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ひらめきの月曜日
 
ちょっとそこまで、29キロ

町を歩いているとよく見かける「あと○メートル」という看板。
場合によっては「あと○キロ」という、看板から目的地までがやや遠い場合もあります。

ある場所に、看板があったので、挑戦しに行ってきました。

(text by 加藤 和美


 

■例えばこんな看板

札幌から離れて約1時間ほどの町で、自転車を走らせていると、道端に看板が立っていた。


お、なんだあれは。
なんて力強いタッチだ。

この看板からは、あと100メートル先でゆでとうもころしが売っている、ということがわかる。

具体的に数字が書いてあることで、あと100メートル先か、じゃあ寄ってみようかなという気持ちになり、自転車を走らせた。


お、なんだあれは。
すいませ〜ん、ひとつください。

実際には看板から店まで200メートル以上あったような気がしないでもないが、ともかく店に到着して、ゆでとうもろこしをゲット。

この店のすぐ脇が自宅と畑のようで、どんどんとうもろこしが補充されていた。
とりたて、ゆでたてのとうもろこしは甘くておいしかった。


ああ、こりゃうまいや。看板に気づいてよかったなあ。

…という流れが、正しい「あと○メートル」看板と、それを見つけた人の反応である。

実際に看板の表示と距離が合っていなかったとしても、その看板を見ることによって「へー、○メートル先にあるんだ」「じゃあ、行ってみようかな」と思わせる主目的が果たせている。

では、次の看板の場合、どうだろうか。
北海道は砂川市で見かけたのだが、


民家の壁にごく普通のフリをして貼られていた。

この看板からわかるのは、「イオンまで29キロ直進」。
つまり29キロまっすぐ行けばイオンがあるのだ。

「AEON(イオン)」
これはいい。この部分は問題ない。
みなさんおなじみのショッピングセンターだ。これは町でよく見かける。

しかし、
「29km先」
30キロと書かず29キロと書いているところに、少しでもマイルドにしようという気持ちを感じてしまうが、29キロという数字は大変なものだ。
29キロといえば、東京駅から横浜駅の直線距離が同じくらいだ。
お店へ呼び込む看板に「あと○キロ」と表示するには、数値が大きすぎやしないだろうか。

そして、
「直進」
29キロもの道をひたすら直進である。
この看板は国道12号線沿いにあった。
国道12号線といえば日本一長い直線道路で、過去に記事にしたこともあるが、本当に29.2キロの間、まっすぐ道路が延びている。
そういう意味では、本当に「29キロ直進」である。

さて。
この看板は本当に「あと29キロ」なのだろうか。


ちょっとイオンまで行ってきまーす。

確かめるべく、実際に向かってみた。
自転車で。

 

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写真ではわからないが上り坂。おまけに強風で向かい風。

■市街地をゆく

「イオンまで行ってきまーす」と、砂川市の市街地を自転車で走る。
市街地は軽いだろうと思っていたが、甘かった。
この日は強風で、しかも向かい風だったのだ。
私が乗っているのは、車輪の小さな折りたたみ自転車である。

強風のおかげで、ペダルが重い!
こいでもなかなか進まない!

車に乗った同行者が、1キロほど先で待っていてくれたが、そこに行っただけでもう疲れていた。
こんな調子でイオンまでたどりつけるのだろうか。
同行者が不安そうな顔をしていたが、私が一番不安だ。


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なぜ見知らぬ町を、自転車で走っているのか…と一瞬目的を忘れそうな、道のまっすぐさ。
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1キロ走っただけでこれだ。

 

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まっすぐな住宅地。このあたりは走りやすかった。

■住宅地をゆく

このままあきらめるわけにはいかないので、再び自転車を走らせる。
市街地を抜けると、周りの景色は住宅地になってきた。
このあたりは平らで走りやすかった。

しかし乗っているのは折りたたみ自転車である。
強風に対抗しようと、必死でペダルをこげばこぐほどコントみたいになっている自分がいた。

同行者は3・5キロ先で待っていてくれていた。
確かにしんどいけど、まだまだ行けそうな気がする。
そう言ったら、私の亀のような進み方にイラついていたらしく、さっさと車を走らせて行ってしまった。


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同行者の車窓より。平地なのに、自転車を引いてる。
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ハタから見ていて「必死でこいでるのに全然進んでないな」と思ったらしい。

イオンじゃなくても、ショッピングセンターはあるんだけどね…。



 

 
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