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フェティッシュの火曜日
 
招き猫誕生の地を猫くらべ
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違和感ないよね。


ここ数年テレビから地域まで、アチコチで「俺らがキャラクターをメジャーにしよう!」という動きが目につきますね。地方初の「ゆるキャラ」なんてジャンルができるくらいで。

ソレ系のキャラは総じてファニーというかファンシーさがあるわけだけど、日本初でそんなキャラの最古参というと「招き猫」ではないだろうか。というかいつ頃からあるんだろ?とか調べてたら、発祥の地も3カ所説があるらしい。モノが招き猫だけに、招かれるように生誕の地の今を見てまいりました。

大坪ケムタ



数なら圧倒!豪徳寺

まずはご近所ということで、発祥の地その1・世田谷区の豪徳寺へ。以前大塚さんの記事に登場したことがあるので、覚えている人もいるのでは。

ちなみに、この寺が招き猫の発祥という説はこんな話。

彦根藩第二代藩主・井伊直孝がこの寺の前を通った時、和尚の飼い猫が手招きするような仕草を見せたために寺に立ち寄った。すると雨が降り始め、たちまち雷雨になってしまい、直孝は猫に招かれたことを大層喜んだという。その後、直孝は豪徳寺に多額の寄進をし、同寺は繁栄した。そして、この猫が亡くなった時も和尚は厚く弔い、「招猫堂」がたてられ、招き猫が作られるようになったという。

なるほど、ファンタジーな中に藩主など実在の人が出てくるところがそれっぽい。って、今回はどれが真相か?って探す旅じゃないんだよな。

それにしても、最寄り駅の豪徳寺駅からお寺につくまでの商店街からして右に左に招き猫。街のムードアップ+商売の縁起物で一挙両得なんだろうねぇ。


駅では横向きに。
肉屋ではウインナー一押し。

甘味屋では高い位置から。
おみやげバッグだって登場。

さて商店街を抜けて参道へ。狛犬が見守る門柱からすーッと総門へと伸びた道の光景がどこか重々しく見えるのは、500年以上の由緒ある寺ならではの風格か、お寺の名前が格闘技ゲームの「豪血寺一族」を思わせるからか。後者はごく一部だと思いますが。

ちょっと「魁!男塾」チックでもある。

総門をくぐると、鮮やかな緑と綺麗な塔が。周囲は住宅街とあって、いたって静か。猫に会う前に、漆黒の狛犬がどすーんと鎮座していた。


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でっかい香炉、そして狛犬がクワッ!
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足下は抱えさせられた小鬼?がヒー。

そして同寺の「招き猫発祥の地」らしさを見せる「招き猫奉納所」へ。願いを叶えたい人、叶えた人が奉納するのだとか。猫も大変ですな。観音堂の脇を曲がると‥わ、あらためてすごい量。


あ、ここだ。

あらためて、猫だらけ。

一斉に鳴いたら大変そうだ。ニャー!

ちなみに招き猫は販売所に売ってあった。小判とかかついでない、ずんぐりむっくりした素朴でかわいげのある表情。さすが本家は欲出してないというか。8サイズから選べるし。


だるまがちょっと居心地悪そう。
絵馬も招き猫です。馬だけど猫。

 

自性院の猫はひそやかに

次に向かったのは新宿区落合の自性院。こちらの由来はこんなお話。

戦で劣勢にたった太田道灌(後に江戸城を築城したことで知られる武将)野前に黒猫が現れて手招きし、自性院に案内されて命拾いをしたという。また、同所にある猫地蔵の由来はそれとは別で、徳川中期に貞女と誉れ高かった「とある豪商の娘で金沢八郎冶の妻」法号・覧操院孝室守心大姉の冥福と後生に伝えるためのものだとか。

お地蔵さんが出来るくらい、ってどのくらい貞女だったんでしょうねぇ。というか、当時の貞女ってイメージがピンと来ない。「アイドルはオナラしない」みたいなもんだろうか。

