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ロマンの木曜日
 
魚介をたくさん食べられる店

「はーい!キンメが釣れたよおー」

と、持ってきてくれたのは、圧倒的なビジュアルのキンメこと金目鯛の刺身だ。

おばちゃんも「どうだ!」という得意げな表情だったが、キンメも「どうだ!」とあの目でアピールしているようにみえて仕方ない。とても太刀打ちできないので、一番離れた場所に、キンメさんは移動してもらうことにした。

はっきり言おう。耐えられない。


しかも肉厚……ある人はこれをグロ画像?と言った。

 

今、目の前の敵

おまかせの焼き魚がでてきた時は「戦いだ」と思った。何と戦っているのか。カマスか、ブリか、サバか。いやちがう。動いてない。今、目の前にある(いる)もの(人)、それは、料理を運んでくるおばちゃんだ。おばちゃんとの戦いだった。全部たいらげなければ申しわけないという気持ちと、かっこわるいよね……という気持ちが葛藤して冷静な判断力を失いつつあった。


くやしいほど画像ではあのデカさが伝わらない……

 

珍味も大量では本領発揮できず

アナゴの刺身というめずらしい一品も、いったい誰が頼んだのかという話になってしまう。コリコリとしておいしいが、この淡白な味をもくもくと食べるのは、ほとんど罰ゲームのようなものだ。

となりの席にカップルがやってきた。半分以上ゆうに残っているサラダを親切なことにお裾分けしようとしたが「あ、うちも頼みました……」と断られてしまった。ケチ。いやちがう。


アナゴには見えないアナゴの造り

 

ばっちり腹にたまるラストの一品

最後は、もはや嫌がらせでは……と錯覚してしまうほどのボリュームを誇る「フライ盛り合わせ」だ。これをラストにもってくるとは……インパクトを残すサービス精神。完敗だ。

箸を休めると「なにサボッてんのよっ!」と罵声が飛ぶなかで、「いったい誰が頼んだのか」と言い出す輩がいてもおかしくはない殺気に満ちていた。フライを頼んだのはそれまで淡々と食べ続けていたフジモトマサルさんだ。


つかこれ、頼むか?フツー。(手の大きさと比べてみてください)

 

着々とノルマ地獄にシフトする

温厚で人当たりのいいフジモトさんに向かって「責任とりな!」と言ったのは、大食いの山口マナビさん。

神田ぱんさんと私は子育ての知恵を活かし「さすがビンボー人!さすがビンボー人!」とホメて育てる技で我妻俊樹さんにアナゴを押しつけることに成功した。私はアワビやサザエの貝づくしを半泣きで完食。うまい。はずだがこの状況で味などわかろうか。

ラスト15分からのスパートは壮絶なものがあった。残してはいけないルールなどないが、なにかに追い立てられるように私たちは食べた。 あれほどやかましい我々の宴を、沈黙に陥れるワナが福ちゃんにはあった。


呆然としてると注意されるわけです
自分の拳が入る神田ぱんの口でもハミだすフライ

 

福ちゃんはエンターテイメントショウだ!

そして1時間と30分は過ぎた。沈黙は破られた。腹も胸もはちきれそうだ。結局明細は不明で、例の貝盛りがいくらだったのかわからない。まああれだけ食って1人5000円は破格だろう。

それにしても私たちは何に追い立てられていたのか。やはりおばちゃんではないだろうか。プロだ、と思う。福ちゃんの第1ステージは歓声で幕をあけた。次に罵声が飛び、やがて沈黙のち達成感。
この超参加型エンターテイメントショウは、おばちゃんなしではありえなかったと言っても過言ではない。しかも彼女が「ちょうどいい量」と計ったあのメニューを、きっちり制限時間で食べきったのだ。

あのルールもうなずける、明細不明も納得の、パーフェクトなプロフェッショナル根性を福ちゃんにみた。

「みんながんばった!」と戦友を讃えながら、二次会へ流れました。
一緒に乗りきった団結力と開放感で6時間以上しゃべりまくって、誰よりもがんばっていたのはおばちゃんだということにその時はまだ気付かなかったのです。

渋谷第2のプロフェッショナル。
客のために「ハッピーバースデー」を熱唱するスタッフ奥野さん

 
 
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