いちばん高いメニューは「塩やきそば」「焼きうどん」1000円(大皿)、安いメニューは枝豆300円だった。
奥のテーブル席で、大騒ぎする声が聞こえた。ドレスアップした若い女の子たちとトイレで逢った。卒業式の帰りの飲み会のようだった。
なにも、そんな大切な日の飲み会を「カチカチ山」でやらんでもいいのにな……とも思ったが、ひょっとしたら、コンパとかをよくやった、思い出の店なのかもしれない、と無理矢理想像した。
他の席は、2人〜4人で、落ち着いて飲んでいる感じ。サラリーマンからカップル、歌舞伎町っぽい人まで。照明が暗めなせいか、ダラダラと飲んでいるように見えた。
「安いねえ」と言いながら、高瀬さんが、がんがん飲んでいた。私が体調万全じゃなくて、少々セーブしていたせいもあったのだが……私がサワー1杯飲むあいだに、彼女はビール3杯飲んでいた。
よく「アメリカのプロレスラーは、何ガロンもビールを飲む」みたいな話があるけれど、1ガロン=3.785リットルだから、4杯以上飲めば「ガロン界」の仲間入りなわけだ。
高瀬さんは、たぶん2.5ガロンくらいのビールを飲んでいたと思う。
飲んでる間に、した話。
- 今まで、猫を飼ってきた経験から言うと、色のうすい猫のほうが、お馬鹿なのではないか。とくに、三毛にしましまのはいったやつで、色が薄い猫がやばい。うちの猫も馬鹿だった。新しく飼うなら、色の濃いやつのほうがいい。白黒の猫は利口そうだ、「はっちゃん」とか。
- 大泉洋ファンの高瀬さん、「ハケンの品格」が終わるのが大変に寂しいらしい。大泉さんに関しては、ファンすぎて、もう好きかどうかも分からないのだという。飲み会とか、絶対に同席したくないし、隣の席にいても嫌。斜め後ろ、遠めくらいの席で飲んでてくれるとジャスト嬉しい。二人きりにされたら、固まるどころじゃないので、絶対二人きりにしないでください、とのこと。
- 高瀬さんはテンパで、ストパに命をかけているという。髪のうねり具合で、天気予報が出来る、妖怪アンテナだそうだ。学生の頃は三つ編みにしていたのだが、髪が太いわ多いわだったので、しめ縄みたいになっていた。ランニングすると、ビタンビタン肩に当たって痛かった。ああ痛かった。
……飲むと、どうして、しょもない話をしてしまうのだろう。
どんどん、テンションを上げていく高瀬さんを見ながら、「人はなぜ、一緒にいる人が先に酔っ払うと、自分は酔えなくなるんだろう」とか考えていた。いや、楽しかった、とても楽しかったのだが。
「これ以上、ビールをガブ飲みするのはやめとこう」と判断して、「一休」に戻るのは断念、チルアウトしようと、近くのゴールデン街の某バーに移動した、のだが…。
その時私は、高瀬さんがが予想以上に酔っていることに、気がついてなかった。
彼女は、カウンターに座ってしばらくしたら、椅子から、ぐにゃりと後ろに、床までひっくり返って倒れたのだ。
びっくりした。本当にびっくりした。あ、あの高瀬さんが…ありえない、と思った。
起こそうとしたら、「だいじょうぶ、ほっといてええ〜」と言う。「ええ、ほっとけないようー」と言いながら抱き起こしていたら、マスターが『ほっとけないよ』(by楠瀬誠志郎
)をかけてくれた…。
……「カチカチ山」では、日本酒に関しては「すごいお酒だから、悪酔いするぞー」という噂がある。でもビールでこんなことになるとは、想定外だった。ビールには、悪酔い成分が入ってるとは考えにくい。たんに安さが、人を油断させてしまうのだろうか。
そのあと深夜、泥酔版・高瀬さんは、私に「君は馬鹿なことをしている…」と抽象的な人生アドバイスをしてくれた。自分の人生は間違いだらけ、と自覚があるので、「どれについて指摘されてるんだろ!?」と心あたりありまくりで、なんだかすごく反省をした。
酔っぱらい、恐るべし。
結局朝帰り。
で……仕切り直して月曜日に、「今度は泥酔しないように」注意して、「一休」に乗り込んだ。
「一休」、月曜日は半額デーだったのだが、張り紙を見ると、他の曜日も毎日、20%とか30%とか、何かしらのパーセンテージで割引があるようだった。
また行列が出来ていた。ゲゲッと思ったが、店員さんにきいてみたら「15分くらいで座れます」とのこと。カラオケボックスみたいだな、と思いながら待って入店した。 |