といったほうが正しいかもしれない。普通の なると と食べ比べてみても食感にそれほど変わりはなかった。やはり煮ないことにはもちもち感はないようだ。
それよりも、もち子さんも私も、分厚く切った なると の美味しさに驚いていた。なるとって薄切りじゃなくて、カタマリでも美味しいのかあ!
いよいよ煮る
鍋は、白菜、ねぎ、えのき、豆腐に加え、もち子さん推薦のマロニー(白滝よりももちもちしているという理由から)と、なると ともちもち感を比べるために、ちくわぶ、きりたんぽを入れた。
結果、全体的に白っぽい鍋になってしまった。まあいい。
「そういえば、もちもちしてるものって、だいたい炭水化物ってイメージありますよね。なると がもちもちって、そういう意味でもすごいことなんじゃないですか。だって、すり身ですよ」
「ええ、すり身でどうやって、どんな もちもち感が出るんですかね」
「弾力をどうもちもち感にシフトさせるかがカギなんですよね、きっと」
「ははあ、なるほど」
もち子さんと二人、大きな期待と小さな不安を覚えつつ鍋からたつ湯気を見守った。
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