政治さえも煙が飲み込んでゆく

壇上に政治家の武部勤が出てきた。妙に唐突に有名人が出てきたので可笑しかった。

「巷では○○（忘れた）が問題になっていますが、ご心配なく！この武部が何とかします！結果オーライになるようにします！」

お。すごい。かっこいいこと言っている。しかし周囲を見るとみんな焼肉に夢中だ。かっこいいこと言っても焼肉のもやの中で乱反射して消えていく。

あれはあの武部ですよね、と林さんの方を見ると、いつの間にか隣のおばあちゃんに「コートのすそを開いておしりの方から七輪の熱を取り入れる方法」を伝授されていた。政治とおしり、すごいコントラストだった。

本日、客席の最高の盛り上がりは抽選会で

バーベキューコンロが５本当たったりする抽選会が始まった。客席のあちこちで当選者が出て、ざわめいたり飛び出したりしている。間違いなく今日一番の盛り上がりである。

あれだけやって、ここか！という思いだった。このイベントの底が知れない、というかもう何だかよく分からなくなってくる。対面の林さんを見ると「当選者は○○さん！コンロでーす！」に「イエー！コンロー！」とイベントの最高潮にやっぱりタガが外れて隙だらけになっていた。ここが戦場ならこの人は間違いなく死んでいただろう。

一方、林さんの最高の盛り上がりは落し物告知で

誰かのあいさつがあって、もうイベントは終了したのだが落し物の告知をステージ上でアナウンスしている。

「落し物はこれでーす！グレーの耳あてー！」「イエー！耳あてー！」「白いマフラー！」「イエー！白いマフラー！」と林さんは引き続き、今度は落し物とコール＆レスポンスを行っていた。

バネが一度伸びきってしまうと縮まらなくなるんだよな。そんなことを思いながら僕と石川くんは残る焼肉を食べていた。

肉がうまいので見捨てるには惜しいのだ。どうしよう。旅はこの後２日もあるしクールで送るのもなんだし持ち帰りは無理だろう、という視線を石川くんと交わす。

と、そこで「持って帰ればいいですよ」林さんがテキパキと袋に詰めていく。そして「あ、やっぱり無理か。」とあきらめていた。無理なんじゃん。