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フェティッシュの火曜日
 
海抜0mからの富士登山

12:00−徐々に道が傾いてきた

これまで私は傾きの無い普通の平地を歩いてきたが、 ここにきてようやく道に勾配がついてきて、 富士山の山麓だという雰囲気が出てきた。

長い緩やかな坂道を登って行くと、 住宅街から畑へと移り変わっていく。 うん、景色に変化があるというのは、楽しいものですなぁ。


ひなびた町工場のある住宅街を抜けると 畑が広がる光景に出た

しばらく坂を登っていくと、広見公園という公園に到着した。 休日なのに人は少なくちょっと寂しいが、 園内のバラの花はきちんと手入れがされており、気持ちの良い公園だ。

高度計で計ってみると、ここはおおよそ標高100m。 結構上がってきた感じはあったが、まだまだこんなものなんだなぁ、とため息。 富士山まではまだまだ遠い。

私はここで昼食を取ることにした。 途中にあったコンビニで買ったおにぎり3個を頬張る。うん、うまい。


躍動とはあるが静かで落ち着いた感じの広見公園 ここで食事休憩を取ったのち、登山再開

広見公園から出た後は、またしばらく住宅街と畑が混じったようなエリアを進んだ。

途中、工事中の第二東名高速道路のインターチェンジに繋がる道路によって 村山道が分断されていたりと、少々ルートが分かりづらいのだが、 その辺りを抜けると風景はお茶畑へと切り替わった。

なんとも静岡らしい景色が見れて満足、満足。


お、ちょっとこれ静岡っぽくない? おぉ〜静岡っぽい!静岡だ!万歳!


14:00−突然ですが、クイズです

さて、問題です。

下の二枚の写真は、村山古道沿いにあった畑であるが、 それぞれ一体何の畑かお分かりだろうか。


一見お茶畑であるようにも見えるが…… こちらは一見空き地のようだが……

答え:シキミ畑(お供えに使う植物らしい) 答え:コケ畑

だからどうしたという声が聞こえなくも無いが、 まぁ、こういうものを栽培している畑もあるものなのである。

静岡県の作物と聞けば何よりもまずお茶が思い浮かぶが、 富士山麓で栽培しているものは、何もお茶だけではないらしい。

また、ここに来る途中には、なぜかバナナの木も茂っており(これは畑ではないが)、 小さなバナナが実をつけていた。 熱帯の作物というイメージの強いバナナ。 この辺の気候でもバナナは育つものなんだなぁ。

だからどうした。


なぜか道沿いにあったバナナの木 よくよく見ると、かわいらしいバナナがなっていた


15:30−人家もまばら。いよいよ山らしくなってきた

さて、そうこうしているうちにいつの間にか住宅の数は少なくなり、 村山古道はいよいよ登山道という感じになってきた。

道沿いには古い道しるべや野仏が点在し、 また周囲の畑には富士山の火山弾で作られた昔ながらの石垣が見られ、 この道が歴史ある古道だということを教えてくれる。


村山への古い道しるべ こちらは最近立てられた村山古道の標識
林の中の小路をとぼとぼ歩く 独特な祭祀習慣のある集落

この辺りの集落は、なんとも独特な風情が漂っていた。

火伏せの神だという、「バンヤ」と呼ばれるワラで編まれた家型の小さな社があったり、 ちょっとグロテスクすぎて写真を載せられないが、 カラスの剥製をぶら下げて、鳥避けにしている畑があったり。

なんだか、この地域で粗相してしまったら、 剥製のカラスと同じ運命をたどりそうな気が…… そんなバカなことをと思いつつも、 日が傾いてきたこともあり、歩く足は妙に早くなっていった。

そうして薄暗い林道を越えると、横沢と呼ばれる集落に出た。


横沢集落。ここはかつてバスのロータリーだったらしい 雰囲気がありすぎてちょっと怖い


17:00−村山浅間神社に到着

ひとけの無い道をさらに歩くこと十数分、 そうしてたどり着いたのが、かつて富士山信仰の一大拠点であった村山浅間神社である。 標高は約500m。


かつての富士山信仰の拠点、村山浅間神社 境内には修験者が禊をしていた水垢離場などがある

この村山浅間神社は、田子の浦から富士山山頂までの村山古道において、 ちょうど中間ぐらいの位置にある。つまり、道のりはまだ半分。 日はもうかなり傾いており、夜が訪れるのも時間の問題だ。 今日はこの村山で寝ることにしよう。

……とは言っても、村山に個人で利用できる宿泊施設は何も無い。 しょうがないので、村山浅間神社の外れの草むらにテントを張らせてもらうことにした。


不審者として通報されませんように

木々に囲まれていて道路からは見えず、かつ人目にも付きにくい。 そんな場所を選んだつもりだったが、テントを張ったその直後、 犬の散歩をしていたおじさんにあっさり見つかってしまった。

慌てて「ここにテント張るのは問題ですかね?」と聞いたところ、 「いや、別にいいんじゃないか?」という返事。 よかった。どうやら追い出されずには済みそうだ。

このおじさんとは少しばかり話をし、 村山古道や村山浅間神社について色々な話を聞かせていただいた。 それらは次のようなものである。

・ 今年は曇りばかりで村山からも富士山があまり見えない。
・ ここから上には家が無く、店もキャンプ場も無い。
・ 村山浅間神社は神社庁に属してしない。
・ 村山集落の人々が管理している珍しい神社だ。
・ 明日、村山浅間神社で閉山式が行われる。

おじさんはひとしきり話をした後、満足そうに去っていった。 私もまたテントにもぐりこみ、夕食を取って酒を飲み、 酔っ払いながら眠りに落ちた。


 

 
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