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ちしきの金曜日
 
東京格安宿探し

おっしゃる通り。旅ならなおさら。

 最近、漫画喫茶やインターネットカフェに寝泊まりする「ネットカフェ難民」なんてのがメディアでよく取り上げられる。地方出身である自分からすると、安くて5000円程度のビジネスホテルしかない東京にそうした安い宿泊所があるのは便利だなーと思う。自分も地方在住時なら上京のたびごと使ってそうだし。

でも、どうせならキチンと足を伸ばせて寝れる「宿」に泊まりたい。もっともっと東京に安いホテルはないものか?そういえば千円代から泊まれるという噂の地帯があったなー‥行ってみますか。

大坪ケムタ



地名くらい聞いたことあるかもしれない

東京でホテルが集まる場所というと、京王プラザ・ヒルトン・ハイアットリージェンシーなどが居並ぶ西新宿あたりが頭がうかぶかもしれない。しかしあんな高級地帯は今回はノーサンキュー。秋葉原から数駅のところに格安宿ゾーンはある。


東東京の趣都・秋葉原から
わずか3駅の南千住駅へ。

駅の地域地図にもこんな表記が。

JR・地下鉄、そして開通したばかりのつくばエキスプレスと3線もの駅を持つ交通の便の良さがありながら、これまで活用されることのなかったこのゾーン。南千住駅先の一帯、ずっと「山谷」と呼ばれてきた場所だ。


正しくは「山谷」という地名はない。現在は通称。

公園なんかに少し残ってはいる。

山谷、そこは「ドヤ」という言葉と一心同体にして語られるといっていいだろう。高度経済成長期、都心もしくは地方に行く労働者たちは格安で長期滞在出来るこの町を根城にしていた。その時泊まったのがこの周辺ならではの「簡易宿泊所」。「宿」を逆さ読みにして通称「ドヤ」と呼ばれた場所だ。またその説明はのちほど。

その時代・場所を知らない人でも、漫画『あしたのジョー』でなんとなくイメージだけは植え付けられてるかもしれない。詳しくは住さんが同地を訪れた記事『泪橋、涙橋』をご覧下さい。ちなみにボラちゃんフィーバーは終わってました。


泪橋も渡りました。ただの交差点ですが。

ハッキリ言えばかつて暴動などが起きたのもあって、今も山谷に対して「粗暴な街」という印象が残っているのも事実。しかし行く前に昔からの東東京の住民たちに山谷の印象を聞くと「今はそうでもない」「怖い物見たさなら拍子抜けするよ」とか。ただ「たしかに泪橋渡ると雰囲気変わるよね」とも。

泪橋交差点を渡った先、道の広さのわりに閑散とした交通量の吉野橋通りの左右に簡易宿泊所が立ち並ぶ。ま、屋号はどこも「ホテル」だけれども。店頭に書かれた一泊価格はほとんど2千円代、テレビ・冷暖房付。脇の通りにも小さな宿泊所がちらほら見受けられる。ちょっとした温泉街のように見えなくもないが、何かが違う。妙に静かなのだ。

ぐるりと一周してみて気づくのが、宿と酒場以外の店の少なさ。かろうじてコンビニはあるものの、あとは喫茶店・100円ショップなど飲食・日用品系。ホテルが居並ぶ場所にしては不自然だ。


だいたいこの辺りの価格と設備。
こういうの以外に路上型もありました。

普通なら「酒場ありゃ十分じゃん!」と思える所だけど、半開きのドアからちらりと薄暗い店内を覗いてみて「あ、こりゃ一見は入れないわ」という気配を感じた。ここにあるのは「居酒屋」ではなく「酒場」。西部劇に出てくる男たちが集う酒場にも似た。もうちょっと人生勉強してからじゃないと入れなさそう。

夕暮れ前、静かな街にいるのはおっちゃんたちだけ。イメージしてた粗暴さとは違うのだけれど、静かだがピリピリした雰囲気がある。そんな静けさが一瞬破れた。


どこか異国というか映画の中のようでもある。

何枚か外景写真を撮ってる最中、おじさんに「人が歩いてるのにカメラ向けるんじゃないよ!」とすれ違いざまに言われてしまった。4,50mは離れてたのに‥。とはいえ、確かにこちらが悪い。「すいません」と軽く頭を下げてそれ以上は何もなかったけれど。

普通、街の中で写真を撮っててもこういう文句を言ってくる人はいない。たしかに良いことではないけども「無視し合うのが街のマナー」だからだ。でも、この町では「無視しない」。それを覚えておかないと。元々は全国どこもそうだった気がするが。

海外じゃないのに、どこか異国感。気を張ってたからか少し疲れも。とりあえず一旦ホテルで落ち着こう。予約していたホテルにチェックインすることにした。


ああ、なんか普通と違う気疲れ。

 

 
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