食べる姿を撮影する
サンマ1尾を食べきるシーンは早送りで放送する。よってこの間は手を休めず、なるべく会話せず、一気に食べる。失敗したらもう一度いちから丸一尾を食べ直さなければならない。一番プレッシャーを感じた時間だった。
そのうえ、サンマの骨はそのまま食べる人もいるくらいやわらかい。骨をきれいに残すには、一番苦労する種類だということは身をもって経験しているのだ。
『じゃーん』論争
つぎはさらに念入りなシナリオが用意されていた。中身はこうだ。
(食べおえたあと……)
大「あれ?あまりきれいに食べていないですねえ」
土「ええ、実は食べるの下手なんです」
大「え?じゃああれはいったい……」
土「じゃーん!(と歯ブラシを取り出して)これです。これできれいにします」
(次のシーンに移る)
ここでまたゴーマンにも「『じゃーん』は言いたくない!『じゃーん』は」とごねて、「じゃあいいですから、『じゃーん』は」ということになった。そういえば電話での打ち合わせでも「『じゃーん!』と歯ブラシを取り出してもらってですね……」と熱く語っていた大野氏。これだけの仕事ぶりを拝見させていただいたのだから、ケチケチせずに『じゃーん』くらい言えば良かったと反省している。大人げなかった。
ディレクター迫真の演技にプロの神髄をみた
食べ終えたサンマを前にして大野氏とセリフをやりとりするのだが、彼の迫真の演技が胸にひびいてたまらない。台本どおりの内容を、いかにも今はじめて聞いた!びっくりした!というような声と表情で迫ってくるのだ。どうしてもにやけてしまう。
耐えきれなくなり最後には私も「もう!演技しないでよー!」と苦情を言うが、「いえいえこうしてリアルに引き出すのです」と、これに関しては徹底して聞きいれてくれない。プロフェッショナル仕事の流儀をここにみた。
こうなったら……と私もコンタクトをはずして反撃にでた。大野氏の顔(表情)が見えないようにするためだ。 |