お目当てのパン屋さん発見!
江戸時代の佇まいを残す大森地区の街並を抜けていく。なんてノスタルジックなのだろう。そして、僕の胃痛はとどまる事を知らない。その場にうずくまってしまうほど痛い。しかし、僕の目の前には腹を空かせた大人が2人。ここで責任を放棄する訳にはいかない。
この2人に変わったパンを。 その気持ちだけが僕を支えている。
あれだけの期待を裏切る訳にはいかないのだ。絶対に。
そして、5分ほど歩くとお目当てのパン屋さんに辿り着く事が出来た。創業55年の老舗、中村製パン店さんである。このお店に変わったパンがあるのだ。
カウンターの向こうに接客係の女性が立っていて、注文を聞いてくれる。その奥にはパン工場があり、職人さんたちがパンを焼いている。
磯辺もちにさつまいも、更には草もちやおはぎまで、色々なものがパンの中に入っているのだ。話に聞いていた通り、変わったパンである。しかし、それ以上でもそれ以下でもない。そう言った意味では期待を裏切られる事はなかった。少なくとも僕はそう思った。
お店の向かい側にテラス席が用意されている。 せっかくなのでそこで座って食べる事にした。
もちろん僕も食べてその味を確かめたかったのだが、胃の痛みがまずいのだ。プロレスの技にストマック・クローという技がある。腹這いになった相手の腹をわしづかみにする技なのだが、そのストマック・クローを体の内側からやられているような感覚だ。胃袋の中に小さなレスラーがいて僕の胃袋をわしづかみにしている。
僕は見ているだけにして、2人に食べてもらう事にした。 この時点で「責任感」と「胃の痛み」のシェアは半々である。