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フェティッシュの火曜日
 
結婚式帰りにハブ対マングース3Dショーを見に行く
花嫁さんブーケを投げた


私事ながら先日友人の結婚式が沖縄であった。学生時代の軽音楽サークルの後輩がリゾートウェディングを挙げたのだ。当時仲の良かった私にもお誘いが来た。気心知れた男9人を招待したという。

ハブ対マングースショーが見たいと思っていた。なぜハブとマングースが戦わないといけないのか、そんなものが本当に面白いのか、とずっと気になっていた。

そして今、動物愛護法ができて戦いは「ハブとマングースの水中遊泳対決」に変わったという話は聞いた。調べてみると他にもあった。ハブ対マングース3D映像ショーだ。震え上がった。

そこまでしてショーを見せたいのか。そんなにみんな見たいのか。何なんだハブ。何なんだマングース。

(text by 大北 栄人



新郎と新婦とハブとマングースと

新郎はかつてサディストと呼ばれた敵なしの暴君であったが、リゾートウェディングを挙げたくらいだから、花嫁さんのことを大切に思ってのことだろう。私たちは少し意外だった。

同じように沖縄のハブにも敵がいないと思われていた。しかしマングースの導入である。今から90年程度前、ハブ対策のためにマングースが輸入された。

そして両者は出会った。戦いは始まった。


新郎側友人は学生時代のサークル仲間、男9人

 

引き出物の袋を小カバンとして使う結婚式帰り
待ちきれずシャー!する先輩の姿に感激した

結婚式が終わり、ツアー最終日に

滞在前、山崎という先輩から電話があった。どうせ誰も調べてこないから滞在中の行き先を決めてくれ、という。皆で観に行くものではないが、ハブ対マングースショーが3Dであるのだ、と薦めてみると「3Dというのがグッと来た。」とすんなり通った。私たちは意外とハブとマングースの思うままであった。

肝心のショーは琉球村という複合の観光施設で行われる。さすがに3Dショーだけでは、と思い、午前中は同場所出発のシュノーケリングツアーを申し込んでおいた。あいにく笑うと鼻に水が入るという男だらけの集団には相性の悪いものだった。笑っては鼻に水を入れた。そういう遊びかと思った。

海から上がると飯を食う。早く食い終わった者は土産物も物色する。帰りの飛行機の時間と空港までの移動を考えると、沖縄旅行の最終日というのは意外と時間に追われる。

「ハブショーは13時20分からでーす!」とアナウンスが流れる。逃せば飛行機の時間からももうチャンスはない。早足になる。ハブを、そしてマングースを、見に行くのだ、とホッホ、ホッホ、とお尻をプリプリ競歩する結婚式帰り9人。

 

 


結婚式前、波とたわむれる

 

半円の客席、そして鉄柵が、闘技場感を高めている
このおっさんが出てきてショーが始まる

多幸山ハブセンターにて、いよいよショーが始まる

南国の植生に囲まれたいかめしい建物に入るとステージから扇形に広がる客席。意外にもけっこう入っている。やっぱりみんな見たいのだ、と打ち震えた。

開始時刻になると白衣を着た所長風情のMCが出てきてステージが進行する。なるほど白衣か。これは白衣でなかったら相当胡散臭く見えそうだ。セーターとか。

ステージ内のガラスケースにはハブとマングースがいる。虎やライオンが戦うわけではないのだ。意外とちんまりしたものが戦うのだなあと実感する。

MCの話はハブとマングースの生態の説明から始まった。およそ90年前ハブ対策のために連れてこられたマングースだが、実際はハブよりも捕らえやすい沖縄の希少動物に標的を変更したそうで県は大迷惑。

しかしこのマングース、「ハブを襲う時のスピードとタイミングが素晴らしい。」と言う。「ハブの頭を狙っている。噛むとハブの口は開かない、攻撃されることもない。」対決を前にその素晴らしさが心に響く。

「これがハブの卵です。」と、ビンに入った卵らしきものが出てきた。ハブのしかも卵である。遠いぞ。私たちからかなりの距離にある物だぞ。どうしようかなという思いであったが、「ほぉ」や「いやぁ」という小さい声が客席から上がった。卵も遠いが、みんなもけっこう大人である。

 

バカ面下げて
どちらもかわいらしいハブとマングース

結婚式後、波とたわむれる(やることがない)

 

出口にはハブ粉にハブ油。貧乏で買えず絶賛もできず。

棒の先にアカマタを垂らし客をただただビビらせる

商魂を見る

いつのまにか話は昔から薬として扱われてきたハブについて。ハブの蒸し焼きを粉にしたハブ粉の効能について訥々と説明が入る。おかしな流れだと思ったら出口で販売しているという。ハブ油は皮膚の薬。こちらも出口で絶賛発売中。

考えてみると沖縄におけるハブの立ち位置というのはとても不思議だ。今でも年間100人程度が毒牙にさらされているというのに、(少なくともこの施設の)観光の目玉として土産品の花形として君臨している。蛇が。毒蛇がだ。昨日の敵が今日3Dとなってモリモリ盛り上がるのだ。そして今日3Dでモリモリしたものを明日薬で飲むのだ。何だあそれは。

唐突に脅かされる

薬の話がひと段落したら(けっこう長いよ)ケースに入っていない蛇がでてきた。ハブでなくアカマタという蛇だという。

気が荒くて大変なんですよ、こいつは、とか言いながら棒の先にアカマタをからませて客先にぶら下げる。動いているものには何でも噛み付く、危ないよ、と口では言いながらも体は驚かせるために動いている。この人は今、大変矛盾している、と思った。

だが嫌じゃない。危ない蛇を持ってただ驚かそうとしている大人というのは、忙しい現代社会にそういない。珍しい、いやどこか懐かしさのある微笑ましさのようなものを感じた。

 

 


そしていよいよ入場時に配られる3Dメガネの出番

 

 
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