セラピー1:同じ目線で
藤原君と同じように、僕にも大学生だった時代がある。その頃の話から始めて、うまくタバコの話題に持っていく。藤原君と同じ目線に立って喫煙をすすめる寸法だ。
テーマはゼミ。ゼミの話題から喫煙の話題に持ち込むシナリオを用意しておいたのだ。
住「大学でゼミに入ってる?」
藤原「ええ」
住「何のゼミ」
藤原「コミュニケーション」
住「え? コミュニケーション?」
藤原「はい」
藤原君がコミュニケーションを専攻しているとは知らなかったので驚いてしまった。コミュニケーションとは何か。改めて考えなければならないが、今回はその暇はない。ゼミから喫煙の話題にもっていかないといけないのだ。驚きを収めて会話を立て直す。
住「俺は米文学を専攻してて、マークトウェインのゼミに入ってたのね」
藤原「ええ」
住「で、そのマークトウェインが残した名言があってさ」
藤原「はい」
住「聞きたい?」
藤原「まあ」
住「タバコをやめるなんて簡単な事だ。私は百回以上も禁煙している」
藤原「……」
住「どう? 面白くない?」
藤原「まあ」
住「つまり、文豪たちもタバコを愛してたって事だよね。しかも、やめたければすぐにやめられるって言ってるし」 |