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ちしきの金曜日
 
栃木のアレンジ麺類めぐり
 


 栃木県で有名な麺類、と聞いて思い出すのはなんだろうか。よく知られているものの代表としてあげられるのは、佐野市の「佐野ラーメン」ではないだろうか。

 青竹で踏んで打った麺が特徴的なラーメンだ。市内にもたくさんのラーメン屋さんがある。

 しかし、詳しく調べてみると、佐野ラーメン以外にも栃木県にはちょっと変わった麺類がいろいろとあるようなのだ。既存の麺に独特のアレンジがなされているらしい。

 それは気になる。その独自性を確かめに、行ってきてみました。

小野法師丸



●「麺類+なんらかの野菜」という法則

  まずやってきたのは県南部の足利市。こちらでは、一般的にはあまり入れないと思われる野菜を入れた焼きそばが、街のあちこちで食べられるらしい。


のれんの雰囲気がいい味出してる
超大盛りでも350円

 今回訪れた「たむら」もそんなお店のひとつ。家の一部分を店として営業してるようなところが多いのだが、こちらもそんな雰囲気の店だった。

 焼きそばメインのメニューを見て、価格に驚かさせる。超大盛りでも350円なのだ。

 「超大盛り」という力強い響きなのにこの値段。しかもこの価格は10月に入ってから原料の高騰を理由に50円値上げしたというもの。値上げしたところでまだまだ安い。


カレーでよく見かける彼がゴロゴロ入ってます

 そんな足利の焼きそばに入っているのはジャガイモ。うーん、普通は焼きそばに入れる野菜ではないと思う。

 ただ、そんな「普通」は、あくまでそれぞれの人がそれまでの経験によって決めるものだろう。足利以外にも栃木県内にはジャガイモ入り焼きそば一般的な地域もあるようだ。地元の方にはジャガイモが入っているのが「普通」なのだと思う。


君とこんなところで出会うとは

 安さに惹かれたこともあって、今回買ったのは超大盛り。確かにパックにみっしりと入れられていて、うれしい気持ちになる。では食べてみよう。

 …まずはそば部分を食べておいしい。そしてイモだけを食べておいしい。続いて、そばとイモとを一緒に食べてみると……うん、そばとイモがそれぞれうまい。

 個人的には、味のハーモニーや一体化したおいしさという感じではなく、それぞれおいしいので一緒に食べてもそれぞれにうまい、という感じがした。炭水化物系コンボの味、とでも言えるだろうか。

 ボリュームはもちろんたっぷり。手軽においしくおなかいっぱいにするにはとてもいいと思う。ごちそうさまでした。

 続いてやってきたのは同じく足利市内の日本そばのお店。焼きそばにも独特のアレンジがあったが、この地域では日本そばにも特徴的なメニューがあるらしい。


趣きある構えのおそば屋さん
もり、ざる、残雪?

 訪れたのは「八蔵」というお店。お品書きを見ると、「もり」と「ざる」まではおなじみなのだが、その次が「残雪そば」というもの。なんだかかっこいい名前でもある。

 もちろんここではこの残雪を注文。やってきたのはこれだ。


そばオンそば、というようにも見える

 おわかりいただけるだろうか。残雪そばというのは、もりそばの上に細長く切った大根が乗っているものなのだ。

 市内にはこのようなそばを出す店がいくつもあるようで、どちらかと言うと「大根そば」という呼び方が一般的らしい。この店のメニュー名の由来は、大根が山の上の方に積もった残雪のように見えることからなのだろう。


かなりの存在感
そばを擬態する大根

 意外だったのは、思っていたより大根の量が多いということだ。申し訳程度に大根が使われているのではなく、そばをしのぐくらいのインパクトで盛られている。

 実際に食べてみる。……そばがうまい。大根もうまい。それぞれうまいのだ。

 大根とそばの一体感というのは特別してこないのだが、逆に歯ごたえの違いがおもしろい。大根がその形でそばを擬態しているようではあるが、味としてはつかず離れず、でもなんだかうまい、という感じだろうか。

 栄養面でそばで足りないものを大根が補っているような気がする。野菜不足を感じつつそば食べたい、という時にはちょうどよいのかもしれない。ごちそうさまでした。

 県内を移動し、続いてやってきたのは県中部の鹿沼市。園芸用品店で「鹿沼土」というのを見かけたことがあるが、あの土の産地としてよく知られているらしい。


静かでいい雰囲気の山あいにあるお店
もりそば、ざるそば、にらそば?

