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フェティッシュの火曜日
 
急な雨。傘がない。いったいどうしたら
今日のステージはここだ


 楽器が好きだ。何が好きって、初めての楽器を手にとって、「おー鳴った鳴ったー」っていう、あの瞬間がいちばん好きだ。

 最近、意外なところに、みんなまだ気づいてないであろう楽器を発見した。意外な物だけに、「鳴った!」っていう喜びもひとしおだ。こっそり練習して第一人者になりたいと思いつつ、嬉しいのでここに公開してしまいます。

(text by 石川 大樹



それはトイレに潜んでいる

 何が意外って、その楽器は誰もが1日に何度も訪れる場所、トイレにあるのだ。


用を足しおわって
手を洗うよね(洗わない人も今回ばかりは洗ってください)

洗った手はこのジェットタオルで乾かすのだが

 うちの会社のトイレにはジェットタオルがある。あるとき、まったく偶然に、この機械が楽器であることを発見した。能書きよりもまずは聴いてもらった方が早いだろう。練習曲、タイトルは「呼び声」です。




 ブォーっていう風の音に混じって、甲高い笛みたいな音がピィーって言っているのがわかるだろうか。特に後半がよく鳴っているので、前半の音と聞きくらべてみてほしい。

 僕はこの楽器を、ジェットタオルのジェットをとって「ジェットホイッスル」と名づけた(どうだかっこいいだろう)。今回はこのジェットホイッスルを練習して楽器として完成させ、ジェットホイッスル演奏の第一人者としての地位を確立しようという魂胆です。

 

図1・正しい演奏姿勢

How to ジェットホイッスル

ジェットホイッスルのやり方を簡単に説明しよう。

1.ジェットタオルに指を差し込む
2.手のひらを上に向ける
3.指先と、ツメのあいだに風を入れる
4.指の角度を微妙に調整していくと、ピィー!っと鳴る

図2の写真のように、指を上に伸ばして指先に風を当てるようにするのがポイントだ。


図2・手のひらは上に。指先にうまく風を当てるのがポイント

 ちなみにジェットタオルには、たいてい「水がはねるから指先を上に向けるな」という旨の注意書きがある。しかしここでひるんではいけない。オリジネイターに逆風はつき物だ。(ジェットタオルだけに)

 この時点で、ネットで検索しても人に聞いてみても、ジェットタオルで音が鳴ることを知っている人はいなかった。今のところこれは僕だけの秘密のようだ。こっそり練習をすすめて、いつか世間をあっといわせよう。それまではこのことは、僕と会社のジェットタオルだけの秘密だ。

 

トイレから帰ってきた人が次々に「さっき鳴りましたよ!」報告をしてくれる

ライバル出現

 しかし、蜜月の日々は長くは続かなかった。どのくらいかというと3日くらいだ。世界で唯一のジェットホイッスル奏者だった僕は、我慢できなくなって、ついつい企画会議でこの話をしてしまったのだ。

  みんなの反応は半信半疑だった。「うそだー」「毎日使ってるけど1回も鳴ったことない」「でも本当にできたらすごい」。

 しかし、その意外性が人をひきつけたようだ。編集部メンバーはみんなトイレに行くたびにジェットホイッスルを試してみるようになり、いつのまにかジェットホイッスルは部内で密かなブームとなってしまった。ライバルたちの登場である。

 

工藤さんのやり方

それぞれのやり方

 企画会議ではあまり詳しく鳴らし方を説明しなかった。マネされて僕よりうまくなられたら悔しいからだ。それなのに編集部のメンバーときたら、ぞくぞくとみんな「鳴ったよ」報告をしてくれる。ノウハウが漏れたのかと思いよくよく聞いてみると、みんなそれぞれ自分なりのやり方をあみだしていた。

 その代表格が工藤さん。僕が指先を使って音を出しているのに対し、工藤さんは手のひら全体を使って音を出そうとしていた。両てのひらをあわせて中に空洞をつくり、中で共鳴させて音を出す方式だ。ホイッスルというより、オカリナっぽいかもしれない。その音は、ヒョー、ヒヒョーというどこか物悲しい音であった。


指先を使うのではなく、手のひらの中で共鳴させるやり方
お風呂でやる水鉄砲を意識した手の形だそうだ。

両手でセンサー用の手と笛の手を分担する方式

 一方、古賀さんは、右手は僕と同じ指先方式。しかし工夫は左手にあった。

 ジェットタオルは、手を抜いて一定時間経つと風が止まってしまう。実はこれが大問題。いい音が鳴るポイントはセンサーの範囲の外にあるので、せっかくいい音が鳴っても、すぐに風が止まってしまう。そうなればもちろん音も消える。

 古賀さんは音を鳴らす手を右手にしぼって、左手をセンサー担当にすることを思いついた。これなら風がとまることはない。中断なしでずっと音を鳴らし続けられるのだ。両手を別々に動かす演奏スタイルも、なんだかテルミンみたいでかっこいい。


ジェット楽器界の異端児、橋田さん
 そして、いちばん衝撃的だったのが、橋田さんのやり方だ。僕のジェットホイッスルは、ホイッスルの名前どおり、ピーッっという甲高い音のする笛だった。一方、同じジェットタオルを使って、橋田さんはある効果音を作り出してしまったのだ。

 説明よりも音を先に聴いてもらったほうがいいだろう。衝撃的な音色をお聞きください。




 ブォン、ブォン、ブロロロロ!って、これはどう聴いてもバイクだ。鬼才、あらわる。すでに楽器の概念は超越して、モノマネの域だ。

 「石川くん、鳴ったよ」って言われてこの音をはじめて聴かされたときは心底驚いた。こんなのじゃないよ!という気持ちと、でもすげえ!という気持ち。すごいけど、認めたくない。これを嫉妬と呼ぶのかもしれない。


手のひらで大きくくぼみをつくる
髪も逆立つ。なぜなら彼女は今バイクに乗っているから


 

 
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