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土曜ワイド工場
 
地味で手軽なコスプレのご提案
本気のコスプレは社会的損失が大きすぎる


 学生服を着たり割烹着を着てみたりと、最近の自分たちの記事ではよくコスプレをしている。やったことのある人ならわかると思うが、コスプレってやつは妙に楽しく、記事のテンションも上がるのだ。しかしそのハードルの高さも尋常なく高い。まず衣装制作の手間とコスト。そして恥ずかしさ。週末にお父さんが気軽に挑戦するにはちょっと高すぎるハードルだ。
 ならもっと地味で手軽なコスプレならみんなで楽しめるのではないか、と考えていたら当サイトには以前こんな記事があった。すばらしい。が、モノが制服だけに、衣装の調達が必要だったりしてこれでもちょっと大変だ。しかし制服以外に、世の中にはもっと偶発的なドレスコードが存在するはずだ。そこまでコスプレの領域を拡張していくことで今回はよしとしよう。

(text by ざんはわ



ということで用意したコスプレはこちら。
実際に手軽だったのかも含めて見ていこう。


幅がでかい紙袋 ハンカチがくしゃくしゃ

結婚式帰りの人のコスプレ

電車などで見かけてそれとすぐ分かる人といえば結婚式帰りの人ではないだろうか。引き出物の袋というのは他にあんまりないくらい幅がでかい。立方体に近い場合なんてのもある。最近ではスーツはダークスーツ、ネクタイは白でなくともシルバーあたりでいいらしい。それから重要なワンポイントが胸ポケット。白いものを突っ込んでおくと一発で結婚式と分かる。実際の結婚式にはしていかないという人がほとんどだと思うが、ここはコスプレ。多少誇張した表現にしたほうがいい。こうした記号の積み重ねがコスプレのリアリティを高めるのだ。

それでは次の人。

結婚式帰りの人

 

次は夢の国からやってきた、こんなコスプレ。

耳と手 このビニール袋

ディズニー帰りの人のコスプレ

仕事帰りにディズニー帰りの中学生なんかを見かけるとうらやましくなってガーとかヴォワーとか大声出したくなる。それも一目でそれとわかるがゆえのことだ。まず耳。キャラクターが増えて人気は分散傾向にあるかもしれないが、依然として耳だ。耳をつけてる人はだいたいディズニー帰り。これはもう実際にディズニーリゾートに行って買ってくればいいし、なんなら友人10人くらいに聞いたら2人くらいは持ってるだろう。後はビニール袋があればいいのだが、なかったので渋谷に買いに行った。撮影に協力してくれたのは友人。マスクをしてるのは風邪で寝込んでるところを無理にたたき起こして来てもらったからだ。

ディズニー帰りの人(風邪をひいている)

 

次はぐっと生活感のある、こんなコスプレ。

これですよ 皿とかたれとかはなくてもいいけど、はしは欲しいところ

焼肉屋帰りの人のコスプレ

焼肉といえば紙エプロンだ。どこで売ってるのか分からなかったが、困ったときはインターネット。検索して購入するのが送料なんかを考えてもお得だ。今回は20枚で400円くらいのものを購入したが、10000枚で8000円とかいうのもあるので、本気の人はそっちを選べばいいぞ。
この紙エプロン、バサッと広げて首の後ろでキュキュッと結ぶだけで、あら不思議、人間の威厳や尊厳といったものが一気に台無しに。たまに店員がつけてくれたりするところもあるのだが、あれは死にたくなるほど恥ずかしい。かといって死んでしまえばより恥ずかしいので恥ずかしさの板ばさみだ。
問題は果たしてこれは「〜帰り」なのだろうか、ということなのだが、まあこれは他の3人が「〜帰り」だったのでむりやりそうしてるだけだ。別にいつも店の皿を持って帰っているわけではない。

焼肉屋帰りの人

 

最後は、懐かしのあのキャラのコスプレだ。

ガーゼっぽい何か もむ

ツベルクリン反応帰りの人のコスプレ

小学校のときに誰もが受けたであろうツベルクリン反応の注射。打った後に「よくもんどけ」と言われて、クラス全員でもみもみしまくった経験がある。あれ以降腕をガーゼでもんでる人はツベルクリン反応注射をやってきたんだな、と思うようになった。ちなみにこの「よくもんどけ」であるが、今ネットで調べたところ揉んだらいかんらしい。大丈夫なのか?

準備はガーゼでもむだけ。手軽ー。
ガーゼじゃなくてもコットンパフとかそんなのでそれっぽくなるだろう。ただティッシュとなると耐久性と、ティッシュを揉んでいるというむなしさがすごいので避けておいたほうが無難だろう。

ツベルクリン反応帰りの人

 

さあ役者が揃ったのだが。

ん?

ん?

 

あれ?

