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ちしきの金曜日
 
日生のカキお好み焼きを食べてきた

きまぐれ、お店が見つからない

カキオコ二軒目は、「きまぐれ」という店なのだが、カキオコマップに「路地の奥の奥にあります。まち探検気分で発見してみて!」と書かれているように、本当に場所がわからない。


地図を読んでもわかりません。 猫用みたいな細い路地が入り組んでいる。

見つからないったら見つからない。 どこだここは。

カキオコマップにきまぐれの場所がわかりにくく載っているのはきっとわざとなんだと思う。いじわるではなくて、この町は道に迷うことすら楽しいからだ。オリエンテーション気分で店探し。さまよい歩いている間に、お腹も空いて一石二鳥だ。

 

きまぐれ、ようやく発見

きまぐれという店名だけあって、実はもう閉店しちゃったのかなと不安になった頃、ようやくそれらしいお店を発見した。


民家の壁に書かれた「お好み焼」の文字が読めるかな。 駐車禁止の看板と大差のないお好み焼きへの道しるべ。

そして路地裏に、お店発見! ようやく到着。わかんないって。

存在を知らなかったら絶対に発見されないような場所に店を構えるきまぐれやさん。いったいどんな店なのだろう。

 

きまぐれに入店

暖簾をくぐって入店すると、横に長いカウンターは地元っぽいお客さんで埋まっており、みんな昼間から楽しそうにビールとか飲んでいる。地元っぽいというか、明らかに地元の人しかいない感じ。店の奥で飲んでいたオッチャンに「よくこの店がわかったね」といわれた。もっともだ。

お好み焼きを焼いているおねえさんに取材の件を話すと、とりあえずカウンターが空くまで、店の奥で待っているようにと促された。オッチャンに。


「奥で待ってて」とお客のオッチャンに誘導される。

ちなみにこの店、メニューはお好み焼き以外にも焼きうどんとかいろいろあるらしいのだが、黒板に書いてあるのは、カキオコのみ。


フェイスマーク風の文字がお茶目だ。

カキオコ以外のメニューは、きまぐれな感じらしい。

 

店の奥に入ってびっくりした

オッチャンにいわれるまま、店の奥へと続く扉を開けて、びっくりした。


唐突にカラオケスナック。

唐突に目の前に繰り広げられるカラオケスナック。今の扉は赤羽あたりへと続くどこでもドアだったのだろうか。なぜお好み焼き屋の奥にカラオケセットと革のソファーが並んでいるのだ。

その異質な空間で、オバチャン、いや、おねえさん達はお好み焼きを食べ、じいちゃんはカラオケに夢中。

この店がカラオケスナック併設というのは、カキオコホームページを見ていたので知識としては知っていたが、実際に目の当たりにすると、ものすごい戸惑う。


お好み焼きを食べながら井戸端会議をするおねえさん。 歌うは「兄弟船」。漁師町だからね。

 

どこなんだここは

部屋の奥に腰をかけ、「僕は日生になにをしにきた?」と自分に問う。気がつけばカラオケスナックにいるのはなぜだろう。「漁師はどんな歌が好きか!」のレポートをしに日生まで来た訳ではないはずだ。

少しうつろなまなざしで放心していたら、お客のオッチャンが落ち着けといわんばかりにお水をくれた。


放心中。

ちょっと落ち着こう。

 

おねえさんに話を聞く

ここでゆっくりしていたら、ついうっかり一曲歌い始めてしまいそうな気がしてきたので(工藤さんが)、とりあえずお好み焼き屋スペースに戻り、おねえさんに話を伺うことにした。

「カラオケはドリンク付きで歌い放題500円!」

いや、カラオケはいいから。


大家族の台所っぽいオープンキッチン。 焼きうどんもメニューにあるらしい。

おねえさんの話によると、この店は元々18年くらい前にオープンしたのだが、諸事情で7年前から休業していたとのこと。そして去年の10月に、元々の常連さん達の熱いリクエストに応える形で営業を再開したのだそうだ。

場所が場所だけに、平日の昼間に来るお客さんのほとんどは地元の常連さん。店内のいたるところで日生弁が飛び交っている。

お客が常連さんばかりとはいっても、一見さんである我々が居心地悪いということは全くなかった。おねえさんの言葉を借りれば、「日生の人は、地の人に優しくできるから、よその人にも優しくできる」のだ。

 

店員とお客が助け合うシステム

この店は基本的におねえさん一人で切り盛りしてるため、お客さんがたくさん来ると人手不足になる。そんな時は、鉄板から離れられないおねえさんの代わりに、常連さんが料理を運んだり、お皿を洗ったりということが、ナチュラルにおこなわれている。


料理を運ぶお客さん。 お皿を洗うお客さん。

セルフサービスは自分の分だけやるシステムだが、ここの場合は、気づいた人が人の分まで進んで働く互助会システム。

とはいっても、この「店の手伝いができる」というのも、ある意味地元の常連さんの特権な訳で、別に初めてきたお客さんが強要されるようなものではない。

最初、誰が店員で誰がお客さんだかよくわからなかった。

 

カキオコを焼いてもらう

しばらくしてカウンター席が空いたので、早速カキオコを一枚注文。次の予定がなければビールと焼きうどんとネギ焼き(お好み焼きのキャベツ抜き)も食べたかったけれどグッと我慢。どれもすごく美味しそうなのだ。


「うちは水も油もいいもの使っているよ!」との事です。 カキが次々乗せられていく。

生地を全面埋め尽くすカキ。

カキの多さにびっくりした。すげえ。カキだらけだ。

 

ソースは、たいめいソース

日生のお好み焼きは、「たいめいソース」という甘いソースを使うのがスタンダードなのだが、最近その工場が火事になってしまってソースが配給制になったらしい。配給制っていつの時代だ。


断面図。貴重なソースがたっぷりかかっています。

断面、カキだらけ。うはははは。


ネギをたっぷり乗せて完成。

美味しすぎて笑える。 懐かしのレモンスカッシュも美味しい。

玉置 浜屋もうまかったけれど、これもうまいっすね。
工藤 すごいね、このカキの量。これ東京で食べたら絶対に2,000円はするよ。
玉置 そのたとえ話、好きですね。
工藤 いやあ、家の近所にこの店があったら通っちゃうなあ。
玉置 その褒め方も好きですね。

 

カキを食べに来てくれたんだから、カキを食べてもらう

カキオコが美味しすぎて、マヨネーズと一味をかけるの忘れた。

そんな美味しいカキオコを食べながら、つい「こんなにいっぱいカキ乗っけちゃ儲からないんじゃないんですか?」と野暮な質問をしたら、「遠くから来てくれる人は、カキを食べにくるんやから、ようけ入れてやらんと。」との返事が返ってきた。

おねえさんは、「一度来てくれた人が、友達連れてまた来てくれるのが一番嬉しいねえ」ともいっていた。こんなカキオコを出されたら、そりゃ友達を連れてまた来たくなるさ。東京からちょっと遠いけれど。ちょっと。


遠くから来た人には、ドリンク一杯サービス中だ。

お店の名前はきまぐれだけれど、お客さんのことを考えるその姿勢には、一本芯が通っているように感じた。

さあ、次は安良田のカキオコだ。


きまぐれ
電話番号:0869-72-2523
営業時間:11時〜20時
定休日:なし(でもきまぐれ)
オススメ度:

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