さて最寄り駅・落合南長崎駅から間もなく大きな看板を発見。新目白通り・目白通りと交通量の多い幹線の近くにしては、お寺自体はこじんまりした感じ。


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しっかり「猫地蔵堂」と書かれ、横には‥

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おお、門でお出迎えしてくれてます。

こんな入り口すぐ、狛犬のような位置にいるのからして、ウチは猫押してますよ!というメッセージを勝手に感じて楽しみさが増す。「招く」というパフォーマンス的に考えれば、自然だけども。

そこから小道を進むと、小綺麗なお堂と豊川稲荷も祀られてました。お狐様あり、お猫様ありと、なんかパワー強そうですよ。


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こちらが自性院。
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お狐様&真ん中の顔の人も見守ってます。

入り口の招き猫から見ても、もっと猫ねこしたお寺か‥と思いきや、看板の「猫地蔵」の姿すら見あたらない‥というのも、実は猫地蔵は節分の日だけしか公開しない秘仏らしく、普段はお堂の中でひっそりとしてらっしゃるよう。入り口の招き猫で期待させられただけに、残念だなぁ。

結局、入り口の一体だけで他に猫絡みはお堂があるのみ。


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この奥に。会いたいなー。
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普通のお地蔵さまはいっぱいいらっしゃいます。

先の豪徳寺あたりと比べると、全体的には落ち着いたお寺ですが、お祭りの時は地元の人で賑わうんだろうなー。地域の人に愛される、まさに猫のようなお寺。そんな雰囲気を感じたり。


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犬が多いから出るのヤなのかな?

 

女子人気?の西方寺の猫

さて続いては豊島区西巣鴨の西方寺。こちらの招き猫ストーリーは‥

元禄時代、吉原の遊女・薄雲がたいそう三毛猫を可愛がっていた。ところがある日、厠に入ろうとすると猫が彼女の裾につきまとって離れようとしない。やむを得ず遊郭の主人が脇差で猫の首を切り落とすと、離れた首が厠に潜んでいた大蛇に食いついた。そんな愛猫の忠義心を讃えて、西方寺で供養したのだという。

なるほど、いい話ですが、いくつか資料やサイトを見ても「招いた」って描写はないんですが‥まぁ元禄時代から語り継がれてくうちにいろいろあったんでしょう。

寺院が密集している巣鴨地区。西方寺も大通りからちょっと奥まったところに並んだお寺の中で発見。


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普通の家と混在した寺町にひっそり。
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昔は門に招き猫がいたそうですが。

さて由来は上の通りですが、お寺の周辺には特別招き猫絡みの看板などはなし。招き猫の由来を思わせる像があるのは墓地の奥の方。あるお墓を守るように鎮座していた。


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西方寺内のこちらのお墓の足下にいるそうな。
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「高尾之墓」?その下にちんまり。

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あ、もう招く腕が‥。時代を感じさせます。

この「高尾」さんとは誰かというと、落語が好きな方なら「紺屋高尾」などで知られる花魁・高尾太夫のこと。今でいうトップグラビアアイドルみたいなもんでしょうかね。落語で有名、といっても「高尾」は初代から数代に渡り受け継がれた名前なので噺に出てくる女性、とは限らないのですが。ちなみにこのお墓の高尾太夫は2代目だとか。

石像になっても美人に飼われるとは羨ましい招き猫ですが、見てのとおり招く腕がもう欠けてる!頭もヒビが入ってて、下手に触るとポロポロっと崩壊してしまいそう。いくら「首が飛んでいった」って伝説があると言っても、胴体だけの猫像は見ててしのびない。


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復旧か保存を望みたいもんです。

招き猫のルーツと言われる3つのお寺、どこも極端に宣伝に走るわけでもなく、静かにその街になじんでる感が印象的でした。どこが元祖、なんて決めずに「俺らが街のシンボル」的に愛され続けたらいいよね。

 

これは違和感がある。似てるだけに。

招き猫は見たけれど

3つの寺に行った中で、実際の猫は一匹も見なかったのは残念だなぁ。結構住宅街寄りな場所だったわりには。むしろ周囲に「猛犬注意」とかのシールを見る機会が多かった。ま、猫寺のお墓から夜な夜なニャーニャー聞こえるのもちょっと怖い気もしますが。


 
 
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