決してうまくはないが、自分の生活に密着した句を考えたつもりだった。
梅田「どうですか?」
小川「うーん……なんですかね、そこまで悪くはないんですけどね。もう少し工夫すればよくなるものが多いです」
梅田「た……例えば…」
小川「まず、一番最初と最後の句は、季語が重複してます」
かじりつく ストーブの前 寒い朝
→ストーブと寒い朝が両方とも季語
小川評:それに、散文的すぎる。ぶつぎれの言葉を並べた感じ。
ダイコンと たまごのおでん コンビニで
→ダイコンとおでんが両方とも季語
小川評:これもただの感想、というか事実を述べただけ。梅田さん、コンビニのことを取り上げないと気がすまないのか。
梅田「この2つはボツですか。もう4つしか残ってないですよ」
小川「湯豆腐のやつですが」
梅田「これはいいんじゃないですか。僕の生活ですよ」
小川「『幸せだ』というのが気になります。俳句というのは、幸せだ、と書かずに、どう幸せであるかを表現するかなんですよ」
梅田「あ、それ、デイリーポータルの編集者にも言われたことある! 林さんとおんなじことを言ってる! そうか、俳句も文章なんだ!」
小川「それに無理やり五七五にまとめたみたいです」
梅田「確かに。どうにかなりませんかねー。これがボツなら残り3つになっちゃいますよ」
小川「あと、『だるい朝 マスク片手に 通勤し』ですが」
梅田「これもダメですか。マスクが季語です」
小川「『朝』と『通勤』がかぶっているんです。つまり『通勤』と記せば、それが朝であることは説明しなくても想像できるんですよ」
梅田「なるほど」
“頭痛が痛い”、“冬の朝が寒い”のような凡ミスである。結果、小川さんとも相談しながら、2本が採用。残りの2本は小川さんにも手助けしてもらいながら表現を変えることになった。 |