格好だけキメてみたものの、そもそもコスプレの人たちって何やって楽しむのだろう?キャラクターになりきって遊んでいるのだろうか。試しにそれっぽい会話をしてみる。
「花嫁さんが不細工でさー」(結婚式帰り)
「でもミッキーさんはかわいいよね」(ディズニー帰り)
「ところでミノって全然かみきれないよねー」(焼肉帰り)
「痛かったよね」(ツベルクリン反応帰り)
全然話がかみ合わない。注射後の人にいたっては「痛い」以外に喋ることがない。

よくわかんなくなった。
よくわかんなくなってハトを追い回してみた。


クリックすると結婚式帰りの人がハトを追い回すよ

 

ふつうが一番

多分ハトじゃないと思う。多分カラオケとかでアニメソング歌ってるんじゃないか。そうか、ふつうに楽しめばいいんだ。ということで、平和島ビッグファンというふつうの郊外型アミューズメント施設に行ってボーリングとかふつうのことをしてみた。


大森駅から平和島ビッグファン行きのマイクロバスに 映画館やカラオケ、ボーリングなどに加えて隣が競艇場

 

地味なのかどうか

コスプレの手軽さはここまででもうわかっていただけたと思うので、今度は地味さにスポットを当ててみたい。実際に色々な場所をまわってみて、周りから浮いていないかどうか、注目されてしまったりしないだろうか、ということを検証していきたい。周囲の目が気になってしまうとお尻の穴がきゅっとなってボーリングどころではないだろう。


ボーリングにて

全体的に浮いてはいないのだが、ディズニー帰りがひっかかる。耳のファンシーさに加え、指がボールの穴に入らないのだ。ただ、コスプレというよりはふざけている人の範疇内という印象だ。

仕方がないので両手でボールを抱えるディズニー帰り。実は他の3人もそれぞれ紙袋、はし、ガーゼで片手がふさがっているのだが、ハンデの大きさは比べ物にならない。にもかかわらず、ディズニー帰りは穴に指を入れずとも運動神経だけでスコアを100まで伸ばし、喝采をあびた。他の者のスコアは100に届かず。ボーリングの球に穴は要らないようだ。

穴に指を入れずにストライクを出すディズニー帰りの人

 

バッティングセンターにて

お。あんまり浮いていないかもしれない。

注射帰りの人はただの一球もまともに打てなかった。その辺りは利き腕に注射してもらって、もみ用の手は利き腕じゃない方の手を使う、などで改善されるだろう。

ここで注目してほしいのはうしろで見ている人たち。ついついボーっとしてしまっているが、地味なコスプレがしまりのなさをうまい具合に引き立てていておかしい。

注射の人は利き腕が使えず、後悔

 

ゲームセンターにて

ディズニー帰り、結婚式帰りは持ち前のファンシーさがゲームセンター内の派手な演出とかみあってきている。自分の結婚式の帰りにゲーセンに寄られるのはなんとなくがっかりだが、今回はコスプレだから仕方あるまい。
それはさておき、焼肉帰りがなんだか浮いてきた。妙に貧乏くさいのだ。紙エプロンや割りばし等、使い捨てのもの中心のコスチュームだからだろうか。
ツベルクリン反応の人は揉みのせいでゲームにうまく参加できないでいる。

ディズニー、結婚式あたりがよく調和している

 

映画館にて

映画館もあったので前で写真を撮ってきた。この日は時間がなくて実際には入れなかったが、「観てきた」感じの写真を撮って検証してみる。結婚式帰りはすんなり溶け込んでいる。じゅうたんが結婚式っぽいからだろうか。また、アニメ映画も併映されていたことから、ディズニーも違和感なし。焼肉もよく見るとおはし持ってたりして気になるが、よく見なければまあ許容範囲。注射の人は相変わらず揉んでいる。だからなんだという話ではあるが、とにかく揉んでいるのだ。

観たふり

エスカレーターにて

ああ、こういう感じの集団っているよね、くらいの写真。見事に浮いていない。なじんでいる。とはいえやっぱりディズニー帰りのインパクトが強く、なんとなくディズニーランドで撮った写真のように見えてしまう。対して注射後の人は地味すぎるかもしれない。コスプレ特有の浮ついた感はないのだが、腕を抑えている姿はなんだかちょっと痛そうなのだ。ただの怪我した人のような気さえしてきて、別の意味で気になってしまう。

楽しそうにしてみた

ビッグファン外にて

日が暮れてくる前に帰ることにした。ディズニー帰りの人は手が大きいのでバイバイが目だっていて良い。焼肉帰りの人ははしを持ったままバイバイなので少し行儀が悪いかもしれない。結婚式帰りの人は「末永くお幸せに」とでも言いたげだ。
注射の人は揉みのせいでアクションが小さくなりがち。バイバイもちょっと気のない感じのバイバイだ。ずっと揉んでいるので律儀。えらいと思った。

競艇へ行く者、フットサルに行く者

 

楽しいんじゃないか

浮いていない。ちょっと視線は止まるがすぐに流れていく。
手が使えないなどの不都合はあったが、 そんなちょっとしたハプニングもコスプレの楽しみのうちだ。

実を言うと、一度だけ「何かの撮影ですか?」と声をかけられた。「ええ、アート作品を。」と即答すると「なるほど。かっこいいと思ってました。」とのことだった。多少言わせた感はあるが、程よい目立ち方だった、と信じたい。

さて、こういったコスプレの集いでは何より楽しいのが当日撮影した写真を一気見することだ。
下の画像をクリックすると思い出写真。こういうふうにパラパラ見ていくのが楽しいのだ。

コスプレ成功

うん、確かにコスプレだ。周囲からは浮いていないし、でも、普段着ともやっぱりちょっと違う。気分は十分に非日常なのだ。
手軽にできて、地味で目立たない。そのうえコスプレ気分は堪能できるとあって、試みは大成功だった。

今回は結婚式帰り・ディズニーランド帰り・焼き肉屋帰り・ツベルクリン反応帰りの4種類を取り上げたが、日常にはもっといろんなコスプレ素材がゴロゴロしている。その中から気に入ったひとつを捕まえて、あなたも地味で手軽な非日常の世界を体験してみてはいかがだろうか。


 
 
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