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はっけんの水曜日
 
ライトノベルの書き方(ざっくりと)


(text by 大塚 幸代

世の中は夏休み…暑いですね。
学生の皆さんは、ボーッと過ごしてるんでしょうか。
休みをとっちゃったけど予定がなくてネット見ちゃってる大人の皆さんも、ボーッと過ごしてるんでしょうか。
たぶん、ほっておくと、夏はあっという間に過ぎてしまいます。
そこで今回、「夏休みの間に、何かしたいな」「何か書いたり出来ないかな」と漠然と思っている方に向けて、ライトノベルの編集をしている友人に「ライトノベルの書き方」を、ざっくり大雑把に聞いてきました。
いや、私個人が、「ライトノベルって一体何なんだろう」って前々から思っていたので、詳細を知りたかった、というのが、あるのですが――。


諸事情によりインタビューイーが匿名なため、インタビュー時に飲んだビールの写真とか載せてみます。すみません。

---今回は宜しくお願いします。匿名ですが、私の後輩のC太郎くんです。
「C級C太郎と申します、ライトノベル作ってますー」
---んで、Cくん。どっから話してもらいましょう…。そもそも、ライトノベルって…何?
「うーん、挿し絵付き小説?」
---ぶっちゃけた説明ですね。
「オオツカさんは、ラノベ、読んだことないんですか?」
---ごめんなさい…ちゃんとは、ないです。
「ないんすか!?」
---いや、ラノベ原作のマンガや映画は観たことがあるんだけど。いざ本屋さんに行ってみても、どれを読んだらいいのか分からなくって。BLもそう、どっから入っていいのかサッパリ分からない。面白そうだとは思うんだけど。
「うーん、肩肘はらなくても大丈夫ですよ。だってラノベって、基本はエンターテイメント小説ですから」
---なぜか苦手意識があるんですよねえ。
「知人の作家さんに言わせると、村上春樹『ノルウェイの森』がラノベの元祖だ、なんていう説もあります」
---そうなの?
「構造が似てるんです」
---………。あ、なんかちょっと分かってきた。
「主人公の男の子がモラトリアムで、可哀想な女の子と、強がってる女の子が出て来て…」
---直子と緑だ。エヴァンゲリオンで言えば綾波とアスカだ。いわゆる、ピティとツンデレですね。
「みんな心の闇が好きでしょ。闇があればいいんですよ」
---闇すか。
「C太郎的には完全に闇っすね」
---闇が入ってる、と。ほかに要素は?
「まず、そういう可愛い女の子キャラクターが出て来る」
---はい。
「あと、家族関係が見えないっていう特徴がありますね。なぜか家族が見えない、事情があって一人暮らしであったりとか。もしくは折り合いがついてないとか。」
---なるほど。
「そして、やはり恋ですねえ。あと、ほのかなお色気。」
---「ほのかな」なんですね。
「ラノベは、ほとんどの作品は、そんなにモロにエッチな要素はないですね」
---せつない感じで止めとくんですね、健全に。
「あとは強い敵がいるといいですねえ。女の子を守るために闘ったりとかね」
---ふむ。
「あと、ほっといても動き出すような設定が望ましいですね。妄想を喚起させるような。 」
---例えば?
「例えば…うーん、内戦中の国から転校生がやって来た! とか、その設定をぽん、と置いただけで、勝手に化学反応みたいに話が転がり始めるようなものが、よいですね 」
---勝手にころがりそうな設定、ですか…。マンガと作り方が同じですね。
「同じだと思いますね。
コトバに対する規制が厳しいのもマンガと同じ。例えば**とか**とかっていう表現、NGなんですよ。」

---え、そんなんで駄目なの?
「そのかわり『くるった』という表現は部分的にOKになりつつあります。新人作家さんはけっこう『くるった』っていう表現、大好きなひと多いような気がしますね」
---大好きなんすか…。
「ライトノベルにファンタジーものの作品もチラホラ見受けられるのは、そういう規制から逃れる手段であったりするのだと、C太郎は思います。『これは架空の世界の話だから』と言えば、割とどんなことでも書けますからね」
---なるほどなあ。
「例えばベストセラーの『指輪物語』も、大部分は規制の激しかった二次大戦中に書かれているんですよね」
---現代のアメリカでも、女の子のエロティックなイラストを描くのに規制が厳しくて、知人の絵描きさんは『耳としっぽを生やして、これは人間じゃないって言い張って描いてる』と言ってましたよ。
「ねえ。今はインターネットもね。ちょっとしたことでトラブルが起きやすいですからね。色んなことに注意が必要で…」
---そのせいで、皆が軽くイライラしてますよね。
「こんな言いたいことも言えない世の中じゃ…」
---ポイズン、ですね。
「ポイズンですよ」


