デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


フェティッシュの火曜日
 
体育会系クロスステッチ作家と一緒に刺しゅう制作

テング押し

クロスステッチは完成まですごく時間がかかる。切手くらいの大きさのものでも、3時間の講習時間内で誰も刺し終わらないくらいだ、という。

ワンポイント程度のものならと、デイリーポータルZやゲーム関連のバッジを作ることに。持ち寄った案がこちらだ。


こちら、大図さんのアイデア。おお、6つも!
かたや、私の図案・・・この茶色い、ノベッとした奴は?そしてやはりエクセルで描いている。

大図さんの考案図→当サイト「おぎわら遊技場」名物キャラ「カニテング」にちなんで、ムシキングとの融合「MUSHITENGU」、ニン●ンドーとの融合「NINTENGU」、他当サイトマスコットのZ君、そのガールフレンド「A−KOCHAN」まで考えていただいた。いやはやすみません。

その一方、私はカニテングをオマージュ&リスペクトで「ゴボテング」。おでんのゴボ天を、テングに。どうもスイマセンおぎわらさん。今のうちに謝っておきます。

 

よく考えたら贅沢なマンツーマン

ここでひととおり、クロスステッチについて学んでいこう。

大図さんのお道具箱を見せていただく。何より目に付くのは、カラフルな刺しゅう糸だ。


こういう色の陳列具合、わくわくしますね。

大図さんは、フランスのDMCという、世界で一番よく使われているメーカーの糸を使っている。その数、500色。例えば緑だけでも100くらい数がある。図案を見ながら、多数の色の中から選定するのが大変面倒だという。

次に、クロスステッチ用の布。普通の布と違って、ステッチしやすいよう、糸が格子状にわかりやすく織られている。1インチに何マス入るか、という意味で「カウント」という単位。使うのは14・18カウントが多い。


DMC社の色番号が自動で記されるソフトで、図案を作成している。さすがにエクセルとは違う。
上が18カウント、下が14カウント。少しの違いで出来上がりは大きく違ってくることに。

いっぽう、マスのない布を刺す場合、抜きキャンバスという便利な道具がある。布の上にかぶせてキャンバスごと刺していき、最後にキャンバスの糸をほどいて抜いていくわけだ。


これが抜きキャンバス。「ほーぅ!」この日一番の大声で感心してしまった。
抜きキャンバスを使えば、このようにキャップとかにも刺せて便利。

次はクロスステッチ用の針。布がすでに刺しやすいものになっているので、普通の裁縫用の針と違って、先のすこし丸い針だ。そして、太いステッチ用の糸を通すため、針穴がでかいのも特徴。

ちなみに大図さんは、ステッチャーの間で話題の、京都の職人が作った針を使っている。でも「いただきものです。僕自身はあまりこだわりはないんですけどねー」と、さらっと言う。


指に誤って刺してもあまり痛くないのが嬉しい。本気で刺すと痛いけど。
糸はこのように、6本で1束である。多い。

糸は、このまま使うのではなく、2本取りなどにして使う。そして、何と1本1本、糸の撚りを除いてまっすぐにしてから使うのだ!ご苦労様です。

何本取りになるかは、布のマスによって違ってくる。また、表現法によっても違う。小さいマスに6本取りで使えば、もこもこした感じが表現できる。海外のクロスステッチ図案などでは稀に、同じ色でも本数を変えることによって濃淡をつける指定があるそうだ。うわー。

ではそろそろ、作業に移りましょう。インタビューは、ちくちく刺しながらで。


本当だ、PCでイメージした色からリアルの糸色を選定するのは、実に大変だ。
ゴボテング指定色、決定稿。
まず、図案の中心点を決めましょう。そこを基準に刺していくと目安になる。
だいたい50cmくらい(手の先からひじのさきくらい)で切って、ほどいて使う。

無数の一見無意味な経験が今の自分を形作る

―そもそもなぜ「手芸」だったんですか??

大図「もともと絵を描くのは好きで。イラストレーターやってた母親の影響かな。大学は文学部で、絵とは関係なかったんですけどね。
大学を出て就職できなかったんで、絵ばかり描いてました。手芸はその延長で・・・。洋裁から入って、編み物・・・刺しゅう・・・と。絵を描いてたので、刺しゅうなら絵をそのまま図案にできるのがいいですね。

―刺しゅうにもいろいろあるけど、クロスステッチが合っていた、と。

大図「普通の刺しゅうもやってたんですが、きれいに刺しゅうするにはすごく技術が必要なんです。その点、クロスステッチならドット絵だから、入っていきやすかったですね。ドット絵にはドットの図案の面白さがあるから。見た目もかわいいし。もちろんクロスステッチでも綺麗に刺すのには、それなりに時間が必要ですよ。

―ドット絵って、確かに絵が「決まる」。ドットと手芸って、接点いろいろありますよね。織物とか編み物もそうですしね。

大図「僕は小心者で(笑)、基礎からきっちりやろうと思うほうなんで、刺しゅうAtoZみたいな本を買って、初めから本のとおりに練習しました。刺しゅうのことは全部知っときたいなと思って。
ところが、自分の作りたい図案の載ってる本がないことに気づいて。こりゃいかん!と思って、自分で図案を作り始めたんです。


布を4つ折にして中心点を決める。
これは講習用の教材。色の集まりの左上から順に、1列づつ刺す。糸の重なりが全部のマスで同じになるように刺していく。

1マスの拡大図。これの繰り返しでございます。

大図「布以外にも、プラスチックのカゴとか、網戸とか・・・材料になりそうなものは、片っ端から買って刺してみたりもしました。おかげで格子状のものばかり目が行くようになって・・・お風呂のタイルとか(笑) まるでテトリスにはまってるときなんかに、何を見てもテトリスの画面に見えてくる、みたいに。

―図案って、どういう時思いつきます?

大図「図案は、歩きながら思いついたりですね。そういうのをメモしといて、一気に制作します。考えついても、すぐには刺し始めずに寝かせておきます(笑)

「子供の頃、ファミコン買ってもらえなかったんですよ。なので自由画帳に、友達の家で見たスーパーマリオとかのステージ画面を、全部手で描いてた。すごい情熱ですよね。その反動で、大人になってからゲームウォッチやファミコンのソフトを大量に大人買い。そういう、子供の頃に植えつけられてる感覚が生きてきますね。

うーん、三つ子の魂百まで(三つ子は百歳まで生きる、って意味じゃないよ!)。そういう無数のファミコン画面やら何やらの、一見なんということのない経験が、後々のクリエイティブに生きてくるということ、すごく共感できる。


 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.