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ひらめきの月曜日
 
定食屋になぜか多い相田みつを風の詩を鑑賞する

写真は定食屋にありがちな『ごはんおかわり自由』だが、ここにもなぜか相田みつをフォントが生きている。


相田みつをさんと言えば、日本を代表する書家・詩人であり、没後も多くの人に愛されている。

そして、21世紀の日本において、相田みつをさんの影響をもっとも受けているのがなぜだか定食屋だと僕は思う。

ピンときている人にはきているかもしないが、店舗に関係なく定食屋には相田みつを風の言葉で書かれたポップが多数ある。

なぜ定食屋にはこうも相田みつを風の書体ばかりなのか。なぜ定食屋には相田みつを風の書体が似合うのか。そんなことを考えながら定食屋をはしごしてみたんだなぁ。

(text by 梅田カズヒコ



今回の企画のきっかけとなった定食屋『やよい軒』へ

そういえば久しくすき焼きを食べてない。実験にあたりまずはすき焼き本来の魅力を再発見するためにすき焼きを食べよう。近所の下北沢ですき焼きを食べられるお店に食べに行った。


チェーン店の定食屋『やよい軒』。旧めしや丼である。

やよい軒と言えば旧めしや丼であり、僕が大好きな定食屋のひとつである。理由はご飯の友が豪華だから。そんなやよい軒で定食を何気なく食べているとき、ぼんやりと眺めるでもなく壁を眺めていたら見つけたのがこんな言葉だ。


定食屋ってこんな詩みたいな言葉が壁にありますよね。

壁にかかれた詩。さぞかしいい詩なのだろう、と思って読みすすめてみるといいことを書いているのかと思いきやお店の宣伝だと気づきがっかりした。

と、ここまでがこの日体験したことなのだが、僕は『読んでいくとPRだと気づく』という流れがどうも気になってしかたないのだ。分かってもらえるかどうか微妙なことを書いているのは承知なのだが、この「がっかり感」が面白くて、でもひとことではうまく説明できなくて、そしてなぜか定食屋には必ずこういった文言があって、これはなんだろうといつも思っているのだ。
今回は何パターンか紹介することによって皆さんと少しでも共有できれば嬉しい。では、さっそくひとつめの作品を詠みあげてみたいと思う。


作品1 
発見場所:やよい軒

毎日の元気な笑顔に
おいしい
リズムとアクセント
わがままに選ぶ
彩菜
ぬくもり味自慢


彩菜という言葉のチョイスがぐっと来ます。心が洗われる詩ですね。
こんな詩を求めお次は大手定食チェーン、『大戸屋』に向かった。

 

定食屋の代名詞ともいえる、大戸屋へ

なんと、店主直筆の言葉が。

大戸屋には、店主直筆の詩が!

大戸屋は他の定食屋に比べ女性客も多い。ファミレス感覚の垢抜けた定食屋だと言えるだろう。

そんな垢抜けたお店にもやはり詩はあった。しかも作者が『大戸屋店主』となっている。さっそく詠みあげみたいと思う。

作品2
発見場所:大戸屋

もっと美味しく食べてほしい。
そして
もっと楽しく過ごしてほしい。
そんな想いを込めて
むかし七輪を使って
焼いていたように
焼き物料理は
炭を使って
ひとつひとつていねいに。
もっと笑顔がみたくて
これからも、
できることからひとつずつ。

大戸屋店主

こちらも言ってみれば炭を使っていることのPRであるのだろうけど、なぜかぬくもりと優しさのようなものを感じているのは僕だけだろうか。と、同時に少し策略にはまってしまっているような気もするのだ。この純粋と策略の間を行ったり来たりするのが、定食屋の詩の醍醐味である。定食屋の詩の楽しみ方がわかってもらえただろうか。お次はとっておきの詩を紹介したい。

 

大戸屋にはさらに素晴らしい店の詩が!

店内のいたるところに詩? 宣伝? があふれる大戸屋において、とっておきの詩を紹介したい。


これもなかなかの作品です。

作品3
発見場所:大戸屋

むかし懐かしい
駅前食堂、五十円食堂として
スタートした私達です。(昭和三十三年)
「かあさんの手作り料理を
お値打価格でお客様に」
を「愛」言葉に・・・・・・
「かあさん おなかすいたよう」
こんな言葉に
こんな心に
こたえたい。

大戸屋店主

 

さらりと書いているが、見逃すな!

