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土曜ワイド工場
 
酒屋さんで立ち飲みたい

●おばさんはぼくが気になる

さて、おでんをつまみつつビールをくぴくぴやっていたら、先ほどビールを飲みだすぼくをじっとみていたおばさんが、今度は道路の向こうから眺めていた。


「なになさってるの?」


そう訊ねられ、「まあ、趣味のような仕事のような……」と、やっていることを説明したら、おばさんはちょっとだけ驚き、「若いってすばらしいこと。大変でしょうけど頑張って」と激励をくれた。こちらはただ買ったビールを店のまえで飲んでいるだけなので、恐縮なことこの上ない。

しかしながら、ぼくの年齢をきくと、「孫みたいなものだわ」と言い、そこからぼくに対する激励は心配へと急変した。


「新聞に載るようなことだけは、しちゃダメ」


ぐっと距離をつめ、諭すような優しい口調で話すおばさん。ぼくと孫が重なり、もし孫がこんな体たらくになってしまったら……と、一気に不安が募ってきたらしい。
す、すみません。

とにかく頑張りますと言うぼくの精一杯の笑顔にやっと安心してくれたのか、おばさんはもう一度、「若いってすばらしい」と言って、自分のお店に戻っていかれた。

 

●立ち飲みつづける

さて、ガチガチ緊張ではじめた立ち飲みだったが、会話したことも手伝って、だんだんとリラックスしてきた。アルコールがまわってきたと言い換えてもよい。道行く人を眺める余裕もでてくる。


道行く人


余裕はでてきたのだが、目の前を中高生が通るときだけは、おもわず顔を伏せてしまう。なんていうか、若者に誇らしげにみせてはいけない姿だとおもう。


リラックスしきってはいないので
まだカバンをおろせない


さて、ビールとつまみがなくなったので追加の買いだしだ。


2ターン目


ここで貝柱登場。外食とはいえちょっと贅沢すぎたろうか。貝柱といえば、特急列車で父親にわけてもらう以外にはなかなか食べられない高級つまみだ。


贅沢して浮かれるの図(間違えてちくわ持ってますが)

 

●おばさんはやっぱりぼくが気になる

さて、調子にのって飲んでいたのだが、


なじんできた

トイレは駅まで走れ!


ふと向かいのお店に目をやると、先ほどのおばさんが手になにやら持ってこちらをうかがっている。そして小走りで道を渡ってくるや、


「これ、差し入れ」


えー!? そ、そんな、いいんですか!?

戸惑うぼくに、「いいから食べて」と、おばさん。ひえ〜、ありがとうございます。そんなにご心配くださっているとは、なんか、すごくごめんなさい。
ちぢこまるぼくに、「あと、これも」と、もうひとつ差し入れが。


ティッシュ


心なしかポケットティッシュはしっとり濡れていた。それは果たしておばさんの涙だったであろうか。人のやさしさに触れ、とりあえずぼくは、


鼻をかんだ


そしていただいた紙袋。持ってみるとけっこうな重みである。いったいどんな酒の肴が入っているのかと、わくわくしながら開けてみると……


!!


バナナ! 栄養!!

いけません。バナナをいただくほど心配をかけてはいけません。
念願の立ち飲みもかなって満足いたしました。ではそろそろ、撤収!


とか言いつつ、もう1本飲んだりして……

飲んでいる最中、放課後に駄菓子屋で買い食いした記憶がよみがえり、大人の階段のぼるつもりが子供時代に逆行してしまった今回の立ち飲み。人にみられるたびに募る罪悪感と背徳心がちょっとずつ快感に変わってきた頃にバナナで酔いがさめました。バナナ大好き! 

お土産(バナナ)持ってゴキゲン


 
 
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