●城であることを捨てたパリーミキ
これまでご覧いただいた通り、パリーミキは城になっている場合が多いのだが、やむを得ない事情であろうか、城化されていない店舗もある。東京23区内にある店は立地のためか、なかなか城を実現するのが難しいようだ。
ここでは渋谷店を例に挙げよう。都会の繁華街ということで、城化は困難なのだろう。ビルの1階が店になっているのだ。
しかしどうだろう、城であることを捨てたからと言って、決してパリ感が損なわれることはない。むしろこちらの方がパリっぽい。「城=パリ」という図式ばかりにこだわる必要はないのだ。
また、郊外型の店舗でも、何らかの事情でなのか、城化されていない店もごく稀にある。
五香店がそうだ。郊外型の独立店で城になっていない例は珍しい。
特徴として、クリーニング店と共同の建物になっていることが挙げられる。パリミキと並ぶ、スピード感のある「クリーニング」。メガネが欲しい、でもクリーニングも出したい、という要求に応えることと引き換えに、城であることを捨てたのだと思う。
この反例となるだろうか、小型店舗でも精一杯に城テイストを出そうとしている店もある。
高塚店は隣接するスーパーの敷地内に店を構える。記事の1ページ目で紹介したような店ほどの規模はないが、それでも城であろうとする姿勢が見られる。
何の気なしに見れば特に変哲もない店だ。ただ、そんな店のけなげさに気づける気持ちを忘れたくないとも思う。
●あこがれと失望の狭間で
再びオーソドックスな店舗に戻ろう。今回巡ったパリーミキの中で、最も美しかった店を見ていただきたい。
正面から見て塔が3つ並んで見える型、すなわちスリートップタイプの店だ。塔の大きさが右から左に進むにしたがって、なだらかに小さくなっている。
優雅さと風格すらたたえるこの水戸店。撮影の際にじゃまされがちな電線がないというのも鑑賞者には重要な要素だ。
薄暮の空に映えるパリーミキ。一瞬、メガネ屋であることを忘れそうな姿だ。
このスリートップタイプ、比較的大きな店舗で見られるスタイルだ。次の店も同じタイプなのだが、違いがおわかりになるだろうか。
そう、水戸店とは反対に、左から右に進むにしたがって塔が小さくなっているのだ。だからなんだと言われそうだが、そういうディティールにこそこだわりたい。
流山店の特徴として挙げられるのは、店のすぐ左前に歩道橋があることだ。そこに登れば普段とは違った角度と距離感で店を見られるのだ。
近距離からしっかりと見ることができるのはいいのだが、それゆえに気づいたことがあった。我々が窓だと思っていたものは、単に外壁に貼り付けられているだけなのだ。
そうだったのか…。純粋な装飾としての窓。
浮かんでくるかすかな失望を、それでも城には変わりないと言い聞かせてかき消す。気づかなかったふりをして巡礼の旅を続けたい。