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ちしきの金曜日
 
ドア閉めフェイントグランプリ

理解してくれる人いますか

仕事帰りの電車に乗るとき、ドア際に立つのが好きです。

出発を待っている電車での楽しみと言えばドア閉めフェイントの鑑賞。車掌の腕と個性の見せ所です。

そこで、いろいろな路線のドア閉めを見てまわってきました。

萩原 雅紀



戦いの舞台は降車ホーム

「ドア閉めフェイント」とは

上の説明では意味不明だと思うので、もう少し詳しく解説します。

私鉄のターミナル駅で線路の両側にホームがある場合、到着した列車はまず降車側のドアを開けて乗客を降ろし、続いて乗車側のドアを開けてホームの客を乗せますよね。このあと出発する前にまず降車側のドアを閉めるわけですが、その時にドア際に立っている乗客への注意喚起からか、プシュ、プシュ、と何回かドアを閉めるフェイントをかけることがあります。
あれを技と美しさの観点から各社見比べてみよう、というわけです。

今回は都内のターミナル駅をまわって、各社の「ドア閉めフェイント」を見てくることにしました。
もっとも激しいフェイント、また美しいドア閉めを見せてくれるのはどこでしょうか!

 

 

まずは池袋

西武池袋線のホームにやってきました。

この沿線で育ったので、電車と言えば西武、都と言えば池袋しか考えられない幼少時代でした。実家を出てからはほとんど来る機会がなかったのですが、どこかのんびりとした駅の雰囲気、なんだか垢抜けない売店や牛乳スタンドはぜんぜん変わっていなくてほっとします。

でも黄色がスタンダードなはずの西武線に、見慣れない青い電車が停まっていて違和感を感じました。タイムマシンで少し未来に来てしまったときに味わう感覚ってこんな感じでしょうか。


心のふるさと、西武線の池袋駅
君は、どこの子?

さっそく西武線のドア閉めフェイントを見ようと降車側のホームで待ち構えますが、平日の昼過ぎだったこともあって乗客はまばら。何本かの列車を観察しましたが、ほとんどフェイントは見られずスムーズにドアが閉じられました。うーむ、敢えて乗客の多い時間を外したのが裏目に出たのでしょうか。

これでは企画倒れです。どうしよう、と思った瞬間。

ひとりの老婦人によって、奇跡のフェイントの瞬間を撮影することができました!


↓ 画像をクリックすると動画がみれます。 ↓
シングルフェイントが奇跡のダブルに!

「すいませーん」の声とともに、閉まりかけた降車側のドアに突入する老婦人。撮影している僕も、予想外の出来事に驚いて少しオバちゃんにパンしてしまっています。

かなり大雑把とも言えるシングルフェイントクローズ(いま名付けました)になるはずだったところをダブルフェイントに。しかも二回目はドアが30%程度閉まった状態からのフェイント、これは芸術点は低いもののかなりの難易度と言えるでしょう。

…なんて、気持ちが乗ってきたのでメチャクチャな表現になりました。車掌さんにしてみれば迷惑なだけですね。

 

東上線ホームへ

池袋はよく利用していましたが、ここから東上線に乗った記憶がありません。

いつも山手線のホームから見て「薄暗い駅に地味な電車だなあ」と思っていました(利用者の方すいません)が、実際に来てみると予想以上に薄暗いので驚きました(本当にすいません)。地味な電車には広告のステッカーがべたべた貼られ、なんだか悲壮感すら漂っています。

池袋の東口と西口の格差は、駅の外だけでなく内部でも如実に表れているような気がします。


山手線ホーム(右奥)の明るさに目の露出が合ってしまう
これはなんかの罰ゲームですか

さて、地味な東上線はどんなドア閉めを見せてくれるのでしょうか。意外にも熱いフェイントが行なわれていたりして、などと期待したのですが、予想ははずれました。

到着した列車は、降車側に続いて乗車側のドアもすぐに開け、乗客の大半が降りたところでさっさと降車側を閉めてしまうのです。これによって乗車側は降りる客と乗り込む客が入り乱れ、一瞬混沌とします。フェイントもほとんどなく、ドアに挟まれないための意識を乗客側に求めているような気さえしました。


↓ 画像をクリックすると動画がみれます。 ↓
ある程度降りたらあっさりクローズ

すぐ折り返すわけでもないのに、そんなに急いで閉める理由はあるのでしょうか。ここでも何本かの列車を観察したのですが、その中で唯一見られたフェイントはこんな状況でした。


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これは歓迎されないフェイント

子供を挟みそうになるという致命的な失敗クローズで技術点、芸術点ともに最低ライン。これはフィギュアスケートで言うところのバックフリップのように危険な技です。

どうやら僕の求めるドア閉めフェイントは行なわれていない様子。諦めて次の駅に向かいましょう。そう言えば東武にはもうひとつターミナル駅があります。

 

というわけで浅草

東武伊勢崎線の浅草駅はJR線と接続していないので、何か秘密のベールに包まれている雰囲気です。駅の構造を全然調べていなかったのですが、降車ホームを備えていて一安心。しかしそこは特急ホームも兼ねていて、入るには特急券が必要らしいので、到着した列車の中からドア閉めを鑑賞することにしました。


↓ 画像をクリックすると動画がみれます。 ↓
なかなかドアが開かないと思ったら

何と、到着した日光行きの快速列車は乗客が降りるや否や係員が乗り込み、車内清掃が始まりました。清掃は数分続き、係員が降りたところで降車ドアが静かに閉じられた瞬間、僕が浅草に来た理由もなくなりました。

そのほか、京成線の上野、つくばエクスプレスの秋葉原、京浜急行の品川など、思いつく限りの始発駅に行ってみましたが、どこも降車ホーム自体がなく、入場券を買っては失望して退場するの繰り返しでした。このままでは記事のテーマが「西武と東武の光と影」になってしまう!
しかし、まだ渋谷と新宿という巨大ターミナルが残っています。気を取り直して、今度は東急東横線の渋谷駅に向かいます。


特急がやけに多い東武線の浅草
勝手に大きなターミナルを想像していたつくばエクスプレスの秋葉原

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