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はっけんの水曜日
 
空から見えるでかい文字

google mapの航空写真が好きだ。自分ちの家の屋根の色だとか実家の駐車場だとか学生時代にバイトしていたコンビニ(いまはつぶれてしまった)だとかをちまちまと探すと神になったかのような優越感に浸ることができる。

先日もいつものようにモニタ越しに下界を見下ろしていたのだが、そんな僕に恐れ多くもメッセージを発信している土地を発見してしまった。

これだ


拡大地図を表示

豊崎プロジェクト分譲中

なんのことやらわからないが確かに見える。縮尺からいっても一文字分がかなりでかいはずだ。近くで見るとどうなっているのだろうか、行って確かめてきました。

安藤 昌教



そのまま降りてくるんじゃないかという近さだ。

すごいところを飛行機が飛んでいる

現地は沖縄県豊見城市豊崎地区。沖縄県南部の空港から程近い場所だ。そのため飛行機がそのまま突っ込んでくるんじゃないかというくらい、ありえない迫力で車のすぐ上を飛んでいた。

わが目を疑いながらも標識に沿って主要道路を一本横にそれると、目的の豊崎地区へと入っていく。

すぱっと引かれた直線道路のすぐ脇は。
一面の荒地。

 

これから開発が進むのでしょう。

ここから豊崎

豊崎地区の様子を一言で言うと「何もない」だ。ほんと何もない。さっき曲がってきた道路の周辺にはショッピングモールが建ち人がわんさかいるというのに、対岸のここ豊崎地区は夏場のスキー場みたいに何もなく誰もいない。そんな広大な土地にこれまた広い道がマス目状に敷かれている。おそらくここはかつて海の底だった場所を干拓して作られたのだろう。それを区画分けして分譲しているのだ。「豊崎プロジェクト分譲中」。空からのメッセージはその宣伝だったのだ。

ビーチへと続く道は時間により閉鎖される。
強風で倒れているが、立ち入り禁止の看板が道の真ん中に。

それにしてもこんなに広大な土地にまったく人影がないのもなんだか恐ろしい。ずばっときれいに整備された道路はところどころを未だ伸ばしている最中で、道の真ん中に突然立ち入り禁止の標識がどかんと置かれていたりする。海に突き出した土地に強烈に吹き付ける海風をさえぎるものは何もない。近い将来、ここに商業施設や住宅が立ち並ぶのだろうか。そのときに今の写真と見比べてみたいものだ。


この先にはバスケットコート完備の公園ができていた。
木々のなびき様から風の強さが伝わるでしょうか。

 

この土地のどこかに文字が書かれているのか。

あの文字はどこだ

ここで本題にもどろう。あの空からでも確認することのできるでかい文字は一体どこにあるのか。上空から確認しておいた地形を頼りにその場所を探した。探すといってもあんなに巨大な文字だ、すぐに見つかるだろうと思っていたのだ。

場所的にはこのあたりのはずだが。
砂、石、草、バッタ。
石積みがあったが、巨大文字の名残には見えない。

だがない。どこにもそんな文字、ない。一文字たりともない。上空から見て文字が確認できた場所を中心に、あたりをくまなく歩いてみたが、土と石と草しかなかった。

飛行機から僕のこと見えるだろうか。

そんなはずはない。強風吹きすさぶ中、さらに荒地を歩く。この土地は普段から風が強いのだろうが、この日は沖縄に台風が接近していて、さらに大荒れの天気だった。吹き飛ばされそうな風の中、荒地を歩く歩く。地上に降りた神に与えられた試練かこれは。見渡す限りの広大な空間に見つけることのできた人工物は、たまに打たれている杭と、頭上を轟音で飛び過ぎる飛行機だけだった。

「豊」の文字があったんじゃないかと思われる場所。
その付近にあった杭。
なにか埋まっていそうな盛り上がり。その上に打たれた杭。怖い。
土を削ったような跡を見つけたが、遠目に見ても文字には見えなかった。

 

犬から逃げ、土地を見下ろす(遠くに見える黒点が犬)。

文字、なし

しばらくすると遠くから接近してくる生き物の気配を感じた。目を凝らすとでかい犬が何頭か走り寄ってくる。たぶん人の迷惑にならぬよう、この誰もいない広い土地で訓練でもしているのだろう。しかし僕と犬との距離が飼い主とのそれよりも明らかに近いぞと判断し、道の対岸まで走って逃げた。神どころかいまや追われる民だ。逃げた先は小高い丘になっており豊崎地区全体を見下ろすことができた。しかしやはりでかい文字はなかった。

これからが楽しみです

でかい文字はなかった。あの航空写真は今よりも少し前に撮られたものなのだろう。そのあいだに豊崎地区の分譲はおそらく計画的に完了したのだ。文字があった当時の話を誰かに聞きたかったのだけれど、とにかくそこには誰もいなかった。僕と、犬と、それを見下ろす航空機の乗客以外には。次に航空写真が更新される頃には豊崎地区には人があふれているのかもしれません。

近くの海岸では女性が台風の波にさらわれそうになっていました。

 
 
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