特訓
しのぎを削るライバルたち。しかもみんな工夫している。このままじゃ第一人者の座は危うい。
危機感を感じた僕は、ひたすら特訓を重ねた。トイレに人がいると恥ずかしいし迷惑なので、オフィスに人がいなくなる深夜まで待った。誰もいないと思ってゴォーゴォーピィーって延々5分くらいやってたら、個室から人が出てきたので慌てて「いま乾かし終わりました」みたいな顔をして逃げ去ったこともある。トイレの外まで音が漏れていたらしく、「トイレから変な音がすると思ったら石川君が出てきた」って言われたこともある。
ひとけを感じてはトイレを出て、席に戻ったフリをして、すぐにまたトイレへ。特訓の時間の半分以上は、練習ではなくてそんな「手を乾かしてるフリ」をする工作のために使ってしまった気がする。 |