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ひらめきの月曜日
 
フカヒレを日常に引きずり込む


定価なら1,680円。とても買う気がしない。

先日テレビで某女優が「撮影前には必ずフカヒレかスッポンを食べるんです。肌がプルプルになりますよ」と言っていた。

ほほぉ…と思ったが、ド庶民の私には滅多に食べられない物ばかりだ。どちらも「特別な日に外食で!」な食材だし、そもそも値段が高すぎる。

そんな「ハレの日の食べ物」とも言えるフカヒレを、スーパーの見切り品コーナーで発見、思わず手に取り「プルプルなのか…」と呟く。気が付いたらカゴに放り込んでいた。

こうして我が家にやってきたフカヒレだが、スープだの姿煮だのという定番メニュー以外で食べたら一体どんなことになるんだろう。果たしてフカヒレ様は、庶民レベルにまで降りてきてくれるんだろうか。

高瀬 克子



まずは、もどします

このような乾燥状態のフカヒレを買ってきたのは初めだったので、パッケージに書かれた「もどし方」をしっかり読み込んでから作業を始める。

それにしてもこの乾燥フカヒレ、かなりクサイ。


まさか、こんなにクサかったとは…
グラグラ煮ても、まだクサイ。
1時間30分煮たフカヒレを水洗いしたら、
水・日本酒・ネギ・生姜と共に15分煮ます。

そういえばスープにしろ姿煮にしろ味が濃いメニューだが、クサみを消す目的もあるのだろうか。

「こんな状態では日常レベルの食事に対応出来ないのでは…」と不安になったものの、ネギや生姜と一緒に煮ることで、匂いはほぼ消すことが出来た。

そして無事に戻し終わったフカヒレがこちら。どーん!


どーん! と言っても20グラムほど。言葉にすると「ちんまり」が妥当か。

なんというか、定価が1,680円というのが信じられないような見た目ではある。木っ端状態なのがいけないのだろうか。しかし、フカヒレはフカヒレだ。

よく「フカヒレ自体に味はない」と言うが、今こそそれを確かめる時だとばかり、ひとくち食べてみた。


ちょっと失敬して…

あ、無味です、無味。確かに無味。微かに生姜の香りがプーンとするが、これならどんな料理にも対応が可能だろう。さらにコリコリというかザクザクというか、例の歯応えが非常に心地良い。うん、これはいいぞ。

というわけで、さっそくこの高級食材を、庶民の食卓に紛れ込ませたいと思う。


はい、納豆です。
さすがに、ちょっとビビリました。

日常レベルの食事の代表といえば、納豆だろう。

それにしても納豆とフカヒレだ。いいのか、こんなことしていいのか、バチが当たらないか…と不安になるような組み合わせだが、バチなど当たるはずもない。両者の違いといえば値段しかないのだ。

あまりの身分差に納豆が萎縮しているように見えたので「納豆よ、自信を持て! 食べ物に貴賤はないのだぞ!」とゲキを飛ばしながらグルグルと両者を混ぜ合わせる。



完全に混ざりました。
どんな味になってんだろうか。

食べてみたが、なんの違和感もない。ないどころか、すごく合う。フカヒレ自体に味がないだけに頼りになるのは歯応えのみなのだが、あのブリブリとした食感が妙に納豆と良く合うのだ。

味の邪魔を一切せず、納豆の糸に絡まって「あなたの助けになります」と援護するフカヒレ。どちらが主で、どちらが従か分からなくなってきた。(そもそも、そんな関係は設定されてないが)

農夫として一生を終えるつもりだった納豆が、無実の罪で城を追われたフカヒレという名の無口な姫君と恋に落ち、持ち前の粘り強さで姫の冤罪を証明、2人は結ばれ納豆は王位に就いた…みたいな味だった。

とにかく、フカヒレがいい人そうなことは分かった。自信を持って次の食べ物へと移りたい。


 

 
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