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ロマンの木曜日
 
蔵番ばばあが守る、遊郭の宿のはなし

「杉村春子」「林真理子」「CWニコル」「立松和平」も宿泊
この後、女のプライドをかけた死闘が行われることに……

タイムスリップ現象

4階部分の玄関に入ると、女将さんが笑顔で迎えてくれました。

肝心なところは昔のままで情緒的ですが、各部屋の内部はきれいに改装してあってとても快適でした。おかげで前日一睡もしていないこささんでさえ深夜3時まで目が爛々としていた始末です。

部屋には、入り口や窓とは別に小さな扉があって、不思議に思って開けた先は外。遊女や賭博師がイザというときの逃げ扉として利用していたのでしょうか。今はイザの時ではないのですみやかに閉めました。3階ですから命がけ、死にものぐるいの時しか出入りはできません。

 

寄せてあげて現象

外風呂までの階段は、麻吉の住居空間と宿に挟まれていて、ちょっとした散歩空間でした。
洗濯物の赤いエプロンを全員が「赤ふんどし」と見紛うほどタイムスリップに陥ってしまうほどです。

タイムスリップ現象のためか、神田ぱんさんの脳もどうかしてしまったようで、風呂で「なんだ、遊の乳は作り物だったんか」とおっしゃいます。

釈然としないので湯船のなかで手で乳を寄せてあげて……「ホラ」と見せつけると、全員があわてて湯船に飛び込み寄せ上げ競争になり(マネすんな)と思いました。「こうやったら私の方がデカい」「いや私の方が……」「私だって」と危なく湯あたりをするところでした。

 

生霊と朝まで過ごす

前回の記事では、あたかも5人で旅行に行ったように書きましたが、限りなく本当に近いウソであったことをここに告白します。

前日に高熱にうなされ断念した我妻さんは不参加だったのです。ただ、どうも移動の先々で気配だけはするので、生霊と旅をしている妙な気分でした。

気がつくとこたつの席をひとつ空けてあげていた、というみなの暗黙の心遣いが実に気味悪かったです。今にして思えば、美女3人連れの旅はおそらく修学旅行以来のことでしょうから、コーフンして知恵熱が出たのでしょう。


朝まで空席
急な階段のうえにあった下駄箱
かつての調理場。食器類を洗っていた桶も健在
一部の部屋はこちらの洗面所を使用

一問一答をくり返すご主人と我ら
お香セットも淫猥な匂いが……

資料館の蔵見学へ

当時台所だった場所から、資料館として公開している蔵への入り口へと繋がっています。ご主人の上田さんに案内して頂きました。

当時の繁栄を思い知る見事な絵皿や、奇妙な形の木箱、賭場開帳に使ったと思われる借金の証文……。

「これ何に使うかわかる?」と聞かれて「わかりません。何に使うんですか」と訊ねると「わからないんですよねー」と用途不明な道具もたくさんありました。

そんな中、ほとんど撮影は許可されていませんが、不思議な感慨を受けたのはただの提灯箱です。

電気のない時代に、一部屋一部屋、この箱を配ってまわっていたのでしょう。初めて、長い歴史を実感。しみじみと思いを馳せた瞬間でした。

 

 

おとめ婆さんを想像する

数々の貴重な調度品の中で、皆の印象が一番濃かったのが「おとめ婆さん」です。

彼女はご主人が幼少の頃の蔵番で、いつも蔵の入り口に座って蔵の一切を任されていました。幼少時のご主人はもちろん、おとめ婆さん以外は何人たりとも内部に立ち入ることはできませんでした。ご主人上田さんのお母様は一度も蔵に足を踏み入れることなくこの世を去ったそうです。

「誰よりも怖かった」とおっしゃるおとめ婆さん、会話の途中ではつい「ばばあ」と口走っていることから、その恐怖の程がうかがえます。叱られた記憶が鮮明すぎて、いつ隠居したのかあるいは他界したのかはまるで記憶がないとのこと。

蔵は地下4階くらいあったと思いますが、どの階も「おとめさん」に見張られているような気がして、身の引き締まる思いで見学させて頂きました。


2人のイラストレーターによる、おとめ婆さん想像図 山口マナビさん想像画(左)と、こさささこさんの想像画(右)


イラストレーターのお二人に想像図を描いてもらったのですが、見事に全員の想像図が一致していて驚きました。

ご主人の心の中、そして「麻吉」の蔵にはまだ「おとめ婆さん」が凛として生きて、数々のお宝が守られているような気がします。

ちゃんと行きました

前回の記事で、神田ぱんさんにはいつもだまされ、長時間ヘロヘロになるまで歩かされたりしてまったくロクなことがないのですが、「宿は旧遊郭の地にある"麻吉旅館"」そして「修学旅行気分で!」の言葉にそそのかされ、中学生の息子に対抗するつもりで「行きます!」と即返答。と書きました。

お誘いの文句は「フリーランサーに霊験あらたかという噂の伊勢に一泊二日で行きましょう」というものでしたが、実際は、山口さんが「昨年行ったらドデカイ仕事が舞い込んだのでお礼参りに行く」というのを聞きつけた神田ぱんさんが、勝手に仲間を引き連れてついて行ったというムチャクチャなものだったことを最後に知りました。「お伊勢参りのお誘い」などといかにもツアーを企画したそぶりでしたが、このザマです。まったく油断なりません。

ちゃんと内宮、外宮を参拝しました

麻吉旅館のホームページ
https://members.at.infoseek.co.jp/asakichi_/


 
 
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