沖縄は暖かいとはいえ、やっぱり冬は寒い。それを伝えようと、先日一番寒かった日の朝、わざわざ外で写真を撮った。ところが後で見てみてもぜんぜん寒そうに見えないのだ。なぜだろう。やっぱり沖縄で寒そうな写真を撮るのは無理なのだろうか。
では他の場所ではどうだろう。
(安藤 昌教)
東京ではどうだ
ということで東京へやってきた。桁違いに寒い。今朝の最低気温はマイナスだった。氷河期か。写真を比較しようと沖縄と同じ格好でやってきたのだが、あまりの寒さに外にでることすらできずにコーヒーショップを点々としてしまった。
果たしてこの極寒の地で(あくまでも沖縄に比べて、ですが)写真を撮ると寒く写るのだろうか。
一瞬外に出た隙に沖縄とほぼ同じ格好で写真を撮ってみた。どうだろう、気持ち寒そうな感じがしないか。本当は沖縄で撮ったみたいに寒そうな身振りをしたほうがよかったのかもしれないが、本当に寒いとそんなことできないものなのだ。表情からして固まっている。
さらに沖縄で撮った写真を見ていていまさら気付いたのだが、僕はビーチサンダルをはいているじゃないか。そんなの寒く見えるはずがない。
しかし違いはそれだけだろうか。
背後の風景に違いはないか。沖縄で撮った写真は、背景にやしの木が写っている。うむこれでは絶対寒く見えない。対して東京の写真では葉が落ちきった街路樹が寒さを詩的に表現していた。僕たちは写真の中に写っているものを総合してその場の雰囲気を想像しているのだ。
当然だが着ているものでも感じが違ってくるはずだ。寒そうなものを着ていれば寒く見えるし、暖かそうな格好をしていたら同じ背景でもやはり暖かく見えるのではないか。ためしに脱いでみた。
東京で沖縄写真が撮れるか
うーんなんだろう、薄着で撮ってもどうもやっぱり東京の写真は沖縄で撮ったようには見えない。表情が固いせいもあるのだろうが、あれ以上微笑むのは寒くて無理だった。
では東京写真の背景をより沖縄に近づけてみてはどうだろうか。東京にもあったんだ、沖縄居酒屋が。
ただしこの時点では早朝なので居酒屋はもちろん閉まっていた。しかもセルフタイマーで撮っているので人の多い東京では何度撮っても誰かが写りこんでしまう。歩行者の少ない沖縄とはこんなところでも勝手が違うのだ。
どうだろう、背景を沖縄にしたら東京でも沖縄っぽい写真が撮れるのだろうか。
さらに脱いでみる。なるほどこれでずいぶん沖縄で撮った写真ぽくなったんじゃないか。左に移っているのは走り去る警官だ。沖縄でへんなことしているとたいてい警官が寄ってくるものだが、東京だと放っておいてくれるみたいだ。
得られた教訓を念頭において、今度は沖縄で東京っぽい背景を選んで寒そうな格好をして撮ってみた。ちゃんと靴も履いている。
どうだろう、東京に見えるだろうか。
逆に東京でできるだけ緑の多い場所で薄着で写って見た。どうだろう、こちらは沖縄に見えるだろうか。
なんだかどちらも、見えない。
「空気」はごまかせません
写真には「空気感」が写ると思う。寒い時に写した写真にはどこかしら寒い空気が写りこむし、逆に暖かい沖縄で写した写真にはどことなく南国ムードが写りこむものなのだ。写真は真実を写す、とはよく言ったものだあと改めて思ったのでした。