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ひらめきの月曜日
 
カンテレの音色は幻想的な響き
カンテレ教室の会場でもある、カフェ「じょじょ」さんにて、お話をうかがいました。


皆さんはカンテレという楽器をご存知でしょうか。
フィンランドの民族楽器だということですが、まだ日本では珍しい。

そんな楽器・カンテレですが、友人の友人にカンテレ奏者の方がいらっしゃるということで、ぜひ一度カンテレを見たい、聞きたい、できれば弾きたい、というわけでお会いしてきました。


カンテレ奏者・あらひろこさんのお話を交えつつ、お送りします。
幻想的な響きをお聞きください。

(text by 加藤 和美



■初めて聞くカンテレ

今回、カンテレ奏者のあらひろこさんは3種類のカンテレを持ってきてくださった。

まず最初に取り出したのは、コンサートカンテレ。
カンテレの中でも大きく、弦が多い。
カンテレは弦の数が5〜39本まであるが、このコンサートカンテレは最も多く、39本の弦がある。

とにかく初めて出会うカンテレ。
チューニングが終わるのを待って、さっそく弾いていただくことにした。


こちらが39弦のコンサート・カンテレ。カンテレが載っているのは、カンテレ専用のテーブルだそう。
チューニング中のあらさん。レンチのような道具で弦を調整。

 

■まずは聞いていただきたい

今回、普通のデジタルカメラで動画を撮影してしまったので、音質が悪いのをおわびしたい。

こんなにきれいな音色なら、もっとましな録音機材を借りてくるんだった……と思いっきり後悔してしまうようなすばらしい音色。

ぜひ、お聞きください。


流れるようにカンテレを奏でるあらさん。手の動きもまた独特。

あらさんがカンテレを弾き始めると、なんとも幻想的な音色に驚いた。
今まで聞いたことのある弦楽器とはまた違う、素朴さと美しさのある音色に、なんと例えたら良いのか困ってしまった。

この楽器を使ったゲーム音楽もあるそうで、なるほど、これなら間違いなく、ファンタジックな世界観にぴったりだ。

ちなみに演奏しているのは、あらさん作曲の、「日蔭の庭」という曲。
居合わせたお客さんからも溜息が洩れる。


初めてカンテレの音を聞かせていただき、グッと興味がわいたところで、続けて違うタイプのカンテレを見せていただくことに。 


こちら、小さな5弦のカンテレ2種類。

 

特にサウンドホールなども余分な部分もなく、本当に弦が張ってあるだけ。

小さい楽器なのに音色が深い!
(音が出ます)

■小さなカンテレも魅力的

大きなコンサートカンテレの次に、小さなカンテレを2種類見せていただいた。

まずは木目が暖かな方のカンテレから紹介。
こちらが伝統的なカンテレに近いタイプだそうだ。
弦の数は5本で、実際に持ってみると見た目よりずっと軽い。
木のボディに弦が張ってあるだけの、本当にシンプルな楽器だ。

〜あらさんのお話〜

カンテレは2000年も3000年も昔から伝わってきた楽器です。
フィンランドにはカレワラという叙事詩があるんですね。
文字のない時代から、口伝えで伝えられていまして、その中にすでにカンテレは登場しています。
カレワラの中では、ワイナミョイネンという英雄がカンテレの名手として描かれていて、彼がカンテレを奏でると、村の人も動物もみんな集まって来て、月も太陽も聞きほれたと伝わっています。

 昔のカンテレは馬のしっぽの毛を弦にしていたそうで、その名残でこのナイロン弦もよってあるそうだ。


あらさんに、こちらのカンテレを弾いていただいた。
大きなコンサートカンテレとはまた違い、弦の音が直接響くような音色。
カンテレ自体は小ぶりだし、軽いのに、近くで聞くと美しさの中に素朴な力強さを感じる。

 

弦の種類や弾き方で雰囲気が違う。この曲は楽しそうに聞こえる。
(音が出ます)

■エレキなカンテレも

続いては、こちらの青いカンテレ。
ボディは丸みのあるデザインで、スティール弦。
ストラップもついているし、ボディの端にはピックアップまでついている。

なんとこちらはエレキカンテレなのだ。

あらさんは、コンサートで他の楽器と競演する際に使うそうで、今はこのタイプのカンテレで始める人も多いのだとか。カンテレは伝統的で古風な楽器かと思いきや、現代的なものもあるのだった。


こちらのカンテレも弾いていただいた。
前述のカンテレは素朴な響きがあったが、こちらは高く澄んだような音。
曲や弾き方でも印象が違うのが面白い。

 

基本の手の位置はこんな感じ。

ホント、不器用ですから…。でも弾けた!

■それでは、弾いてみよう

聞くだけでなく、カンテレの弾き方を教えていただいた。

恥ずかしながら、楽器の演奏は得意ではない。
はっきり言ってへただ。
そんな私でも大丈夫だろうか。
おそるおそる、カンテレをお借りした。

まずカンテレの弦は、下から1弦、2弦…と数えて、弦を爪弾く基本的なポジションは以下の通り。

一弦(一番下の弦)は、右手の人さし指。
二弦(下から二番目の弦)は左手の薬指。
三弦(真ん中の弦)は左手の中指。
四弦(上から二番目の弦)は左手の人さし指。
五弦(一番上の弦)は右手の親指。

弦の番号を間違えて、違う弦を弾いてしまったりしたけれど、慣れるとなんとなく弾けるようになってきた。

ギターのように左手と右手で別々のことをする楽器が苦手なので、ピアノ派には弾きやすいかもしれない。
楽譜が読めなくても、弦の番号さえわかれば弾けるところがまたうれしい。

カンテレの先生でもあるあらさんによると、子供やお年寄りでも楽しめますよ、とのこと。


また簡単なだけでなく、ストロークやハーモニクスといった、ギター同様の奏法も多々あり、手軽な一方で、極めようと思うと奥が深そうでもある。

 

■あらさんの、カンテレとフィンランドのお話

カンテレを一通り紹介していただいた後、あらひろこさんのお話をうかがった。カンテレと、どうして出会ったのだろうか。

 

――実は、カンテレの前にバンドをやっていたと友人から聞きました。あらさんから、ロックというイメージが浮かばないですけど(笑)

あらさん:(笑)ロックというか、ポップロックという感じです。最初はドラムだったんですけど…。

――ドラムですか、イメージ違いますね!?

