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ロマンの木曜日
 
僕はどれくらいおしゃべりなんだろう
一語一語数えます

言葉は人間が発明した最も重要な道具である。
必要は発明の母というように、言葉無くして日々の生活はなりたたない。
でも、普段は言葉のことなど意識しないで過ごしている。
僕は一日にどのくらいの言葉を発しているのだろう。
カチャカチャとボタンを押して数を数えるカウンターを使って、朝から寝るまでの間に発する言葉を数えてみたいと思う。

工藤 考浩



朝から数える

朝起きてすぐに言葉を数えはじめるために、枕元にカウンターをおいて前日は就寝した。
しかし、僕は一人で暮らしているので、朝起きても誰にも挨拶はしない。


起床

前日のお酒が少し残っているようで、歯を磨くときに気持ち悪くてオェっとなった。
オェというのは言葉として数えてもいいのだろうか。
たぶんなにか脊椎反射のようなもので、言葉とはいえないのかもしれないが、はやくカウンターをカチャッとやりたい気持ちが強いので一つとカウントすることにした。


記念すべきひとこと目は、「オェ」

まだしゃべらず

僕はそれほど無口な方ではないと思っていたが、身支度をして家を出るまで「オェ」としか言っていない。
マンションの階段を下りるときに大家さんがいたらいつもは挨拶をするのだが、今日はいなかった。
駅まで数分の道のりも、当然無言だ。
そして駅のホームに立っても無言である。
こうしてみると、朝はほとんどなにも話さないものなのだ。
そう気がつくと少しさみしい気がしてきた。
これからは知らない人にもおはようって言おうか。
いや、それは良くない。

これまでの言葉:1



ホームに知り合いもいないので言葉はない


打合せへ

この日は朝イチで別な記事の打合せが入っているので、会社に行かずに直行だ。
都内から少し離れた町に行くことになっている。
電車をいくつか乗り換え、取材相手との待ち合わせ場所に着いた。
それまでもやはり無言だ。


普段立ち寄らない町についた

たくさんしゃべった

打合せでは当然しゃべる。
しかし、打合せ相手の前でカチカチとカウンターを使うのは失礼だ。
なので、指折り数えた。
話す言葉を数えているという事情を話そうかとも思ったが、それはそれでせっかく打合せの時間を作ってくれた相手に失礼なので、ひっそりと数えた。
数えながらしゃべるというのは大変に難しい。
ついついできるだけしゃべらないようにしてしまう。
もちろんそれではいけないので、ひとつひとつ言葉を選びながら話しをした。
そのおかげで、言いたいと思うことがうまく話せたような気がした。


結果的にきちんと話せた

さっそくわからなくなる

自分が話しながら数えるのは大変なので、すこし話したらそれを反芻するように心の中で繰り返し、それを数えながら会話をした。
しかしそれでは会話がスムーズに進まない。
ぎくしゃくしてしまわないように会話をしようとすると、発した言葉の数がわからなくなる。
途中途中で、数え忘れたり、数えすぎたりしてしまった。
なんとか帳尻を合わせようとしたが、やはり誤差が出てしまう。
誤差というか、ようするに適当になってきてしまうのだ。
でも、だいたいは数えた。
1時間くらいの打合せで、700語くらい話した。

これまでの言葉:701くらい


しゃべったなあ

この調査で、言葉をどう区切って数えたかというと、たとえば
「今日はいい天気で、すこし暑いですね。」
の場合、
「今日は・いい・天気で、・すこし・暑い・ですね」
と6語として数えた。
この区切り方は、おおむね文節単位だが、「ですね」は1語として数えた。
なぜならそのほうがリズムがよくて数えやすいからだ。


帰りの電車でも無言だ

ごはんを食べよう

打合せを終えて会社に戻る途中にご飯を食べることにした。
会社の近くのラーメン屋さんに入ろう。
食券を券売機で買う方式の店では、「ごちそうさま」のひと言も話さずに終わってしまいそうなので、口頭で注文するお店を選んだ。


この店にしよう

「すいません、つけ麺ください」
これで3語だ。
お店の人は、
「しょう油とゴマとどちらに?」
と聞いてきたので
「えーと、じゃあ、ゴマで」
とさらに3語稼いだ。

ちなみになぜつけ麺を注文したのか、これにはちゃんとした理由がある。


余談だが、うまかった


 

 
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