デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


土曜ワイド工場
 
野菜の名前が面白い

開発者のお話を伺う

私はかつて山口県で生活していたことがある。
イノシシ・シカ・牛の話題には事欠かない、大自然の中にあるスーパーは魅力的な農産物の宝庫だった。そういえば、ユニークな名前の農産物をいくつか見かけたぞ。

まず、ユズとスダチをブレンドしたような香りの柑橘類「長門ゆずきち」。これはダジャレじゃないけれど、柑橘類のくせに人間みたいな名前が何とも愛おしい。
そしてもう1つ「はなっこりー」という名の野菜をプッシュしたい。私は常々「ブロッコリーって陽気な名前だよね」と思っていたが、そのはるか上をいく高揚感。いい名前だ。

これはぜひ名前の由来を聞いてみたい。
そこで、今回はその2品を取扱っているJA長門大津にお話を伺ってみた。


ジャンボサイズの「たまげます」も人気

JA長門大津によると「一般的には生産者が決定します。ゆずきちについては『長門ゆずきちの会』に決定権があります」とのこと。
農業従事者の多くは、各農産物の生産者らで組織する「生産者部会」に加入しており、その部会が強い力を持っているようだ。

しかしこの「ゆずきち」、地元で古くからこの名前で呼ばれていたものだそうで、生産者部会で考えた名前ではないらしい。
それでは名付け親に辿り着けない…。私のがっかり感が伝わったのか、
はなっこりーの方は山口県が力を注いで開発した野菜です。県の施設に聞いてみたら、詳しい話が聞けるかもしれませんよ」とアドバイスを下さった。


こんにちは、長門ゆずきちです
古くから「ゆずきち」の名で親しまれてきた

 

県庁に「野菜の名前が陽気な件」を問い合わせ

ということで、山口県農林水産部流通企画室にお話を伺うことに。

はなっこりーは山口県農林総合技術センターが生み出した、山口県のオリジナル野菜で、味はアスパラに似ている。
中国野菜サイシンとブロッコリーをかけ合わせた新しい野菜で、花も花茎も食べられるのが特徴。可愛い名前なので愛称と思われる方も多いと思うが、きちんとした品種名なのだそうだ。


はなっこりー/ 写真:山口県農林総合技術センター

気になる命名者については
はなっこりーの育成権者は山口県となりますので、名付け親は県です」とのお返事。

続けて名前の由来を訊ねると
花と花茎を食べる野菜のことを『はなな』と言います。はななとブロッコリーの一部をとって『はなっこりー』と命名しました」との回答が。
単純に見えて、なかなかハイセンスな言葉遊びである。

そして「この名前にはかわいらしく、おいしく親しみやすい野菜に育って欲しいという願いが込められています」と、開発者側の思いも教えてくれた。


はなっこりーの母親、サイシンと
父親のブロッコリー/ 写真:農林総合技術センター

この陽気な名前にそんな願いが込められているとは意外だった。
決して「面白いでしょ?」とウケを狙ったものではなく、野菜に向けた愛情が名前の基なっている。

この野菜の開発は試行錯誤の連続だったらしく、開発に尽力した山口県農林総合技術センターでは、研究員が「アオムシになった気分」になるくらい試食に試食を重ねたのだとか。名前に願いを託す気持ちもよくわかる。

今ではイメージキャラクターの「はなっこりん」も登場し、テーマソングまで発表された。何とそれがダンスや着メロ、カラオケにまで発展するなど、このハジケっぷりには目を見張るものがある。


メージキャラクター「はなっこりん」
働くはなっこりん/ 写真:農林総合技術センター

 

一足遅かった

はなっこりーは秋から春にかけてが食べ頃。
今は旬を過ぎてしまったとのことで、生産者の方に畑の様子を聞いたら「はなっこりー畑っちゅうより花畑じゃぁね」と冗談でかわされた。

山口県農林水産部によると今年の予定は「具体的には決まっていませんが、11月頃を目処に東京・大阪等にも出荷されます」とのこと。
今年の秋は、はなっこりーの天ぷらだ!


冗談だと思ったら本当に花畑になっていた

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.