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ちしきの金曜日
 
「ビル山水」を鑑賞する
こういうやつ。


街を歩いていると、ビル入り口のすぐわきにちょっとした箱庭のようなものがあることに気づく。

気づくよね。

いわゆる「植え込み」とは一線を画した、このビル山水。今回はこの「ビル山水」を鑑賞してみよう。

「ビル山水」という名前はいまぼくが名付けました。

大山 顕



■山水と呼びたくなるわけ


律儀に植え込み風のものがあるんですよ。

「そんなものあったっけ?」と思われる方が大勢いらっしゃると思う。心当たりのない方は、今すぐ街へ出てビルの入り口を見てみてほしい。律儀にあるんですよ。

ぼくはこれの正式名称を知らない。単に「植え込み」とか「緑地」とか言っていそうな気がする。律儀な彼らにぼくはもっと素敵な名前を付けてやらなければならないと思う。名付けて「ビル山水」だ。


冒頭のビル山水のアップ。ポイントは石。なぜか石。

「山水」とは築山と水がある庭園の呼び名。本来水あってこその山水であり、したがってこのビル入り口脇の植え込みをそう呼ぶのは間違いと思われる方もいらっしゃるかもしれない。(水があろうとなかろうとそもそも間違いだという意見はこの際無視したい)

しかし、山水と呼びたくなる雰囲気があるのだ。なぜか植物だけではなく、石もレイアウトされているのがそれだ。これはあきらかに「庭園」を意識していると思う。だってべつに機能的にはいらないもん、石。


そして、「水」がないわけではない


こちらのビル山水、よく見ると
水道の蛇口が格納されている。「水」だ。

植物が植えられているとなると水やりの必要があるからだろうか、水栓が必ずといっていいほど設置されている。蛇口が格納された筺が埋められているのは庭園としてはどうなのか、と思わないでもないが、これが現代における「山水」のありかたなのだと解釈したい。きらいじゃないぜ。


やや固めなビル山水だが
セオリー通りの「水」を完備。

上のビル山水などは、より直接的に「水」を表現。一瞬「これほんとに蛇口?」とめんくらうトリッキーな水表現だが、これは庭園デザイナーのこだわりなのだろうと思う。


こちらはよりアグレッシブな山水表現
現代の「枯山水」と呼びたい。

上はかなり前衛的な山水表現だ。なぜだか白い玉砂利を敷くあたりはセオリー通りだが、「山」がない。そこにあるのは「水」のみだ。

いやいや、伸びゆく消火栓の高さをもって「山」としたとも解せるのではないか。

素人は「庭園風にする必要あったの?」と思うかもしれないが、これは水の存在がありつつもうるおいを感じさせない点を逆手にとり、植物をあえて配さないことで逆説的に「枯山水」の趣を醸し出すという高度なテクニックなのだ。自分でも何言ってるか分かりませんが。

まあ「散水栓だけに山水」ぐらいに思っておいてください。


 

 
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