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フェティッシュの火曜日
 
和光のディスプレイ制作現場に密着


銀座・和光。交差点に面したウィンドウには、世界的にその名を知られている超有名なディスプレイデザインが施されている。

「世界的に」というのは誇張でもなんでもなく、日本政府が自国を世界にPRするビデオでも紹介されているほどだ。

今回、そんな和光さんのディスプレイを制作している工房にお邪魔することができたので、社会科見学のつもりでいちいち「ほうー」と感心してきました。

乙幡 啓子

造形のプロの現場へ

私はなにぶん不勉強なため、和光のディスプレイというものをそれほど今まで意識せずにいたのだが、日本中のウィンドウディスプレイの冠たる地位にあり、お手本であるのだということは下の写真を始め、後に紹介するWebサイトをご覧いただけばわかるだろう。


今回のは夏向けのディスプレイです。

年8回衣替えするこのディスプレイの造形を引き受けているのは、調布にある株式会社シャコーさん。

今回、その制作現場に立ち入らせてもらえることになった。モノ作りのプロの現場だ、後学のため、しかと見てこなくてはならん。


工房!という構えの外観。

1階の工房に入ると、そこここに和光歴代のディスプレイのパーツが格納されていて興奮する。


おしりを向けて格納されている3頭の何か。
実際の車をモデルにしているが、ディスプレイの奥行きに合わせて細くしてある。

社屋裏には、用済みのFRPメス型が。
社内の壁には、歴代の和光ディスプレイ。どれもまったく異なる趣きで、アイデアがいかに豊富であるかわかる。

 

ネタのヒント探しには我々も苦労します

和光のデザイナーのアイデアを、実際の形におこしていくのがシャコーの社長、車屋 弘さん、この道40年という方である。お邪魔したこの日は、和光への設置の2日前。しかしまだ車屋社長の頭の中で、デザインのアレンジ作業は続いていた。

「ディスプレイっていうのは、ただデザインするだけじゃダメなんだ。人の目を留めさせるようにしないと。そしてやはり世界が注目してるウィンドウだからね。気は抜けないけど、アイデアを考えるのは面白いよ。」


車屋社長。創作のこととなると話に熱が入る。
今回のディスプレイの設計図面。

今回の夏のディスプレイは縁日のお面売りの様子からヒントを得ているそう。壁いっぱいにお面がぶら下がってゆれている、そんなイメージを、たくさんの「お面オウム」で表現するのだ。

「このデザインをどう膨らませていくか。そのヒントは、ふだん生活の中で見聞きするうちの、ちょっとしたことの中にあるんだよ。」

そして色も、流行をキャッチし、先取りしていかなければならない。社会の動きも敏感に捉えてエッセンスとして加味することもある。
「大変だけどね、そこに面白さがあるね」と、社長は繰り返す。


オウムの型。完成形のようだが、実はこの2つとも試作。
そして試行錯誤の上、決定した型。こういうものがいつでも作れるということに、うなる。

そして上のオス型からとった、石膏のメス型。この型4つで、30羽あまりのオウムを3日で制作したという。
ずらっと並んだ、FRPでできたオウム。(後ろのイルカは別の受注品です)

上のオウムが、土壇場になってこのように塗り替えられたそうだ。
オウムのとまる止まり木は、モーターで回るようになっています(モーター、止まり木は別会社での制作)。

ああ、こう書いてしまうとなんでもない。
しかし、デザインをひとたび立体におこすだけでも大変なのに、制作を始めてからもデザインの変更、微調整、試行錯誤は続く。だいたいいつも1ヶ月前から準備するとのことだが、造形プランが決定してからの制作時間は2週間程度というからすごい。

平面を立体にしていくわけだから、作ってみて初めてわかる部分もある。
そして、完成する最後の最後の段階まで「慣れてはいけない」のだと思う。ここはこうでいいのか、といつも考え続けていなければ、いいものは生まれないということだろう。

と熱くなってしまいましたが、はっきり言って自分は素人なので、またぜんぜんプロの方とポイントのずれたところで興奮して写真を撮っていた。次ページでお伝えします。


 

 
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