うまいホットドック。

「一度、高校生の男子読者調査をしたことがあるんです。ラノベって、連載を追っかけて買うものは少ないので、結局、何で選んでいるんだろうと」
---何だったんですか?
「表紙の良さ」
---え、作家名でもパラ読みでもないんですね。ジャケ買いか。
「『本屋さんで、表紙の女の子と目が合ったら買う』って」
---目が合っちゃうのか…。
「で、ラノベの表紙って、よくよく見るとネオン街のような色使いなんですよね。そこに女の子が立っているという…」
---あー…。言わんとしてることが分かりました。
「まあ、それはあくまでもC太郎的な考察ですが」
---どういう絵が支持されてるんですか? やはり大ヒットした『涼宮ハルヒ』のような絵ですか?
「ちょっと前はああいう、デッザンが狂った、ある種ラフデッサンぽい躍動感のあるタッチが主流だったんですけど、今は一部でその反動が来ていて、デッザンのちゃんとしてる絵も、また人気を盛り返しつつあるような気もします」
---デッサンに流行りすたりがあるのか。読者層はやっぱり10代が多いんですか?
「アンケートを見ると10代〜20代なんですが、書店で見かけるお客さんは、30代以上も多い印象がありますね」
---出て来るキャラクターは10代ですよね?
「だいたいそうです。」
---30代以上読者は、皆、青春のこと思い出して読むのかなあ…。私も青春小説は、普通に甘酸っぱく読みますけどもね。
「そういえば…これもある作家さんが言ってたんですが、大槻ケンヂさんも、ラノベの元祖だと思いますね…」
--ああ、大槻さんの作品って、美少女イラストの表紙だったり、ファンタジーだったり、モラトリアムな主人公だったりしますね…。
「大槻さんがインタビューで、『自分の小説は本当にさえない劣等感だらけのダメ男』が主人公けれど、今のラノベの主人公って『本気を出せば何でも出来るって思っている男』が多いよね、あれ何だろうねって言ってて。それが印象的でしたね」
---いま、そんな感じなんですか。
「確かにそうなんです。何をやってもダメな子みたいなのが主人公ってのは、少ないような気がしますね」
---読者層が広いから普通な子が主人公になったってことかなあ。それ何なんだろうなあ。
「内容が私小説的なものでも、主人公の描かれ方が『ゲーム』のキャラクターにより近くなってきたってことなのかもしれませんね」
---本当の世の中は、ゲームのように、ある程度やればクリア出来るものじゃないですけれどね。
「本当は理不尽ですよね。でも冷静に考えてみると、マンガやアニメではそういう主人公の描かれ方ってずいぶん前から当たり前だったりするような気もするんです。ライトノベルが、“小説”のなかでも、キャラクター小説とか分類されたりするのは、そういうことなんじゃないですかねえ」


おいしいレバーペースト。

---具体的な作業としては、どういう流れになるんですか?
「プロットを作ってきて、それが良かったら企画通して、実際の執筆作業に入ってもらう感じですね」
---作業ペースは?
「1冊、3ケ月くらいですね。プロット1ケ月、執筆2ケ月」
---だいたい何文字くらいで出来ているものなんですか。
「15万字くらいですね」
---書き手もやはり、若い方が多いんですか? 
「それは、20代から40代までまちまちですね」
---実際持ち込むにはどうしたらいいんすか?
「新人賞に投稿するっていう、普通のやり方が一般的ですね。投稿する時は、その出版社で売れてる本を、把握しておいたほうがいいです。」
---レーベルカラーを意識したほうがいいという意味?
「いや、その出版社で売れてる作品と類似した作品は、必要とされないですから。かぶらないようにするんです」
---そういう意味ですか。
「目新しさはなくていいです、分かりやすく、誰もが共感出来るものがいいんです」
---流行曲、ポップソングと同じですね。
「同じですよー。でもまあまず、肩肘はらず、書いてみるといいですよ。“ライトノベルって何?”と難しく考える必要はない、というのは、裏を返せば“小説だから”と難しく考える固定観念はなくそうよ、ということだとも思うんですけどねえ」
---……。私には無理そうだなあ。
「無理すか」
---でも、書いてみたら書けちゃった、っていう人も、いるだろうな。


まとめ

  • ラノベはエンターテイメント、分かりやすさ、ポップさが最重要
  • 多い設定は、ヒロインが、暗くはかない子と、気が強いけど本当は甘えたがりな子
      主人公は優柔不断な今時の男の子
     (だけどひそかに無根拠な万能感を持っている)
      家族がみえない、出て来ない
      かなわぬ恋、ほのかなお色気
      強い敵(女の子を守る)
      ほっておいても話が動くような、面白い設定
  • 字数15万字(プロット1ケ月、執筆2ケ月)
  • 基本、表紙の可愛さで買われている。最近はデッサンの正しい絵柄が人気

だそうです。
もちろんこれは、C太郎くん個人の見解なので、偏りがあるかもしれませんが…。
「あ、書けそうじゃん」と思った方、レッツトライ! 
そしてもし売れっ子になったら、「デイリーの記事がキッカケでした」と、私にビールをおごってください…。


 
 
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