たぶん大戸屋に来てこんなところを見ているのは僕だけかもしれない。しかし、こういったところを見逃すとはもったいない。わざわざ合言葉を『「愛」言葉』と書いている。定食屋にとんだロマンチストが居たもんだ。僕がこの詩を読んでいる間も店員さんはせっせと無表情で料理を運んでいた。しかし、無表情の店員さんが『愛言葉』という言葉を思い浮かべながら料理を運んでいるのを想像するとどうだろう。いつもの大戸屋が違って見えてくる。

そして愛言葉という言葉のインパクトに目を奪われがちだが、いつの間にか客は全員子ども扱いだ。(『かあさん おなかすいたよう』のくだり)僕も歳を経て、さすがに子ども扱いされることはなくなってきたが、何のことはない。大戸屋の前ではみんな子どもなのだ。肝に銘じておこう。

 

定食屋の代名詞ともいえる、大戸屋へ

大戸屋にはメニューにも魂が見え隠れ

メニューにもたくさん詩があった。

中でも僕はこのくだりが好きだった。

作品4
発見場所:大戸屋のメニューの中の一文

栄養バランスを考えた食材に
時に旬という気配りを添え、
洋の東西にかたよらない味付けで

大戸屋店主

僕は『時に旬という気配りを添え』というくだりが大好きだ。システマティックなチェーン店の調理場で、添えものを添えるときに『気配りを添えている』と思っているとは! 僕たちはそんな粋な計らいにも気づかずにただぱくぱくと飯を食べていたというのか!自分の食い気を少々恥じた。これから大戸屋に行くときは調理人の気配りをもっと考えよう。

また作者の術中にはまっている気がする。テクニシャンの大戸屋を離れ、次の定食屋に向かってみることにした。

関西系定食屋チェーンの雄、『宮本むなし』へ

写真、ちょっと見づらくてすまん。

宮本むなしには自分の足元を見られてるような詩が…

近年首都圏にも増えつつある関西地盤の定食屋『宮本むなし』へ。ここも僕がよく行く定食屋なのだが、ここには自分の足元を見つめなおしかねない詩があった。左下の写真、写真の撮りがちょっとヘタで見づらいが、以下に内容を記す。

作品5
発見場所:宮本むなしの壁面

おいしいものを食べれば
うれしい笑顔が
こぼれる。
みんなで食べれば
もっと大きな笑顔が
こぼれる。

前半部は当たり障りのない言葉である。しかし後半部を見てほしい。『みんなで食べればもっと大きな笑顔がこぼれる』とあるではないか。正直、定食屋には僕を含め1人でご飯を食べている人が多い。それなのに、それなのにである。みんなで食べれば、とある。これはどういったメッセージだろう。

遠まわしに『あんた、結婚はまだなの?』とやたら聞いてくるおせっかいな実家の母親のような意味を含んだ詩なのかもしれない。

 

むなしにはほかにも壁面のいたるところに言葉が

今回のテーマはあいだみつを風の詩ということがテーマだったが、むなしが最もあいだみつをフォントに近い書体で書かれた言葉が多かったです。


と、思ったがよく見るとあいだみつをフォントでもないかも。なんだろう、これ。

あまりにも文字ばかりだったのでここで取材時に注文したメニューをご覧ください

記事ではカットしたが、新宿食堂にて。オムレツがうまかった。

やよい軒のまぐろ丼。これもうまいです。たっぷり醤油をかけていただきました

宮本むなしのきつねうどん。関西風の味付けがたまらん。

あなたの近所の定食屋の詩を教えてください!

僕は定食屋をよく利用するのだが、定食屋と言えば僕の中ではこういった詩の数々である。いろいろ定食屋の思い思いの声が書かれているのだが、悲しいことに誰も注目していない。
そもそもなぜ定食屋で運営者側の魂の叫びを聞かなければいけないのかはよく分からないが、そういったところも含めて楽しんでもらえると嬉しい。できればあなたがよく行く定食屋にある秀逸な詩を教えてください。よろしくお願いします。


 
 
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