デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


はっけんの水曜日
 
昔のウナギはフランクフルト状態だったらしい

串に刺しても、ウナギは、かすかに動いていた。
すごい生命力だなー、と思いながら、味付けの塩をふりかける。そしたら…。

串に刺さったまま、ウナギが、激しく反応した。口もパクパク。
うわああああああああ。
しみるの? しみて痛いの!? っていうか、もうお亡くなりになってるよね、なんか反射みたいなもので動いてるんだよね、コレ!? 今さら動いてアピールされても、もとにくっつけられないよ!
美味しく食べるから! 頼むから成仏して「食べ物」になってくれ!
と思いながら、しばらく放置して、七輪が空いたタイミングで、アミの上に乗っけたところ、

火が熱いのか、また、お顔や身体やシッポを、お動かしになった…。
しかも、表面が少々パリッとしてきても、まだ動いていた…。

そりゃあ「食べたら、せいがつく」って言われるはずだよ、この生命力にあやかりたくなるはずだよ、と感動しながら、焼けるのを待つ。
ぬるぬるが、パリパリになって、次には内側から出て来た脂がにじみ出てくる。

 

「時間かけて焼かないと、中まで火が通らないと思いますよ」と玉置さんにアドバイス頂き、七輪の外側で、ゆっくり焼く。

できた。

「蒲焼き」の元ネタ、江戸時代以前のウナギ。

ちゃんと美味しそうな「食べ物」になりました、良かった。

早速食べてみる。あんぐ。

……「ウナギの白焼き」の味がした。食べる時に骨が少々邪魔だし、山椒などがあったほうが、川魚特有の臭みは消せるから薬味があったほうがベターだろうけど、これはこれで、イケる。

こんな簡単な調理法で食べていたものを…。
開いて、たれにつけて焼いて、ごはんに乗せて、高級メニューにしようとした、過程が知りたいなあ、と思った。
「ウナギ自体は身体にいいけどさあ、こういう串で食べてるだけだと、滋養強壮の変わった食べ物って思われてるうちは、一般に広まっていかないんじゃない?」「じゃあさ、食べやすいように骨をのぞいてさ、開いて切って…川魚の臭みを消す味付けをしてみよう、醤油と砂糖をきかせてさ」「容れ物にも凝ろうよ、重箱に入れるってどう?」「いいねえ、お洒落だねえ」「この食べ方だったら、女性や子供にもウケるよね」「絶対ウケるね!」
……みたいな流れが、あったんだろうか?

かしらは、同席していたライターほそいさんが率先して試食。さすが、奇食系記事(参考「サソリの素揚げを食べる」)の強い人ならではのチョイス。「普通に美味しいですよー」。

部長・玉置さんにも食べてもらった。
「筒切りにして串に刺すと、見た目がソーセージっぽくていいですね」
フランクフルトですよねえ。
「食べてみると鰻の中心部分に、ちょっと川魚独特の臭みを感じますが、それを鮎のようだと解釈すると、急に美味しく感じられますね」
鮎…ってこんな味、しましたっけ。
「昔は水が綺麗だったので、こういう焼き方でも充分美味しかったのですかね」
そうなんでしょうね。

 

■ウナギよ、きみの命は無駄にしない

しかし、勉強になった。
さばくときの、あの感じ。
ウナギがあんなにも、スゴイ生き物だったという事実。

今度からウナギを食べる時は、「ウナギよ有り難う、そして君のパワーを分けてくれ」と思いながら、食べます。
合掌。

玉置さんが用意してくれた、ちゃんとした「蒲焼き」。当然ですが美味しかったです。

< もどる ▽この記事のトップへ  

 
 
関連記事
クラブ活動:ウナギ釣り部
江戸城探訪
秘伝のタレに創業当時の成分は残っているか

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.