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ロマンの木曜日
 
NHKがやってきた

照明で一気に撮影現場の雰囲気に……
細部にまで気配りその1:床を傷つけないように……の配慮がうれしい

働く現場 in リハーサル

室内の撮影は記事の再現とインタビューが予定されている。

「ちゃぶ台まで歩いていって、座って、いただきますをして……」大野ディレクターがリハーサルをしてくださった。

カメラや照明などの機材が手際よく配置されていく。家の中は一気に撮影現場になったものの、みなさんのお人柄のおかげだろう、緊張感はまったくなかった。

それどころか、
「手をつかわないと食べられない」
「ごはんなしでサンマを食べるんですか!」
「しゃべらないで延々と食べるなんてムリ!」
「しょうゆがほしい!」
「お茶がほしいです」
と、文句や要求がますますエスカレートしていく自分。

短時間ですっかり高飛車女優と化した私の言動をかるく受けながし、その間にもあわただしく台所と食卓の間を動きまわっていた大野氏。

「ご飯とみそ汁があればサマになりますねえ……」
「あ、はいはい。ありますあります。漬物もどーぞ」
と、(なぜか)神田ぱんさんと息の合った仕事ぶりだ。

細部にまで気配りその2:みそ汁の湯気をつくりだす大野氏
「それなんですか?へえー」とただジャマするばかり……

静寂の中、サンマを黙々と食べる。なれない現状がおかしくて何度も吹き出しそうに
作業に没頭しつつ会話中。途中、「え?今撮ってんのコレ?」「はい撮ってます」と聞くシーンも撮られた。
カメラの位置も次々に動き回る

食べる姿を撮影する

サンマ1尾を食べきるシーンは早送りで放送する。よってこの間は手を休めず、なるべく会話せず、一気に食べる。失敗したらもう一度いちから丸一尾を食べ直さなければならない。一番プレッシャーを感じた時間だった。

そのうえ、サンマの骨はそのまま食べる人もいるくらいやわらかい。骨をきれいに残すには、一番苦労する種類だということは身をもって経験しているのだ。

 

『じゃーん』論争

つぎはさらに念入りなシナリオが用意されていた。中身はこうだ。

(食べおえたあと……)
大「あれ?あまりきれいに食べていないですねえ」
土「ええ、実は食べるの下手なんです」
大「え?じゃああれはいったい……」
土「じゃーん!(と歯ブラシを取り出して)これです。これできれいにします」
(次のシーンに移る)

ここでまたゴーマンにも「『じゃーん』は言いたくない!『じゃーん』は」とごねて、「じゃあいいですから、『じゃーん』は」ということになった。そういえば電話での打ち合わせでも「『じゃーん!』と歯ブラシを取り出してもらってですね……」と熱く語っていた大野氏。これだけの仕事ぶりを拝見させていただいたのだから、ケチケチせずに『じゃーん』くらい言えば良かったと反省している。大人げなかった。

 

ディレクター迫真の演技にプロの神髄をみた

食べ終えたサンマを前にして大野氏とセリフをやりとりするのだが、彼の迫真の演技が胸にひびいてたまらない。台本どおりの内容を、いかにも今はじめて聞いた!びっくりした!というような声と表情で迫ってくるのだ。どうしてもにやけてしまう。

耐えきれなくなり最後には私も「もう!演技しないでよー!」と苦情を言うが、「いえいえこうしてリアルに引き出すのです」と、これに関しては徹底して聞きいれてくれない。プロフェッショナル仕事の流儀をここにみた。

こうなったら……と私もコンタクトをはずして反撃にでた。大野氏の顔(表情)が見えないようにするためだ。


歯ブラシの作業もひととおり終えて、いま一度インタビュータイムになった。作業中もかなり質疑応答はあったし、歯ブラシにパワーを使い果たしていたので、ほとんどの受け答えに「脊髄!」「脊髄!」「とにかく脊髄!」とアピール。いい加減さがあまりにもきわだったのか、そのシーンはカットされていた。

また、神田ぱんさんもみるにみかねたのだろう、態度が横柄な女優の名を挙げ私に似ていると言い出した。アニメに出てくるキャラクターにも似ているとすかさず助け舟をだしてくれたのは大野ディレクター。私以外のみなさんも同意し、一気に盛り上がっていた。

キン肉マンに出てくるウォーズマンだそうだ。どんなヒロインかと検索してみたら、たしかに似ていた……。


骨の物撮りに神経を集中させる言い出しっぺの大野氏。

 

感想「NHKの底ぢから」

「土屋さんは自分の言葉で話すから、今度ぜひリポーターをお願いしたいですね」の大野氏のリップサービスを、その時は真に受けてよろこんでいた。しかしよく考えてみれば、よそゆきの言葉ではなく、素の自分をさらけだしてしまったからにほかならない。

これは彼ら取材陣の「親しみやすさ」の賜物だろう。大野ディレクターをはじめ、カメラマンさんも音声の方も、まるで親戚か近所の人が集っているように溶け込んでいたように思う。

NHKではほかにも、全国の素人の声を聞く番組が多数あるが、どの人もみな一様に、緊張感ゼロ。自然に会話しているのが不思議だったのだ。

小型マイクもはじめてつけた。FFというカメラワークの専門用語も知った(ファイナルファンタジーか?と思った)。1分の放送に、3時間もの労力を惜しまないプロの仕事を目の前でみたが、なによりも印象的だったのがこの空気感だった。今思えばあれはかなりの技が必要だし、鍛錬だけではどうにもならない人柄も不可欠だ。ここに、NHKの神髄をみた。おかげで私はいつものように終始ニヤけていたし、失礼なことを散々言ってしまった気がする。ぜんぶ大野さんのおかげです!もしニックネームが変わったらそれも大野さんのおかげです!

本当にありがとうございました。

放送後の反響

放送の事前報告は、あらゆる連絡手段を駆使。海外でも放送されたり、うっかり連絡をしなかった人からも「テレビに出てたでしょ?」とメールや電話がありました。また、島根の親戚一同は、私が骨マニアになったと信じて疑いません。NHKの別の底力を思い知った次第です。

頂いた記念品。みんなー受信料、払えよな!

 
 
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