あらさん:ドラムはごく短い期間で、あとは主にキーボードでした。

――カンテレとの出会いは。

あらさん:これは本当にありがたいご縁をいただいたんですけれども、北海道フィンランド協会をお手伝いさせていただいたのがきっかけで、カンテレを始めました。フィンランド協会に入った翌年、カンテレ奏者を招くことになっていて、コンサートや講演の準備の仕事をしたんです。これがとても良いタイミングで、カンテレを始めてすぐ生の演奏を聞く機会になりました。その時に5弦のカンテレを習いまして、その後も練習会を続けていました。

――それは何年のことでしょうか。

あらさん:1991年でした。その後、指導者養成のための研修という形で、フィンランドに行く機会をいただきまして、最初は5弦だけという話だったのが、私は大きいカンテレもやりたくなって(笑)。1994年にフィンランドのカウスティネンという田舎町に行きました。そこは民俗音楽のメッカで、国立民族音楽研究所があって、民俗音楽の大きなフェスティバルがあって、人口3000人の町に1万人以上の人がやって来るんです。それからヘルシンキに行きまして、あわせて1ヶ月勉強しました。


――それでは16年くらいカンテレを弾いているということになりますね。

あらさん:そうですね。


あらさんにカンテレのお話をうかがっていると、
カンテレのふるさと、フィンランドの話も…。

――日本のカンテレ人口は何人くらいでしょうか。

あらさん:日本全体ではよくわからないのですが…。北海道では初心者や演奏活動をしている方も全部含めて50〜60人くらいだと思います。北海道はカンテレが盛んなんですよ(注:あらさんは北海道在住)。

――それでも、やっぱりカンテレを演奏する人は少ないですね。シンプルな楽器なので、もっと広まってもいいと思うのですが。カンテレはどこで売っているんですか?

あらさん:普通の楽器店では売っていないので、輸入になりますね。カンテレ教室で新しい人が増えたら、数台ずつまとめて輸入しています。送料がけっこうかかるのでまとめて送ってもらうんです。今、日本でもカンテレを作ろうかという動きもあります。

――楽器屋さんでも売っていないなんて、珍しい楽器なんですね。いくらくらいするんでしょうか。

あらさん:今はユーロが高いので、5弦のカンテレが2〜4万円くらいからかな。

――ギターも買おうと思えばそのくらいしますし、特別高いというわけではないですよね。

同行者:カンテレ、欲しいと思いました!さっき弾かせてもらったらすごく楽しかったので。


同行の友人も、ちゃっかり弾き方を教えてもらっていた。
この写真はハーモニクスの弾き方を習っているところ。

――カンテレの演奏活動をしていて、何か特別なこととかありますか?

あらさん:そうですね、カンテレって何か特別なところのある楽器だと思うんです。音も独特ですし、カンテレの作る空気と言いますか…「こんな音は初めて聞いた」と言われます。あと子供さんはすごく素敵な表現をしてくれます。「お星様が降ってくるような音だね」とか「雪のような音だった」とか。


――かわいいですねー!普段はどんな活動をされているんですか?

あらさん:演奏活動や、カンテレ教室や、CDを出したり。あ、6月に新しいCDが出ます(笑)。フィンランドって緯度が高いから、冬の間は真っ暗で、春になると毎日どんどん日が長くなって、北の方では白夜になって。だから彼らにとって夏至(6月)はすごく大きなイベントなんです。

――それで6月にCDを出すんですか?すてきな理由ですね。

あらさん:フィンランドの人は本当に静かに暮らしていて、自分の時間を大切にしていて。忙しくしないと言うか。習いに行った時も、3時になったらしっかりティータイム。そのあと練習して、4時になったら家に帰る。


――4時で!?

あらさん:その代わり、朝は早いようですけどね。別荘を持っている率も高くて、夏休みは2〜3ヶ月もあって、森の中のコテージでゆっくり過ごすんです。


――北海道もそうするべきですね!

あらさん:(笑)そうですね。


弾いていると、気持ちは北欧のスローライフ気分。

 

■弾くと幻想的な気分にひたれます

弦を爪弾く楽器は数あれど、やはりカンテレには北欧フィンランドの独特の響きがありました。
珍しい楽器といえば東京なのかな、と思いつつ、カンテレを弾いている人が北海道に多いというのも、うれしいお話でした。

ちょっと手に入れにくいけれど、小ぶりで軽く、つくりがシンプルなので扱いも簡単そう。
今回カンテレを紹介してくれたあらひろこさんも、カンテレの魅力は飽きないこと、また夜中に一人で弾いても楽しいですよと教えてくれました。

確かに音がやさしいので、夜に一人爪弾くと、世間の喧騒を忘れて、一人しんみりできそうな楽器です。

コンサートカンテレは、さすがに弾くのが難しそうだ。

■取材協力

あらひろこさん
URL : http://white.ap.teacup.com/kantele/


玄米ごはん・カフェ じょじょ

札幌市手稲区富丘5条4丁目18−6
TEL : 011-684-1040
定休日:日曜、月曜、年末年始


 
 
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