 訪れたのは「宮入」というそば屋さん。先ほどの店と同様、お品書きを見ると、もりとざるに続いて気になるメニューがある。「にらそば」だ。うーん、ここに来るまで見たことのないそばだ。

 もちろんここでもにらそばを注文。やってきたのはこれだ。


予想よりダイナミック

 思っていたよりも思いっきり「にらそば」だ。名前に偽りなし、手加減なしの迫力がある。

 この地域のそば屋ではよくあるものであるようだ。少し似た野菜であるネギは薬味としてよくそばと組み合わされると思うが、ここではニラ。しかも薬味という域を遥かに超えている。


うん、そばとニラだね、という味
おみやげ用そばの単位がよくわからない

 食べてみる。湧いてくる感想は、「そばとニラを一緒に食べてるよね」というもの。これまでのジャガイモ入り焼きそばや大根そばとよく似た感覚だ。

 ただ、一緒に食べる必然性に多少の疑問を感じながら噛んでいるうち、そばとニラとの甘みが渾然となって、「あ、なるほど」と思いつつ、噛み続けていると口の中にはニラだけが残って、「やっぱり一体感とかハーモニーとはちょっと違うか?」などとも思う。

 にらそばの個性にこちらが試されているような気持ちになる。味の受け入れ幅を広げさせられるような感じだろうか。

 ニラが思い切り歯の間に挟まるのも特徴のひとつか。ごちそうさまでした。


 最後に訪れたのは、再び県南部の栃木市。この街では、少し変わったものを使ったラーメンが食べられるらしい。


昔からの食堂、といった風情のお店
趣きある響きのラーメン

 今回訪れた「長栄軒」というお店でも、店先のガラスケースにも「夕顔らーめん」なるものを出している。

 ユウガオの実、つまりはカンピョウを使ったラーメンであるらしい。日本全体の生産高のうち8割以上が栃木県の県南部で生産されるカンピョウ。そんな地の物を使ったラーメンをこの街では売り出しているのだ。


お店で出される麺類は全て「夕顔麺」を使用とのこと

 ただ、寿司の巻物として食べるようなカンピョウがそのままラーメンに入っているわけではない。カンピョウの粉を練りこんだ麺「夕顔麺」としてラーメンに生かされているわけだ。

 これまで紹介してきた麺類はアレンジ部分がはっきりと見て取れるものだったが、今回は少し違う。


ザ・ラーメンといったたたずまい
これが夕顔麺

 そういうわけで、運ばれてきたものもいたって普通のラーメン。超オーソドックスでありつつ、麺がちょっと違うというわけだ。ただ、その麺も見た目にはまるで普通のものと違いはない。

 実際に食べてみる。……うん、正直わかんない。

 風味の効いた油の香りがおいしいラーメンなのだが、麺自体は意識しても個人的には普通の麺との違いが感じられなかった。これまで大根やニラが自分自身をアグレッシブに主張してきた麺とは対照的だ。

 ひっそりと使用されたカンピョウ。なんとはなしに「体によさそう」感をもって、おいしくいただきました。

風情ある建物と売ってる物とのギャップ(栃木市にて)

 いずれもおいしかった栃木県のちょっと変わった麺類たち。それぞれの個性が楽しいものばかりだった。

 共通して感じたのは、意識して変わったメニューを作ったというのではなく、自然とその土地になじんでいるような様子だ。例えばにらそばの店では、地元の方とおぼしきお客さんが、次々に普通ににらそばを注文して食べていた。

 土地以外の者から見ると変わったものでも、住んでいる方からするとあくまでなじみのメニューなのだと思う。そんな自然な愛され方も含めて、どれもおいしくいただきました。


 
 
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