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フェティッシュの火曜日
 
ふんどしに甘酒がなぜか美しい祭り

お待たせいたしました!

いよいよ動画を。こういったことが行われているのです。ここまでの流れは全部荒々しい、ほんとに荒々しいものでしたがカメラに映った甘酒がここまで美しいとは思いませんでした。


ふんどしの男達と甘酒だけでできているのに、こんなにも美しいなんて!
(スローカメラで撮影、音楽は石川)

池からどんどん水を追加するので終わらない

終わらない甘酒合戦

甘酒合戦といっても二手に分かれて、ということではない。ただ手当たり次第にかけ合うのだ。池から水を足して甘酒を水増ししては誰かにかける。そんなわけで終わりはない。かけて減っては足してまたかけて。

「興奮のるつぼと化す」と、立て看板にあった甘酒祭りの説明は「余勢をかって区の役員も池に放り込んで祭りの成功を祝い合う」と結んであった。役員の姿を探したが気が気でなかったろう。NG大賞もののハプニングがもはや予定となって、看板に書かれているのだ。恐怖新聞のようなものである。


会場はどんどんびしゃびしゃしておりますが、マイクを持ったのが会場アナウンス役の人で、手をつないでるのが96歳の猪鼻さん(集落名と同名)です

アナウンス役の人は大忙しだが、96歳のおじいちゃんは立ってるだけでえらい!東京から来たそうでそれもえらい!

赤痢になるぜ

祭りの間もアナウンスがあるので、見ていておもしろい。かつて江戸時代の御触れでこの祭りを中止したとき流行り病があったそうだ。それ以来毎年行われているという。凶作で山にあるスズの実を食べてたときでも甘酒祭りは行われてたらしい。それほど重要なお祭りなのだ。

そして中止になったのはもう一度ある。昭和22年に駐在さんがもったいないから(戦後すぐだし)とやめたことがあるそうだ。ところがその年、赤痢が流行った。この集落で70数戸の家が隔離されたのだという。

その年、真っ先に駐在さんが赤痢になったのだという。以来祭りは毎年続けている。そのひどめのオチのつけ方が昔っぽい。昔話ってこんな風にできていくのか、とちょっと感動した。


いよいよ残りを全部ぶちまけて
ここから力の入ったゆっくりさで樽が転がされる

お社に上げたりして
絶え間なく水をかけられたりして

もはやぶら下がっている

ピーク後がおもしろい

甘酒合戦が終わったあとには樽を転がす。この転がすのがもっちゃりしていて可笑しい。

ただ転がすだけではすぐ終わるので、妙に力を入れてあっちに転がしてはこっちに転がす。転がすといっても各々が色んな方向にむだーな感じで力を入れるので遅々として進まない。合理的と一番遠いところにある動きでえっちらおっちら転がしていくのである。

その間も水がザバーン!である。もはや無病息災関係ないただの水だがザバーン!するのだ。段々祭りの意味づけがとれていって「楽しいから」「盛り上がるから」という本質だけが残っていく。あ、こうして役員が放り込まれるのか!と妙に納得した。(この日は見られなかったが)


樽と体を清めて終わる
祭りのあとはびちゃびちゃ。麹もあちこちに見られる

なぜかその後全員で長い木を担いで

どうするかと思ったらすぐ近くにしまっていた。なんだったんだ。

その後夕立がひどくずぶぬれになったわれら

あれほどカンカンに照っていたのに、祭りが始まると雷が鳴って夕立が来た。涼しくていい、と駅まで歩いて帰るとずぶぬれになり、特急電車の冷房に解放されたあとはみるみる体が熱っぽくなった。

風邪をひくな、と思ったがひいてない。もちろん甘酒のおかげだ。多分、今年一年僕は病気をしない。少なくとも赤痢にはならないと思う。

参考文献
『秩父の民俗 山里の祭りと暮らし』栃原嗣雄著(2005,幹書房)


 
 
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