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はっけんの水曜日
 
コーヒーでフィルム現像をしよう

買いだめしておかなきゃ。

先日、フジドールEという薬品の製造中止がアナウンスされた。写真用のモノクロフィルムを現像するための薬品だ。

僕はずっとこの薬品を使ってモノクロフィルムを現像してきた。このデジカメ全盛の時代にどうしてフィルムなのか、しかもカラーではなくモノクロの。そう聞かれたら迷わず「おもしろいから」と答える。撮影して自分で現像、焼付けをするのは、単純にデジタルよりもおもしろいのだ。だけど世の流れは残酷で、そんな少数の写真好きの居場所もどんどんと狭くなっているのが現状。

これは困った、ということで代用できるものはないかと探していたところ、なんとコーヒーでいけるという話を聞いた。まじかよ。

安藤 昌教



なんとかならないものか

もちろん他社から出ている現像液を使えば問題は解決なわけだけれど、これだけ急激にモノクロ分野が縮小されている現状を見ると、他の製品だっていつ打ち切られるかわかったものではない。こうなったら来る日に備えて自分で薬品を調合できないものだろうか。

思い立って現在市販されている現像液の成分を調べてみたところ、どうやら現像に使われる主な薬品はハイドロキノン、メトール、フェニドン、この3種らしい。なんじゃそりゃ。残念ながらひとつも心当たりがない。


ほんとかよ。

そんな中、なんとコーヒーで現像ができちゃう、という明るい話題を入手した。一気に身近だ。なんでもコーヒーには現像液の成分であるハイドロキノンが少量ではあるが含まれているというのだ。コーヒー、おまえいつの間にそんなの含んでいたのか。

しかし本当にコーヒーで現像ができるのならばこれはかなり素晴らしい。いつでも手に入るし、市販の現像液よりは体にも環境にもよさそうだ。早速試してみることにした。

フィルムはなくなる運命なのだろうか。

コーヒー現像を試すために、モノクロフィルムを2本撮影した。なにせ初めてのことなので1本はデータ取りの現像テスト用に、もう1本が本番用ということだ。

 

重曹はすごく使える薬品なのです。

ポイントはアルカリ性

現像自体はコーヒーに含まれるハイドロキノンで進行させるわけだけれど、その現像力というのは溶液がアルカリ性であるほど強くなる。そこでまずコーヒーをアルカリ性に傾けなくてはならない。

身近にあるものでアルカリ溶液を作るには重曹が便利だ。重曹は炭酸水素ナトリウムなので、そのままではアルカリ度は非常に弱いのだけれど、加熱することで炭酸ナトリウムに変化し強いアルカリ性を示すようになる。

粉から泡が出る、というのはなんとも不思議。

重曹を加熱するとぶくぶくと泡が出てくる。重曹はケーキを焼くときに膨らし粉として使ったりするが、あれは加熱したときに発生する二酸化炭素が生地を膨らましているのであって、つまりこれと同じ現象がケーキの中で起きているわけだ。今回の記事は全般的にマニアックなので、一生懸命に身近な事柄に置き換えようとしています。

加熱を続けると発泡が全体に広がり、これがおさまると炭酸ナトリウムができあがる。

できた炭酸ナトリウムは重曹と見た目同じです。

こちらが完成した炭酸ナトリウム。見た目は重曹となんら変わりがないが、水に溶かすと強いアルカリ性を示す。

ここまで淡々と進めてきたが大丈夫だろうか。僕は一人じゃないですか。

なにはともあれ化学って面白い、いま素直にそう思っている。高校の頃はあんなに苦手だったのに、こうやって目的をもって臨むとなんて有用な学問なのか。いま嫌々勉強している人も、、いつかこういう日が来るかもしれないのでぜひがんばってください。


 

 
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